日本の「いじめ」「虐待」に心痛め…イギリス人女性が開発 担任教師に知られず、子供がSOS発信できるシステムに

0

2025年04月29日 07:20  まいどなニュース

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

まいどなニュース

日本でのいじめ、虐待への解決の糸口をさぐるために。写真はイメージです(kapinon/stock.adobe.com)

子供の「いじめ」や「虐待」は、なかなか明るみに出にくい。誰にも相談できず、たとえ相談しても適切な対応を得られず、思い詰めて自ら命を絶ってしまうという痛ましいケースもある。

【写真】いじめや虐待を伝えやすいように…

そんな状況に心を痛めた英国人女性が、児童・生徒のSOSコミュニケーション支援システム「kimino micata」(以下、キミノミカタ)を開発。パソコンやタブレットで行うアンケートの回答から、子供が置かれている状況を学校側が把握できるという。熊本県での実証実験を経て、京都で本格的に活動を始めているプーザー・ケイトリンさんに聞く。

児童が助けを求めやすいシステムをつくった

対象は小学生から高校生まで。タブレット、パソコンなどの端末から専用サイトにアクセスして、現在の状態を「幸せ」から「つらい」までの6段階を選択。ほかにも「食欲がない」「無視された」「お金や物を取られた」など、毎日、毎週、毎月などアンケートごと、また学年ごとに異なる4〜23の設問に回答する。回答結果は、いじめや虐待を受けているかを「赤」「オレンジ」「黄」のレベルで表示されて学校側へ示される。

また、自分が置かれている状況を細かく書き込める「相談ボタン」や、女子児童・生徒が男性の教師に知られたくない内容を養護教諭にだけ知らせるボタンも設けられている。

これに対応するため、学校内では校長、教頭、養護教諭などで構成される「ミカタチーム」を編成。児童が担任教師に知られたくないことは、ミカタチームに直接伝えることもできる。児童から寄せられた回答と相談は、本人の承諾なしに第三者へ明かされることはない。

ミカタチームは児童・生徒からのSOSを察知すると直接声をかけて相談に乗ったり、必要に応じて校外の相談センターなど外部機関と連携したりして、子供ファーストで問題の解消に努める。

アンケートの頻度は学校ごとに異なる。紙に記入するアンケートだと、教室で用紙を配布して一斉に記入させ、しかも時間も限られている。だが「キミノミカタ」は、児童・生徒が持っている端末から好きな時間にじっくり回答できるため、本音を引き出しやすいという。

日本の子供を守りたい

ケイトリンさんの家族は皆警察官で、自身も「子供を守りたいから将来は警察官になりたい」と思っていたという。大学で犯罪学を学び、卒業論文のテーマは「子供たちの性的虐待について」だった。

新しいことに挑戦しようと日本語を学び、京都外国語大学の夏季交換留学プログラムにも参加。いつか日本に戻りたいと考えていたという。

2016年に、外務省のJETプログラム(語学指導等を行う外国青年招致事業)で来日し、熊本市の小中支援高校と幼稚園で外国語指導助手に従事した。

2019年、千葉県町田市で、当時小学4年生だった児童が父親から虐待を受けた末に死亡する事件が起こり、ケイトリンさんは心を痛めた。

「私ができることは何だろうと考えました」

一方、日本で10代の死因で最も多いのが自殺で、件数が年々増えていることを知ったケイトリンさん。相談する相手がいないまま命を落とす子供を救いたいと、イギリスにある「学校に所属するすべての子どもの安全保障に責任をもつ」DSL(Designated Safeguarding Lead)を手本にしたSOSコミュニケーション支援システムを開発。これが「キミノミカタ」の初期バージョンとなる。

女性や若者を支援する「Japan Institute for Social Innovation and Entrepreneurship(JSIE)」が熊本県内で開催したワークショップで発表したところ最優秀賞に輝き、2020年から熊本市立の小中高校で実証実験が開始された。その成果が認められて、2023年からは熊本市の「こども相談事業」と連携した取り組みが行われている。

その前年の2022年、ケイトリンさんは京都に移住。株式会社Guardian(ガーディアン)を設立し、「キミノミカタ」を日本の学校に取り入れてもらう取り組みを始めた。

「どこの国であろうと、子供たちを守りたい。今は情熱を傾けられる仕事と国(日本)を見つけることができました」

移り住んだ当初は、京都に知り合いがいなかった。「キミノミカタ」を導入してもらうにあたって人脈づくりから始めなければならないため、今は様々なコミュニティに参加して下地づくりに精を出す日々だという。

■株式会社Guardian  https://guardian-jp.com/

■Instagram  https://www.instagram.com/guardian_japan/

■X  https://x.com/kkguardianjapan

(まいどなニュース特約・平藤 清刀)

動画・画像が表示されない場合はこちら

    アクセス数ランキング

    一覧へ

    前日のランキングへ

    ニュース設定