
第一志望の国立大学に不合格となった我が子。浪人して再チャレンジしたいという強い意志を尊重し、埼玉県在住のLさん(50代)夫婦は、その選択を後押しすることにしました。しかし、その決断は、遠く離れた祖母の怒りを招くことになります。「なぜあの私立大学を辞退したのか」「なぜ現役合格にこだわらないのか」。入学金の支払い期限が過ぎた今、家族のあいだで価値観のギャップが浮き彫りになってきました。
【漫画】親としても不安だけど…「娘が納得して自分の人生を歩めればそれでいい」(全編を読む)
第一志望の国立は不合格、そして浪人という決断
Lさんの娘さんは、都内の国立大学を第一志望としていました。国内最高峰で教育を学びたいという夢を抱き、高校入学からコツコツと努力してきた姿を、Lさんはずっと見守ってきました。しかし、結果は不合格。最難関私立大学には合格していましたが、娘さんの意志は固く、「やっぱり浪人して、来年もう一度国立大に挑戦したい」と涙ながらに語るのを前に、Lさん夫婦は覚悟を決めました。
家族会議を開き、私立大学の入学金を納付せず辞退することを決定。娘さんはすでに予備校の体験授業にも参加し、申し込みも済ませてきました。
祖母からの“怒りの電話”とその主張
そんな中、静かだった空気が一変します。「あんたたち、何やってるの?」という怒気を含んだ電話が、受験結果を知った祖母からかかってきました。
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祖母は、娘さんが私立大学の入学手続きをせず浪人を選んだことに強く反発しました。「話し合いが足りなかったんじゃないの?」「親として、もっと説得すべきだったのでは?」と、Lさんの判断を真っ向から否定するのです。
「浪人1年で、生涯年収に2千万円の差がつくと聞く。社会に出るのが遅れれば婚期も遅れる。最難関私立大学に合格して素晴らしいのに、なぜ進学しないのか。現役合格にこだわるべきじゃなかったのか」と祖母は語ります。
説得力があるようで、Lさんにはどこか腑に落ちません。「娘の進路は娘の人生」「娘の意見を尊重して決めた」と伝えると、「だからって、子どもを説得するのが親の務めでしょ!」と感情的に電話を切られてしまいました。
価値観のギャップがもたらす現役至上主義
その後、祖母から娘へ直接LINEで長文が送られてきました。内容は娘の努力を認めつつ、私立大学への進学を再度すすめるもので、「今からでも辞退した私立大学に頭を下げて頼めば、何とかなるかもしれない」とまで書かれていました。娘さんは呆れ、祖母にLINEでスタンプを返信するしかできませんでした。
祖母なりの愛情表現なのだとは理解できます。ですが、そこにあるのは、「現役至上主義」への信仰ではないでしょうか。
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確かに、就職や結婚、出産など、人生の大きなイベントはタイムラインに乗せて考えられがちです。でも、「一年遅れること」が人生の失敗を意味するわけではないとLさんは考えます。それでも、昭和の時代を生きた祖母には、「一発勝負で勝つこと」こそが美徳であり、「やり直し」は敗北の象徴なのかもしれません。
親としての“不安”と“覚悟”
Lさんは「私が不安じゃないと思ってるの?」と心の中で叫びます。実際、娘が来年も不合格だったらどうしよう、今年合格した最難関私立大だって、来年の合格は保障されていません。予備校生活が合わなかったら? 途中で心が折れてしまったら? そんな不安が常に圧し掛かっているのです。
それでも、娘さんは明確な意志を持ち、自らの未来を見据えています。Lさんができるのは、その決断を信じ、支えること。
「どんな結果でも、娘が納得して自分の人生を歩めればそれでいい」Lさんはそう自分に言い聞かせます。
予備校に通う初日、娘さんに手作りのお弁当を渡しました。娘さんの後ろ姿を見送るとき、Lさんは「今が、この子にとっての本当の第一歩なんだ」と感じたのです。
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“結果”よりも大切な“過程”を見守る
社会には、「最短距離で、確実な成功を目指す」ことが良しとされる風潮があるのでしょう。もちろんそれが良いに越したことはないとLさんも思います。現役合格、ストレート進級、即就職が理想なのは言うまでもありません。
ですが、現代の人生は、必ずしも一本道ではありません。回り道が、より豊かな経験や気づきをもたらすこともあります。とくに進学は、「何を学ぶか」「どう生きるか」を決める大きな分岐点なのです。
娘さんが、自分の納得する選択をし、自分の力で歩こうとしている今、Lさんにはこの1年がたとえ“空白”になったとしても、娘さんにとっては“宝物の時間”になればいいと思っています。
大学受験…現役か?浪人か?
世代間によって浪人を選択するべきか、価値観は違うようです。みなさんの思いを聞きました。
▼東京都・40代
息子の大学受験。第一希望の大学に落ちてしまった息子。第二希望の大学に進学しようとすると祖父からの電話「あと少しだったんだから、浪人してでも〇〇大学を目指したほうがいいに決まってる。大学名は一生ついてまわるんだ。長い人生でみたときに一年なんてどうってことない、浪人してやり直せ!」と言われました。もう本人は第二志望の大学に行こうとしているのに。
▼大阪府・50代
娘の大学受験。本人が希望する大学へは合格できず、本人は浪人するか悩んでいる段階で、義父からの電話。「浪人なんてしなくていい。女の子は早く社会にでたほうがいい」と時代錯誤のことばかり言われて、うるさかったです。「浪人した女子なんて、嫁の貰い手がない」とまで、言われました。
▼京都府・40代
息子とその友達は同じ大学を第一希望にしていたのですが、二人とも不合格。二人で「来年合格しよう」と予備校の見学や申し込みを進めていたのですが、友達は国立の後期試験にあっさり合格し進学することになりました。息子が一人で寂しそうと思うのは私だけでしょうか。
(まいどなニュース特約・松波 穂乃圭)
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