写真はイメージです 電車のドア横に立ってどかない、いわゆる“どかないマン”も迷惑だが、車両から車両へ移っていく“車内移動マン”も客が多い時間帯だと迷惑な存在になる。会社員の小島直輝さん(仮名・40歳)が体験した車内移動マンにまつわるトラブルを話してくれた。
◆突然ドアを勢いよく開けられ…
ある日、小島さんは浜松町から大江戸線に乗り、新宿方面へと向かった。時間は16時過ぎ、ちょうど帰宅する客も増え始めた時間だ。
「ほぼ満席で立っている客もチラホラ……という感じでしたが、大江戸線の車両って他の地下鉄の車両よりも少し狭いんですよ。だから、立っている客が数人でも混んでるなぁって感じるんですね。天井も心なしか低く、六本木から欧米系の人が数人で乗ってくると圧迫感がすごいです(苦笑)」
そして事件は青山一丁目を過ぎたところで起きた。
「私は連結部分の車両と車両を繋ぐところのドアにもたれかかっていました。すると、いきなりドアが勢いよく開けられたんです。ドアに体を持って行かれて、座っていたおばあちゃんに倒れかかりそうになりました」
小島さんは思わず、オイ!と声を荒げると、そこには隣の車両から移ってきたと思しき、60代くらいの老人がいた。
◆スーツケースを蹴って進み続ける迷惑老人
その男性は小島さんに謝りもせず、一瞥をくれるとまた奥へと歩いて行こうとした。行く手にはスーツケースを持った外国人がいたのだが……。
「なんと、そのじいさん、スーツケースを蹴ってどかして歩き始めたんです。そして、つり革を持って立っている客には体当たりして、どかしながら進み続けました」
老人を睨みつける外国人観光客、キャッ!と悲鳴を上げる女性など、車内は騒然となった。
さらに奥へと進もうとする老人はドア横の手すりを持って立っていた女子高生を、こともあろうか手で払いのけたのだという。
「女子高生のコは『いったーい! 何するんですか!』って大声で叫びました。すると、そのじいさん、なんと女子高生の腕を摑んで『お前が邪魔したんだろうが!』って怒鳴り始めたんです。でも、女子高生も負けてなくて、『どいてくださいって言えばいいじゃないですか!』って怒鳴り返しました」
これが火に油を注ぐ結果になり、老人はさらにヒートアップ。女子高生の腕を摑んでさらに怒鳴り続けたのだ。
◆外国人観光客が止めに入る事態に…
この状況にストップをかけたのは、意外な人たちだった。
「スーツケースを蹴られたアジア系の外国人観光客が『ストップ! ストップ!』って止めに入ったんです。これがきっかけで私や、近くにいた人たちも加わって『さっきから何やってんだ。暴行だぞ!』とか、『いい加減にしろ! お前が全部悪いんじゃねぇか!』など口々に言いながら、じいさんを女子高生から引き離そうとしました」
だが、老人もヒートアップし始めてしまったという。
「じいさんも引くに引けなくて、『なんだおめぇら、グルか!』ってわけのわかんないこと言って、また女子高生に掴みかかろうとしたんです」
◆勇気ある若者のおかげで強制退場
老人が女子高生に飛びかからないよう、乗客みんなでガードをしていると、電車は国立競技場駅に到着。駅に到着したことなんて気にもとめず、わめき散らし続ける老人だったが……。
「若いサラリーマン風の男のコが、『お前、ええ加減にせぇよ』って言いながら、じいさんの首根っこを思いっきり摑まえて電車を降りていってくれました。一瞬の出来事でみんなは呆気にとられてましたが、ドアはプシューと音を立てて閉まり、やっと車内に平和が訪れたのです」
その後、その老人がどうなったのかは不明だが、勇気ある若者のおかげで、その場が落ち着くことができたという。
電車内の移動はもちろん自由。しかし、混雑した車内を移動する際には、ドアに寄りかかっている人や立っている乗客への配慮は必須だろう。この老人のように、スーツケースを蹴る、邪魔だからと怒鳴りつけるのは論外である。
文/谷本ススム
【谷本ススム】
グルメ、カルチャー、ギャンブルまで、面白いと思ったらとことん突っ走って取材するフットワークの軽さが売り。業界紙、週刊誌を経て、気がつけば今に至る40代ライター