追悼リバティアイランド――「強すぎるくらい強く、賢い子だった」彼女の後継を見たかった

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2025年04月30日 18:20  webスポルティーバ

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 競馬ではよく「名牝」という言葉が使われるが、そう称されるうえで、重賞何勝とか、GIを勝ったかどうかとか、はっきりとした基準はない。GIIIをひとつ、ふたつ勝ったくらいの馬でも、人によっては「名牝」と呼ぶことがある。

 そして、そのあまたいる名牝たち、いわば"名牝群"のなかには、ごく少数だが、実績的に抜きん出た存在がいる。誰もがその強さを認める名牝中の名牝、まさにレジェンド級の名牝である。

 ここ最近で言えば、アーモンドアイやグランアレグリアらがそうだ。

 彼女たちがなぜレジェンド級かと言えば、一線級の牡馬相手に複数のGIを、それも強い競馬で勝っているからだ。

 彼女たちをはじめ、近年は牝馬の活躍が著しく、競馬の世界ではジェンダー差などがあたかもなくなったかのように言われているが、それは誤解であって、競馬でも体力面など、牝馬と牡馬との差はいまだに厳然としてある。

 つまり、牡馬、それも最強クラスの、場合によっては世界レベルの牡馬を相手に、GIを1回だけでなく何回も勝つ、というのは想像以上に大変なことなのだ。

 その点において、先日香港で不慮の事故によって予後不良となったリバティアイランドは、わずかに悔いを残した、と言えるかもしれない。

 牝馬三冠レースすべてを制し、史上7頭目の三冠牝馬となったリバティアイランド。この時点で、すでに立派な名牝だ。

 ただその後、牡馬相手のGI戦線に舞台を移してからは、なかなか結果を出すことができなかった。

 無論、そこには同情の余地もある。敗れたレースのうち、2着が2回あるが、このときの勝ち馬は、イクイノックスとロマンチックウォリアーだった。前者は驚異のGI6連勝を遂げている世界ナンバー1ホースであり、後者も地元香港をはじめ、オーストラリア、日本、UAEの4カ国でGIを制した香港の歴史的な名馬である。しかも、いずれも絶頂期にあるときに戦っている。本当に相手が悪かったのだ。

 彼女はこれら最強牡馬を相手にも、果敢に勝負を挑んだ。その意味では、このふたつの2着敗戦は胸を張っていい結果だ。

 リバティアイランドはやはり強かったのだ。三冠達成後は牡馬相手の競馬で勝てなかったとはいえ、この2度の2着敗戦によって、彼女もレジェンド級の仲間入りを果たしたと言ってもいいだろう。

 惜しむらくは「もう一度頂点に」という願いが叶わないまま、突如前途が断たれてしまったことだ。

 デビュー戦で見せた、上がり31秒4という常識外れの末脚。多くのファンと同じく、筆者もあの強烈な脚を見てから、彼女の虜になった。

 GI阪神ジュベナイルフィリーズをはじめ、GI桜花賞、GIオークス、GI秋華賞と、彼女の馬券を握り締めて声が枯れるほどの声援を送った。

 なぜ、これほどリバティアイランドに魅せられたのか。

 彼女が亡くなったあと、主戦の川田将雅騎手が自身のインスタグラムに載せた追悼コメントのなかに、こんな素敵なコメントがあった。

<強すぎるくらい強く、賢い子でした>

 彼女の産んだ子を見たかった――。

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