
「ジブリ風」に「ディズニー風」。AIで生成した“それっぽい”画像がSNSで日々拡散しています。プロフィール画像に使う人も少なくありません。
【画像でみる】「〇〇風」画像は著作権侵害?「アイデアの模倣」と「表現の模倣」の違い
AIによる画像生成が身近になる中、特定の作品や作家のスタイルを模倣した画像が次々と生み出されています。
これらは著作権侵害にあたるのでしょうか?
著作権法に詳しい骨董通り法律事務所代表の福井健策弁護士に、AIが生成する「○○風」画像の著作権問題について詳しく解説していただきました。
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福井弁護士によると「〇〇風」画像が著作権侵害にあたるかどうかは、「アイデアの模倣」と「表現の模倣」の境界線で判断されます。
「〇〇風という言葉は『スタイル』とも言い換えられますが、スタイルの類似や模倣は、特に著作権侵害の問題はないというのが世界共通の理解です」
つまり、単に「ジブリ風」というだけであれば、それはアイデアやスタイルの模倣にとどまり、著作権侵害にはあたらない可能性が高いのです。
しかし、特定の作品の構図やキャラクターの造形など、具体的な表現まで似てしまうと話は変わってきます。
「誰が見ても“はい、トトロだね”と認識するようなものを生み出すと、それは完全に表現の模倣であり、著作権侵害となる可能性があります」
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福井弁護士は、このような境界線の判断が非常に難しい問題だと指摘します。アイデアと表現の境目は曖昧で、議論の尽きないテーマだといいます。
ユーザーとAI事業者、それぞれの責任は?AIが生成した「表現の模倣」にあたる画像について、ユーザーとAI事業者それぞれの責任範囲はどうなるのでしょうか。
福井弁護士によると、まずユーザーについては「投稿して拡散したユーザーは責任を免れない可能性が高い」といいます。
ユーザーが意図的に特定の作品や作家のスタイルを模倣するよう指示し、その結果生成された画像が誰が見ても具体的な表現の模倣だと認識される場合は、その責任を問われる可能性があるのです。
一方、AI事業者の責任については、以下のような場合に問題となる可能性があると指摘します。
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1. かなりの高頻度でスタイルの似たコンテンツが生成される場合
2. 類似物が生成される可能性を認識しながら開発し適切な抑止措置を取っていない場合
「当然、AI事業者も生成に対して常に無関係とは言えません」
AIとどう付き合うか、ポリシーを持とう福井弁護士は、AIを利用する際に個人や組織がそれぞれの“ポリシー”を持つことの重要性を強調しています。
「自分なりのAIポリシーを持つことが非常に大切だと思います。自分なりのAIポリシーとは、自分は今AIとどのように付き合うか、状況の変化とともに対応を見直しながら判断するということです」
具体的には、以下のような点に注意を払うべきだと指摘しています:
1. 使用するAIの選択(学習データの扱い方、利用規約など)
2. 個人情報や秘密情報の入力に関する注意
3. 既存の作品名や著作者名の入力を控える
「例えば、対外的な利用を目的として生成する際に、既存の作品名や著作者名を入力しないようにするというのが自分なりのポリシーです」
技術とマーケットだけでは解決できないAIによる画像生成技術の進歩は著しく、法律や規制が追いつかない面もあります。福井弁護士は、今後の課題として以下の点を挙げています。
1. AIが生成したコンテンツへのマーキングの義務付け
2. 事業者に対する学習データの開示に関する仕組みづくり
3. 声の模倣に関する法的保護
「技術とマーケットだけでは到底解決できない。単に規制だけで何かがうまくいくというような単純な話では多分ないだろうけど、それでもむしろ技術やマーケットをうまく誘導するためのルールの出番があるのだと思います」