大豆を作付けする農家=28日、米中西部イリノイ州(AFP時事) 【ニューヨーク時事】トランプ米政権が中国に145%の高関税を課し、中国も対抗して米国からの輸入品に125%の関税をかけたことで、米中間の貿易が困難な状態となる中、中国に農産物を輸出する米国の農家は頭を抱えている。特に大豆は輸出の約半分が中国向けで、高関税が長引けば、ブラジルなどにシェアを一段と奪われかねない。農家からは早期の関税引き下げを求める切実な声が上がっている。
「あすにも貿易戦争が解決されてほしい」。穀倉地帯の中西部ノースダコタ州で大豆やトウモロコシを育てる農家で、米大豆協会(ASA)会長のジョシュ・ガックル氏(50)はこう訴えた。国内各地で作付けが進むが、米中対立が長期化すれば、対中輸出が減るのは必至。「農家は既に物価高で苦境にあえいでいる。関税は泣き面に蜂だ」と嘆く。
第1次トランプ政権下でも米中は関税をかけ合い、2018年の米農産物の対中輸出は前年からほぼ半減した。一方で中国は、物流網を整備して国際競争力を増したブラジル産大豆などへの切り替えを進め、米国産のシェアは下がった。
ニップンの服部秀城チーフグレインアナリストは、「今秋収穫する穀物の購入契約が結ばれる7〜8月ごろまでに米中関係が改善しなければ、中国の大豆輸入に占める米国産の割合はさらに低下する恐れがある」と分析。欧州連合(EU)などでも米農産物の輸入が減るリスクがある。
昨秋の米大統領選では、農村部がトランプ氏の有力な支持基盤として勝利に貢献した。米政権は農家救済のため補助金を打ち出す可能性もあるが、ガックル氏は「農家は公正で自由な貿易市場へのアクセスを求めており、政府の補助金には頼りたくない」と強調。あくまで関税引き下げを求めている。

米中西部ノースダコタ州の農家、ジョシュ・ガックルさん=2023年10月(米大豆協会提供・時事)