私事ではあるが妻が子供を授かってから5カ月ほどが経過し、いよいよお腹が大きくなりはじめてきた。妻はPCでゲームを遊ぶことが好きで、Steamでセールが行われる度に新しいゲームを探しながら日々楽しんでいた。
しかし、徐々に机に向かって長時間座ることが難しくなり、最近はリビングに置いているビーズクッションに楽な姿勢で座りながら、スマホでSNSやYouTubeを見る日々だ。
本人に話を聞いてみたところ、「モンスターハンターワイルズを早く進めたいが、長時間椅子に座ることが辛くなり、遊びたくても遊べない状況が続いている」と吐露した。
であれば、Valveのポータブルゲーム機「Steam Deck OLED」とSteam Linkを組み合わせることで、リビングに居ながらAAA級タイトルで遊べるのではと考え、実機を用意して実際に試してもらった。
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今回は筆者の妻の利用体験をもとに、Steam Deck OLEDとゲーミングPCでゲームを動作させて、手元のSteam Deck OLEDでストリーミングプレイできるSteam Linkによって、妊娠中も快適にゲームを遊べるか詳しくチェックしてみたので紹介しよう。
●旧モデルからメモリが強化されたSteam Deck OLED
Steam Deck OLEDはディスプレイが7型液晶から7.4型OLED(有機EL)にアップデートされており、最大輝度が1000ニトのHDR表示、リフレッシュレート最大90Hzに対応としている。ポータブルゲーム機として、よりゲームプレイ体験を向上させるモデルに仕上がっている。
さらにSteam Deck OLEDは搭載されているAPUにも変更が入っており、7nmのカスタムAPUから6nmのカスタムAPUが採用され、かつメモリはLPDDR5-6400に強化されている。
あわせて内蔵バッテリーの容量も40Whrから50Whrにアップデートされ、かつOLEDパネルや、より省電力性の高いAPUの採用によって、バッテリー駆動時間も長くなり、ポータブルゲーム機として順当な進化を遂げている。
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専用のキャリングケースが付属しているため、普段利用しないときはケースに保管して本体を保護する事も可能だ。
●LinuxベースのSteamOSは“ゲーム版ChromeOS”のようなイメージ
Steam Deck OLEDには、他のポータブルゲーム機のようにWindows OSは採用されておらず、Linuxベースの「SteamOS」が採用されている。
イメージとしては、Chromebookに採用されているChromeOSのゲーム版と捉えてもらえると良いだろう。初期セットアップが完了すると、そのままSteamクライアントが立ち上がってくる仕組みだ。
OS起動自体も高速で、電源をオンにすればすぐにゲームがプレイできるようになる。他のコンシューマー機と遜色なく利用できた。
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もちろんSteamクライアントだけでなく、電源メニューから「デスクトップに切り替え」を選択すると、KDE Plasma環境が表示され、普通のLinuxマシンとしても利用できる。
Windows OSがインストールされているわけではないので、普段との操作感が変わってくるため、どちらかというとパワーユーザー向けの機能となる。
●モンスターハンターワールドを実際にプレイしてみた
今回はSteam Linkを利用したリモートプレイの利用を想定していたが、物は試しにSteam Deck OLEDにモンスターハンターワールドをインストールしてプレイしてみた。初回起動時にSteam Deckでの互換性が確認されておらず、正常に動作しない恐れがある、といった警告が表示されたが、起動自体は問題なくできるようだ。
インストール後の初回の読み込みに5、6分かかったたこと、モンスターハンターワールド自体に求められるスペックが高いこともあり、「起動はできても動作が重たすぎて操作もままならないのでは」と予想していた。
結果としては、驚くことに初回起動以降はスムーズにとまではいかないものの、プレイ自体は問題無さそうに見受けられた。普段プレイしている妻に聞いてみても、「致命的な重さではなく、プレイ自体はおおむね問題無さそうだ」と回答が得られた。
「STEAM」ボタンを押すと、コントローラーのマッピング情報が表示されるのだが、デフォルト設定でも違和感なくプレイできるようで、大きな不満はないようだった。
ただ、ゲーム画質についてはかなり低画質で詳細なディティールなどは完全に潰れているのが気になるようで、確かにオンラインソロロビーにいる状態でも画質の低さや、一部テクスチャの表示がおかしい点が見受けられた。
ゲームロビー画面だけでは正常にプレイできるか判別できないため、妻に簡単なクエストである「☆1 チャタカブラにご用心(ソロ)」を実際にプレイしてもらうことにした。筆者も横についてゲームプレイを見守っていたのだが、戦闘中も特に動作がカクつくこともなく、問題なくクエストを進行できているようだった。
プレイしている妻も、特にゲーム操作に引っ掛かりを感じていないようで、筆者が当初想定していた結果とは大きく違うものとなったことには正直驚きだ。
とはいえ、ゲーム難易度が上がっていくと特殊ギミックなどや、敵モンスターの攻撃エフェクトも豪華になってくるため、現状Steam Deck OLEDでモンスターハンターワールドを快適にプレイできる、とは断定できないのが正直なところだ。
このテストはあくまで参考程度に実施したことと、妻のゲーム進行度的に詳細掘り下げができなかったため、テストはここまでとして、もともと想定していたSteam Linkでのゲームプレイの様子を確認してみることにした。
●PCからストリーミングプレイできるSteam Linkを試す
Steam Deck OLEDでゲームを起動する際に、「プレイ」から「ストリーミング」に切り替えて起動すると、PCからストリーミングプレイする機能「Steam Link」が利用できる。
Steam Deck OLED側で「ストリーミング」を選択しても、エラーが発生するため、Steam Linkを利用できないのかと思われたが、PC側でストリーミング開始することで無事起動できた。
Steam Linkでモンスターハンターワールドを起動してみたが、Steam Deck OLED上でプレイしたときと比べ、オープニングからゲームロビーに移動するまでの間、ゲームがカクつきは感じられなかった。
肝心のゲーム画質については、Steam Deck OLED単体で起動するときと比べ、いくらか画質は向上しているように感じられた。実際にプレイしている妻目線ではそこまで大きく変わった感じはしないものの、スムーズにゲームプレイできる点は非常に好感が持てるとのこと。
Steam Deck OLED上で動作させたときは「★1 チャタカブラにご用心(ソロ)」で簡単なテストを行っていたが、今回は実際のプレイを想定して「★3 虚ろ喰らう腕(オンライン救援あり)」をプレイしてもらうことにした。
プレイ中の感想としては、操作感やゲームプレイは非常に快適で、「これならPCの前に座らずとも、リビングで引き続きPC版モンスターハンターをプレイできる。私と同じくSteamゲームをヘビーにプレイしていた妊婦であれば、安定期以降の暇つぶしにかなり良いデバイスになりそう」だと感じたようだ。
●「APEX Legends」はSteam Deck OLEDでプレイ不可
Steam Deck OLEDでモンスターハンターワイルズが起動できたので、他にも普段遊んでいるゲームをいくつか試してもらったところ、Windows PCでは表示されている「APEX Legends」がSteam Deck OLEDのライブラリに表示されていないことに気付いた。
Valveによると、多くのゲームはSteam Deckでそのまま動作するものの、一部のゲームは快適に動作しない場合がある、と説明している。
それにもかかわらずAPEX LegendsがSteamライブラリに表示されないのにはパフォーマンス以外の理由がある。それは、Electronic Artsがチート対策を理由にSteam Deckからのアクセスや、Linuxマシンからのアクセスを遮断したことに起因する。
普段、APEX Legendsをプレイしている妻は残念がっていたが、こればかりはユーザー側でどうすることもできないので、無条件で全てのゲームをSteam Deck OLED上または、Steam Linkでプレイできるわけではない。購入を検討されている方はその点だけ注意してほしい。
●まとまった時間が取れないゲーム好きの方には良い選択肢になりそう
Steam Deck OLED自体のパフォーマンスも思ったより高いことや、パフォーマンス問題で快適にプレイできない場合でも、既にあるPCとSteam Deck OLEDを組み合わせるだけで、リモートプレイ環境が整えられる点はかなりお得に感じられる。
妻の反応を見るに、Steamゲーム好きであれば今後、妊娠や子育てなどの事情で自分の机に向かって座る時間が確保できない場合は、スキマ時間でサクッとSteamゲームがプレイできるSteam Deck OLEDやポータブルゲーミングPCは良い選択肢かもしれない。
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