石川県珠洲(すず)市の道の駅「すず塩田村」で25日、奥能登地域に約1300年前から続く伝統的な「揚げ浜式」と呼ばれる製法による塩作りが始まった。
「いろいろな方に支えられて始められることに感謝したい」
道の駅駅長の神谷健司さん(65)はそう語る。
2024年元日の能登半島地震だけでなく、この年の9月の豪雨でも被災した塩田だが、ボランティアらの力も借りて、再生への一歩を踏み出した。
仕事始めとなるこの日は「塩浜祝(しおはまいわい)」という神事が催され、神職が塩田と塩作りをする釜に、塩やお神酒をまいて清めた。
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昨春は地震で亀裂が入った部分を埋めるなどして修復し、塩作りを再開した。
だが、能登豪雨で近くの山の土砂が塩田や塩作りをする釜屋に流れ込み、再び塩作りが阻まれた。
道の駅での昨年の生産量は約2トン。被災前の約3分の1まで落ち込んだ。
「土砂に埋まり、塩田の形も分からなかった。塩作りができるイメージがわかなかった」
神谷さんは、途方に暮れた当時の心境を振り返る。
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それでも、塩田を復旧しようと被災直後から休日を利用して何度も訪れてくれたボランティアの大学生らの姿を見て、再び立ち上がる気持ちが湧いてきた。
「自分たちには塩作りしかない」
道の駅の建物は今年2月にようやく断水が解消し、3月に営業を一部で再開した。塩田の修復作業は今月まで続いたが、25日の神事を迎えられた。
今季の塩作りは10月上旬まで続く。神谷さんは約4トンの製造を目指す。
「多くの困難を乗り越え、続いてきた塩作り。後世に受け継ぐ責任がある。再生が、支えてくれた人たちへの何よりの恩返しになるはず」【岩本一希】
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