旧校舎のトイレには幽霊が出るーー。そんな噂が騒がれる学校にて、1人でトイレ掃除を行う少女。彼女と幽霊、そして友人との関係を描いた『トイレのマナ子さん』が2025年4月にSNSで投稿された。
少女が出会ったのは地縛霊。彼女と地縛霊さんのたわいないやり取りが描かれるなか、中盤で少女のとある秘密が明かされーー。果たして彼女の運命はいかに。
楽し気な雰囲気で物語が進行していくなか、ときにヒヤリとする描写も登場する本作。作者・檜大典さん(@hinoki_manga)に話を聞いた。(あんどうまこと)
ーー本作を創作したきっかけを教えてください。
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檜大典(以下、檜):トイレ清掃の仕事をしているのですが、トイレに「マナーがひどい」みたいな張り紙が張ってあり。トイレと言えば「トイレの花子さん」が有名ですが、マナーが悪いと、例えばマナ子さんといった名前の幽霊が出てくるんじゃないか……。そんな発想から本作を創作しました。
マナ子さんだけじゃなく花子さんも出てきて、2人でドタバタしたら面白いんじゃないかなとか、マナ子さんが自分は幽霊であることを知らなかったら面白くなるんじゃないかなとか。仕事中に考えていたら物語の展開が少しずつ固まっていきました。
ーー中盤まではマナ子さん視点と先生視点の2つが同時に進行していきました。
檜:幽霊が出てくる話なら舞台は学校が舞台がいいなと思いつつ、幽霊のことを解説するためにどこかで誰かが噂話をしていたら面白いと思いました。そのためマナ子さんたちのいる学校のパートと、先生たちのパートに分けて描きました。
ーー本作を描くなかで印象に残っているシーンは?
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檜:マナ子さんのパートと先生たちのパートが交わる19、20ページ目です。18ページまではそれぞれの視点を交互に描きましたが、先生たちのパートはコマ枠の外側にカケアミを施したりなど、作品の中ではサブ的な物語でした。
そんななか20ページからは先生たちのパートでもカケアミを描かず、マナ子さんのパートと同じ描き方をすることで、先生が作品の本筋に絡んでいく様子を表現しました。
このような表現は映画だと「カットバック」と言われており、映画監督のクリストファー・ノーランが多用する表現として知られています。この表現を漫画でも描きたいということが執筆に至った大きな動機だったので、このシーンは印象に残っています。
ーーそのあとに描かれたマナ子さんの正体が判明する1ページは、身の毛がよだつワンシーンでした。
檜:本作はホラー要素のある作品なので、1度は不気味なシーンが必要だと思い描きました。ホラー作品は楽しむ分には好きですが、怖がってしまうという意味ではちょっと苦手で、この場面を描きながら自分でも怖くなってしまって……。なるべく画面を見ないようにしながら背景などを描き込みました。ショッキングな1ページになっていたのならうれしいです。
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ーーみぞおち付近に膝を入れるツッコミ方法が好きでした。
檜:少しキツめのツッコミをするドタバタ系のギャグ漫画が好きで、作品を描く上でも性に合っていたのかなと思います。もしかしたら暴力的なものとして受け入れられない読者の方もいるかと思いますが、自分はこういう作品が好きなので。
ーー楽し気な雰囲気で物語が進みつつ、中盤ではホラー要素やドラマチックな展開があったりなど、読み終えたあとの充足感を覚えた作品でした。
檜:本作は自分の面白いと思うものを詰め込んだ作品でした。ギャグも好きですし、ホラーも面白く、結末はハッピーエンドが良いーー。映画が好きなので、たくさんの要素が詰まった1本の読切作品にできたらと思いながら本作を創作しました。
ーー漫画を描きはじめたきっかけを教えてください。
檜:こどもの頃から絵を描くのが好きで、好きなアニメや漫画の絵をマネして描くなか、自分でも漫画を描くようになりました。ここ10年くらいは好きな作品の二次創作を続けてきましたが、1度は一次創作の世界に行ってみたいと思い、2024年からオリジナル作品を描きはじめました。
ーー二次創作と一次創作では創作への印象が異なる?
檜:一次創作は考えることが多く、オリジナルの作品を描く漫画家さんたちの凄さがわかりました。二次創作ではキャラクターや物語が最初から存在しているので……。
大変さを感じつつも、今は一次創作を楽しむことができています。とくに作品のプロットをつくるなか、本作であれば2つの視点を平行して描きつつ徐々に謎が明かされていくといった、演出の部分をうまくつくれたときは楽しさを感じます。
ーー今後の目標を教えてください。
檜:出版社の漫画賞に選ばれ、プロとしてデビューすることが1番の目標です。そのなかでコメディ作品を描くことが好きなので、流行も取り入れながら読者の方が楽しめるような、商業として通用する漫画をつくりたいです。
(文・取材=あんどうまこと)
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