
5円玉のエラーは意外に出現率は高い
今回落札された5円玉は未使用ではなく、使い古された5円玉です。しかしよく見ると5円玉の穴がずれていることが分かります。俗にいう「穴ズレエラー」と呼ばれるものです。この穴ズレエラーはコイン蒐集家の間ではよく知られた存在です。特に発行初期のものほど多く見受けられる傾向にあり、決して超レアというわけでもありません。意外にも穴ズレエラーは存在するのです。
とすると、穴ズレエラーだから高値になったと断言できるでしょうか? もちろん、発行枚数に対してエラーのコインは少ないでしょうから、プレミアムがつくことは間違いありません。しかし、今回のオークションでは他にも昭和26年の穴ズレエラーの5円玉が落札されており、そちらは手数料込みで1万5000円ほど。何が異なるかというと、“穴のずれ方”が、まず1つ目のポイントです。
穴が極端に中心からずれればずれるほど評価は高まります。最も望ましいのは、未使用評価で大きく穴がずれているケース。ただし、戦後間もないころの5円玉ですから未使用、かつ大きな穴ズレはほとんど見つからないでしょう。今回のコイン鑑定機関「PCGS」(※)のスラブ評価では「XF40」と記載があります。極美品程度の評価であり、決してコイン自体の状態がいいわけではないのです。
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もう1つの珍しいポイント
実は今回落札された5円玉にはもう1つ珍しい点があるのです。それは、コインが納められているスラブ(鑑定されたコインを収める保護用の硬いプラスチックケース)表記が間違っているということ。昭和26年の5円玉なのになぜか「(1987)S62」と記載されています。昭和26年を昭和62年と間違えるという、本来はあってはならないコイン鑑定機関による表記エラーが発生したのです。エラーにエラーが重なっているのです。こうした点ももしかすると物珍しさから落札価格が高くなった理由と言えるかもしれません。
スラブの誤表記もたまに存在する
実はコイン鑑定機関によるスラブの表記が間違っていることはたまにあります。いかんせん、PCGSのコイン鑑定は日本人ではなく、基本的に海外の方が行っていると思われるため、こうしたミスが生じるのでしょう。エラーの上にエラーがさらに重なるという珍事象です。なお、コインの鑑定は、一部の日本のコイン商を通じて行うことができます。海外のコイン鑑定機関だけではなく、日本貨幣商協同組合による鑑定もあります。ただし、日本貨幣商協同組合の場合には真贋の評価はされますが、細かいグレードの評価(ランク付け)はありません。
日本貨幣商協同組合が日本のコインの表記を間違えることはまずありえませんが、海外のコイン鑑定機関ではそうしたエラー表記も実際見受けられることがありますので、鑑定を行った場合にはしっかりその結果も確認したほうがよいでしょう。この5円玉のケースのように場合によってはプレミアムがつく可能性もあります。
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銀座コインオークション「第122回入札誌『銀座』」 Lot番号:451 5円黄銅貨 昭和26年 穴ズレエラー PCGS(XF40) ※スラブ誤表記(S62)
伊藤 亮太プロフィール
慶應義塾大学大学院商学研究科修了。一般社団法人資産運用総合研究所代表理事。ファイナンシャルプランナーとして、家計・保険等の相談、執筆、講演、大学講師を主軸に活動。大学院時代の専門は社会保障で、経済・金融に関する解説も得意。コイン収集マニアの一面も。(文:伊藤 亮太(株式・ファイナンシャルプランナーガイド))