
昨今、「保護猫を迎えたい」と考えたとき、さまざまな支援とつながることができるようになりました。それはまだ十分とは言えないものの、保護猫のことが広く知られ、1匹でも多くの保護猫を救うために行動を起こしている人が確かに増えたことを感じる人も少なくないのではないでしょうか。
一方、いつもの日常の中で、偶然小さな猫と巡り会うこともまだあります。それが猫と初めて出会うきっかけになったという人もいるのです。元保護猫の男の子「ぷぅ」くんは、たったひとりで誰も目につかない側溝で力尽きそうになっているところを保護されました。まさに九死に一生を得たと言えるでしょう。保護主であり、飼い主となったXユーザー・masaru———men(アンクまさ)となコス12/29さん(@ankhmasa)さんに、当時の状況を伺いました。
散歩に出かけたら…どこからともなく響く子猫の鳴き声が
2015年10月、飼い主さんは寒冷地として知られる地元へ帰省していました。結婚に向けて両家の顔合わせを済ませ、13日の便で居住地へ。日常生活に戻ったばかりでした。翌日の14日、普段は散歩などしませんでしたが、そのときは何となく夜風に吹かれたくなった飼い主さん。夜10時頃、散歩に出かけました。
アパートの周辺を歩いて帰ろうとしたそのとき、かすかに鳴き声が聞こえたのです。
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「最初は『何だろう?』と思いましたが、次第にその声がはっきりと『ミャー! ミャー!』と聞こえるようになり、『猫だ!』と確信しました。しかし、スマホのライトで周囲を照らしましたが、道路には見当たりませんでした。声の方向へ進み、田んぼの方を探してみると、側溝に白い小さな子猫がしがみついていました。胴体の半分が水に浸かっていて、今にも溺れそうでした。急いで抱き上げて救出しましたが、親猫や兄弟猫は見当たりませんでした。そのまま放っておけず、家へ連れ帰ることに。それが、ぷぅくんとの出会いでした」
飼い主さんは帰宅後、段ボール箱にタオルを敷いて、簡易ハウスを作りました。そして、すぐ近くの店に走り、猫用のフードなど必要なものを買って帰宅。そして、ひどく汚れていたぷぅくんの体をお風呂で丁寧に拭いてあげました。
「ひと通り落ち着いたところで、彼女(現在の妻)にテレビ電話で状況を報告しました。彼女は『昔、あなたが一緒に暮らしていた猫に似ているね。もしかしたら生まれ変わりかもしれない。その子を家族に迎えてあげようよ』と言ってくれたのです。正直、その後どうするかなど考えていませんでした。そんなときに彼女の言葉を聞いて、お迎えを決意。ぷぅは推定2カ月ほどの小さな子猫でした」
結婚後、ぷぅくんのために家を建てた飼い主さん夫婦
ぷぅくんは、お迎え当時、キョトンとした様子だったといいます。そして、外で怖い思いをしたのか、飼い主さんのそばを離れようとしませんでした。
「まだ小さかったので、夜鳴きをするだろうと覚悟していましたが、杞憂でした。とてもおとなしく、よく眠る子だったのです。ただ後日、彼女から『あなたが仕事に行った後、ぷぅが鳴いて探し回っていた』と聞きました」
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当時、飼い主さんがひとり暮らししていた家は、猫と暮らすことはできませんでした。ところが、大家さんに事情を説明すると、猫と暮らすことを許してくれたのでうす。
「その後、結婚に伴い、ぷぅが快適に暮らせるようにマイホームを建てました。正直なところ、7割くらいはぷぅのために家を建てたと言っても過言ではありません」
ぷぅくんと暮らし始めた飼い主さんには、大きな変化があったといいます。
「まっすぐ家に帰るようになりました。ひとり暮らしをしていたときは、途中、寄り道をすることもあったのです。今は、むしろ家に帰るのが楽しみになりました。我が子のように、ぷぅに愛情を注いでいます」
「どうが長生きしてほしい」ぷうくんへの思い
ぷぅくんは、甘えん坊で食いしん坊。ちょっぴりビビりなところもあるといいます。
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「常に一緒にいたいようで、トイレに行くとドアの前で出待ちをしたり、飼い主が体調を崩すとそばに寄り添ってくれることも。来客があるとすぐに隠れ、玄関のチャイムが鳴るだけで警戒モードになります」
そして、ぷぅくんは野菜が大好き。緑色のものを見ると「野菜だ!」と目を輝かせるといいます。
「とくに、猫草には目がなく、ゴロゴロとのどを鳴らしながらふみふみするほど。医師に相談し、水菜やレタスも少量なら食べます。あるとき、猫がきゅうりを怖がるという動画を見て試してみたのですが、ぷぅは驚くどころか好物だと認定。緑色のものはすべて食べられると思っているようで、おもちゃのカマキリにも興味津々でした」
ぷぅくんは、今年8月で10歳になります。飼い主さんは、最近、ぷぅくんの体に少しずつ変化が見られるようになったと感じています。
「若いころに比べて少し動きがゆっくりになり、高いところから降りるときに年齢を感じることもあります。『あとどれくらい一緒にいられるのだろう』と寂しく思うこともあるのです」
ぷぅくんとともに歩んだ日々を振り返り、飼い主さんはこう語ってくれました。
「あの日、たまたま散歩に出たことで、ぷぅと出会うことができました。もしあのとき、出会えなかったら、今の幸せな暮らしはなかったかもしれません。小さなころ、あれほど怖い思いをした分、我が家ではたくさん幸せになってもらいたい。目指せ20歳!“化け猫”になってくれてもいいから、元気で長生きしてほしいです」
(まいどなニュース特約・梨木 香奈)