大阪・関西万博が開幕しました。世界各国から最先端の技術とアイデアが集まる祭典であり、「空飛ぶクルマ」などの華やかな展示に注目する方も多いでしょう。しかし、足元に目を向けると、実は日本の技術やアイデアが詰まったものがたくさんあります。その一つが、日本館の公式ユニフォームとして足元を彩っている履物「unda(雲駄)」です。
【画像9枚】雪駄?スニーカー? 最新テクノロジーを使った履物「unda」(雲駄、2万7500円〜)
これは、2018年に大西藍氏と武内賢太氏という2人のデザイナーがスタートした新興ブランド「goyemon(ごゑもん)」が手がける“雪駄×スニーカー”という新しいジャンルのプロダクトです。そんなブランドが、なぜ国を挙げたイベントである万博の公式ユニフォームに選ばれたのでしょうか。今回は、その秘密に迫りたいと思います。
●「視点を変える」を意識したアプローチ
undaは「伝統×最新テクノロジー」をキーワードに、「雪駄」のデザインにスニーカーの快適性や機能性を融合させた新しい履物です。ブランドデビューとなった応援購入サイト「Makuake」のプロジェクトでは、初回で2000万円を超える支援を集め、注目されました。
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しかし多くの人にとって、雪駄は“和装に合わせるもの”、もしくは“長時間履くと足が痛くなるもの”といったイメージが強いでしょう。そんなイメージのある履物を、どのようにして、ストリートでも履ける“おしゃれな日常の履物”に変えていったのでしょうか。
goyemonの2人は、undaのデザインやコンセプトを決める上で単に表層的なデザインをするのではなく、“視点を変える”アプローチを取りました。まず、メインのターゲットをストリートカルチャーが好きな若者と定め、機能面においては、雪駄が抱える履き心地の悪さを、エアソールの採用によって解消。デザイン面においては、エアが見える洗練されたデザインや、スタイリッシュな見た目にこだわりました。
さらに、プロダクトの周辺ストーリーとして、日本の履物の特徴である、左右対称で、かかとが出るといった特性をデザインに取り入れました。それにより、単なる和を感じるファッションではなく、独自性が高く、同時に商品に共感できる、若者のための新しい文脈のプロダクトとして仕立てていったのです。
●“思い込み”を見直すことが、新たな価値創造につながる
実際に、過去2回のMakuakeでのプロジェクトの中で、応援コメント欄には「デザインにほれた」「履き心地が良かった」など、多くの人の心をつかんでいることが分かります。そして、プロジェクト終了後、undaはJOURNAL STANDARDやBAPE、Graphpaperといった若者に支持されるブランドからのラブコールを受けました。こうしたブランドとのコラボレーションが実現したことで、新しいジャンルのプロダクトとしての地位を築いていったのです。
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このようにundaは、伝統と革新を掛け合わせるだけでなく、それを「誰に、どんな文脈で届けるか」を設計することで、新しい市場とユーザー層を切り開いたのです。
大切なのは、それを表層的な掛け合わせにとどめず、「誰の視点で、どのように再解釈するか」を突き詰めること。undaは、それがプロダクトの価値を左右することを証明しました。
プロダクト開発に限らず、企画や発信、事業づくりのあらゆる場面において、私たちが無意識に抱いている“思い込み”に気付くこと。そして、その構造を丁寧に見直すことができれば、目の前のモノやコトの可能性は大きく広がります。
undaのような視点の切り替えは、多くの方が「新しいもの」を創造する上での重要なヒントになるのではないでしょうか。
●著者プロフィール:高野翔一
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株式会社マクアケ PR部コーポレート広報
1984年生まれ。大手食品メーカーの営業やPR会社などを経験。PR会社では大手テーマパークをはじめ、さまざまな領域のPRを担当。2022年に株式会社マクアケへ入社。入社後は、コーポレート・サービス広報として携わりつつ、モノづくりを始めとした事業者の挑戦を後押しする広報を主に担当。
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