au回線で解禁された「iPhoneのRCS」を試す SMSより断然快適、メリットと課題は?

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2025年04月29日 14:41  ITmedia Mobile

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au回線を用いたiPhoneがRCSに対応した

 KDDIは4月1日、AndroidとiOS間で大容量の画像やデータをやりとりできる「RCS(Rich Communication Services)」を開始した。


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 当初は大々的に告知せず、β版のiOS 18.4を搭載したiPhone向けに提供したが、4月1日にau、UQ mobile、povo1.0のiPhoneユーザーへの提供開始を発表した。iPhoneでpovo2.0、MVNO(au回線)を利用しているユーザーは対象外となっている。


 なお、Androidでpovo2.0、MVNO(au回線)を利用している人はサービスの対象となるが、iPhoneでpovo2.0、MVNO(au回線)を利用しているユーザーは対象外。KDDIは公式ページで「提供準備中」としており、提供時期については「別途、知らせる」と案内している。


●そもそもRCSとは? 「Google メッセージ」などは既に対応、iPhoneはキャリア対応待ち


 RCSは、GSMAによって世界的に標準化されたメッセージサービスの規格で、SMSを拡張したものだ。長文テキストや画像・動画の送受信に加え、複数人でのグループチャットも利用できる。


 Androidでは「Google メッセージ」がRCSに対応している。一方、Appleは独自の「iMessage」をiOSでも採用してきた経緯があり、OS標準搭載のメッセージングアプリでOSをまたいだリッチなコミュニケーションは叶わなかった。しかし、iOS 18の登場とともにiOSの「メッセージ」アプリがRCSをサポートした。


 日本では、2018年にドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が共同でRCSを採用した「+メッセージ」というサービスを開始したが、利用できるのは+メッセージ対応キャリアのユーザー間に限られている。楽天モバイルは「Rakuten Link」で独自のRCSを展開しているが、これも楽天モバイルユーザー同士のみ利用可能だ。


 また、RCSの利用にはキャリアのサーバを通じたユーザーの認証が必要なため、RCS非対応キャリアのSIMを使用している場合は、iPhoneが対応していてもRCSを利用できない。


 2024年9月の「iPhone 16」発表時、KDDI 執行役員 パーソナル事業本部 副事業本部長の村元伸弥氏は、RCS対応を示唆していた。同年11月1日の決算説明会では、高橋誠社長が「衛星通信とスマホの直接通信は非常に親和性があり、RCSとGoogleの生成AI『Gemini』の相性も良い」と発言。「コミュニケーションサービスにAIをどう組み込むかが、次の勝負になるのではないか」との考えを示した。


 KDDIでは、RCSのサイト、My au アプリ、My UQ mobileアプリなどから無料のRCSオプションサービスに申し込む必要がある。今回はauを例に申し込む手順を記載する。まずauのRCSのサイトから「RCSのお申し込み(無料)」をタップする。


 次に「追加する」を選択し、利用規約を確認したら、下にスクロールして「上記の重要事項に同意します」の左側のチェックボックスをタップし、「同意して手続きに進む」をタップする。続いて、「契約内容を確認する方法」を選択したら、「この内容で申し込む」を選択。「受付完了」の画面に進めば、手続きが完了する。


 利用にはiOS 18.4/Android 8.0以降へアップデートし、無料のオプションサービスへ申し込む必要がある。iPhoneの場合はまず設定を開き、「アプリ」→「メッセージ」の順に進み、「RCSメッセージ」という項目から「RCSメッセージ」をオフからオンに切り替える。アクティベーションが完了すると利用可能になる。


●RCSのメリットは? SMSとの違いも確認 料金がかさむ可能性も


 実際に、auで販売されているiPhoneにauのSIMを入れて、iOS同士のiMessageではなくRCSを使い、SMSとの違いを確認してみた。


 SMSとの最大の違いは、送信料がかかるか否か。auのSMSは1通あたり3.3円の料金がかかる。Wi-Fiがない場合やデータ定額プランに未加入の場合、別途データ通信料が発生するものの、RCS加入者同士なら無料になる。


 1度に送信できる文字数の上限にも違いがある。SMSは全角670文字にとどまるのに対し、RCSは全角2730文字と大幅に多い。画像、動画、スタンプ、グループメッセージ、音声/位置情報の添付ファイルの送受信にも対応している。


 相手がメッセージを読んだかどうか(開封したかどうか)が分かるのもRCSのメリットの1つといえる。iPhone側からAndroid(Galaxy S25 Ultra)側にメッセージを送信し、すぐにメッセージを開いたところ、既読になったか否かをすぐに確認できた。


 RCSならスタンプも扱える。KDDIでは、提供開始と同時にRCS対応機種同士で利用できる「なつかしの絵文字スタンプ」を配信した。既にApp Storeから専用アプリをダウンロードすれば利用できる。Google Playでは、配信されていないため、Androidユーザーからなつかしの絵文字スタンプの送信はできない。


 iPhoneで撮影した画像はそのまま送信でき、それをGalaxyで確認したところ、解像度は3024×4032ピクセルのままだった。つまり、圧縮による解像度劣化がない。Galaxyで撮影した約29分のフルHDの動画をiPhoneに送信しようとしたところ、「動画が長すぎます」などという警告メッセージが表示された。この解像度の動画で約5分を超える尺だと送信できないようだ。


 グループチャットもRCSならできる。こちらは実際に複数回線を用意して試したところ、グループのうちの1回線でもSMSにしか対応しない回線が含まれていると、RCSでのやりとりはできず、送信元のiPhoneには「未配信」と表示された。そのため、グループチャットを行う場合は、全ての回線と端末がRCSに対応している必要がある。


 グループチャットは何人で利用できるのか、気になる人もいるだろう。KDDI広報によると「50人までは利用できることを確認している」とのこと。


 auのRCSは、SMSよりできることが多く、SMSとは比べものにならないほど快適だった。特に写真や動画を気軽に送信できるのがいい。iPhone側でもAndroid側でも、既読の有無を確認できるのも「LINE」慣れした人にとってうれしい。


 iPhoneとAndroidの端末でRCSに対応した端末には、RCSでメッセージを送ろうとしたときに、何らかの理由で送信できない場合、自動的にSMSやMMSに切り替えて送ってくれる便利な機能がある。これをオンにしておくと、RCSが使えない場合に、別の手段で送信できるメリットがあるものの、SMSやMMSに切り替わると、それに応じた料金が発生してしまう場合がある。


 例えば、SMSの場合は1通(70文字まで)で約3.3円かかる。この金額自体は小さなものだが、送信料は「データ定額」「通話定額」といった料金プランやオプションには含まれない。たくさん送信するほど思いがけず料金がかさんでしまうので注意しよう。


 KDDIは、auのRCSのサイトにて、RCSとSMSの違いが分かる表を掲載している。それぞれで何ができるのかが分からない場合は表を参考にするといい。


 KDDI広報によると、表内の「アカウント・パスワード」という項目は、「Apple アカウント/Google アカウント」を指しており、「スマートフォンやPCなどのマルチデバイスで(複数のデバイスでRCSを)利用する際に、それぞれの端末から同一のアカウントでログインすれば連携できる」ことを意味している。


●PCからでも利用可能に スマホと同じアカウントを使うか、ペアリング作業が必要に


 PCでもスマートフォンと同じくメッセージを送受信できるのもRCSのメリットだ。


 Googleが提供している「PC版Googleメッセージ」機能を利用すれば、PCのWebブラウザからRCSを利用してやりとりできるようになる。この機能は、WindowsでもMacでも、OSに関係なく利用できる。設定さえ完了すれば、スマートフォンは手元に置いたまま、PCでメッセージの確認や送信ができる。


 使い方はとてもシンプルで、まずPCのブラウザでPC版Googleメッセージのサイトを開き、スマートフォンと同じGoogleアカウントでログインする。次にスマホのGoogleメッセージアプリを開いて、PC画面に表示される絵文字を選ぶだけで接続(ペアリング)が完了する。


 別の方法でもペアリングができ、PCに表示されるQRコードをスマートフォンのカメラで読み取るだけで設定が完了する。1台のスマートフォンに対して複数のPCやタブレットをペアリングすることも可能だ。


 これまで、SMSが「1台のスマートフォンでしか使えないから不便」と感じていた人にこそ、こうした方法を使ってほしい。ただし、言うまでもなく、PCからアクセスする場合は、Wi-Fiネットワーク環境下にいる必要があるので注意が必要だ。


●Google メッセージを標準搭載する動き KDDIはいち早く対応


 このように、RCSはグローバルではGoogleが主導する形で、キャリアに依存しないRCSの仕組みが整っていた。Androidでは、Googleが自前でRCSの仕組みを提供しており、どの回線を使っていてもRCSを利用できる。そして最近になり、ようやくiOSとの相互接続も進み、KDDI以外の国内キャリア側の対応さえ整えば、どの国内キャリアを利用していてもiPhoneとAndroid間でもRCSの機能を使えるようになる。


 日本はRCSの導入自体は早かったのだが、国内の各キャリアが独自のサービスとして運用していたために、利用者同士のやりとりが制限されてしまっている。+メッセージとRakuten Linkに互換性がないことが、この点を裏付けている。こうした影響を受けてか、近年はキャリア主導のRCSアプリではなく、Google メッセージを標準搭載するSIMフリーのAndroid端末が増えている。


 KDDIもこうした動きにいち早く目を付け、「メッセージサービスの魅力向上」に向けて、「Google メッセージアプリをAndroid端末の標準アプリとして今後、追加で採用する」と2024年5月16日に発表した。メッセージサービスの魅力向上が実るか否かは、残るドコモ、ソフトバンク、楽天モバイルはどうしていくのか、この3キャリアの対応次第といえる。



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