バルサ、インテルに「緩み」をつかれて失点も追いつく 「圧倒的な技術」は裏切らない

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2025年05月01日 18:20  webスポルティーバ

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 チャンピオンズリーグ(CL)準決勝、モンジュイックで行なわれたバルセロナ対インテルの第1戦。バルサを攻撃的サッカーとすれば、5バックで守りを固めるインテルは守備的だ。最近のイタリアサッカーはだいぶ変わったが、かつては守備的と相場が決まっていた。言うならば、インテルは国の伝統を受け継ぐイタリアらしいクラブだ。一方、バルサはヨハン・クライフが監督を務めていたことから、攻撃的サッカー界をリードするカリスマ的な存在として知られている。

 下馬評で上回ったのはバルサ。大手ブックメーカーのひとつ、ウィリアムヒル社の優勝予想オッズはバルサが3倍でインテルが5倍。1番人気対4番人気の対戦だった。

 ところが、開始わずか30秒、右ウイングバック、デンゼル・ダンフリース(オランダ代表)の折り返しをFWマルクス・テュラム(フランス代表)が右足かかとで流し込み、インテルが先制する。

 さらにインテルは前半21分、フェデリコ・ディマルコ(イタリア代表)が蹴った左CKをCBフランチェスコ・アチェルビ(イタリア代表)が落とす。それに反応したダンフリースがオーバーヘッド気味のボレーで豪快にバルサゴールに突き刺した。

 2−0となって想起したのは、1993−94シーズンの決勝。アテネで行なわれたミラン対バルセロナ戦だ。試合前に配られた、識者100人に聞いたアンケートによれば、90人近くがバルサを勝者に挙げた。今回と同様のパターンである。

 ミランと対戦した31年前のバルサはそのまま崩れていった。ロマーリオ、フリスト・ストイチコフ、ロナルド・クーマンという豪華な助っ人に加え、ジョゼップ・グアルディオラまで擁しながら、バルサは0−4で敗れた。CL決勝史上、最も点差がついた一戦、最大の番狂わせとしてサッカー史に刻まれる。

 バルサはクラブの体質として、立ち上がりに弱点を抱えている。格下に先制弾を許しやすい傾向がある。実際、そこから追い上げていき逆転するという試合を幾度となく目にしてきた。もちろん、追って届かず、という試合も少なくない。こうした展開の緩いサッカーをする頻度の多さが、ライバルチームであるレアル・マドリードに、CLの優勝回数(15対5)で大きく劣る理由だと言える。

【相手ディフェンダーが密集する前で...】

 だが、インテル戦で0−2とされたあとのバルサが浮き足立つことはなかった。そのバックボーンとなっていたのは技巧だ。「〇〇は裏切らない」という言い回しがあるが、バルサの場合はここに「圧倒的な技術」が入る。

 その代表格が右ウイングのラミン・ヤマル(スペイン代表)だ。度肝を抜かされたのは2失点目のあとのキックオフから、5度ほど攻守が入れ替わったあとだった。

 前半24分。MFフレンキー・デ・ヨング(オランダ代表)からパスを受けると、まずテュラムをかわす。続いて向かってきたニコロ・バレッラ(イタリア代表)も縦に楽々とかわすと、ペナルティボックスの角から内側に侵入する。目の前は人垣を作るかのように、引いて構えるインテルのディフェンダーが密集していた。

ところがヤマルは次の瞬間、左足を振り抜き、逆サイドのポスト直撃のシュートを見舞ったのだ。跳ね返った先は枠内。スーパーゴールが生まれた瞬間だった。リオネル・メッシも真似できそうにない、スゴみと芸術性とを備えたバロンドール級の一撃である。

 2−2とする同点弾が生まれたのは前半38分。MFペドリ(スペイン代表)の右からのクロスを左ウイングのラフィーニャ(ブラジル代表)が頭で落とし、フェラン・トーレス(スペイン代表)がプッシュする完璧な崩しだった。試合は振り出しに戻る。攻めるバルサ。守るインテル。この構図がより鮮明になって前半が終了した。

 この流れでいけば後半はバルサが爆発するのではないか、との読みは外れた。いつ逆転ゴールが決まってもおかしくない状況だった前半終了間際の勢いは失われていた。バルサは同点に追いついたことで少なからず精神的に落ち着いてしまったようだ。

 引いてゴール前を固めるばかりだったインテルが、後半開始から人数をかけて攻めるようになったこともそれに輪をかけた。奪われた陣地を回復しようとばかり、前に出た。

 もとからバルサは高いラインを敷くチームだ。インテルの選手は前残りになりがちだった。バルサDFは裏を突かれると危ない状況に陥っていた。"緩いバルサ"が現れたかに見えた。

【気分的にラクなのはインテル】

 後半17分。前半からインテルのなかでひとり動きのよさを際立たせていたダンフリースが予想どおり裏を突き、右CKを獲得する。得点が入りそうなムードがぷんぷんと漂うなか、MFハカン・チャルハノール(トルコ代表)のキックはファーポストを突いた。高々としたジャンプで現れたのは背番号2のダンフリースだった。2ゴール、1アシストの活躍を、この大一番でやってのけた。

 だが、バルサはこれで再び気合いが入ったのだろう。直後のキックオフから鬼気迫るパス回しを再開する。その流れで左CKを得ると、MFダニ・オルモ(スペイン代表)がペナルティボックスの角に立つヤマルにグラウンダーのパスを出したかに見えた。

 ところがヤマルはスルー。その先にいたのはラフィーニャだった。ゴール正面から左足を振り抜くと、ボールは勢いよく加速しながらバーを直撃。GKヤン・ゾマー(スイス代表)に当たりながら枠内に転がり落ちた。

 通算スコア3−3。するとバルサは、再び少し落ち着いてしまう。インテルに反撃を許す。

 その後、試合は斬るか斬られるかの、一触即発の攻防になっていく。後半26分にはテュラムがGKと1対1になりかける。その3分後には、バルサはインテルにゴールを割られてしまった。ダンフリースが最終ラインの背後に送ったアーリークロスを、ヘンリク・ムヒタリアン(元アルメニア代表)が押し込んだのだ。判定はVARの末、オフサイド。わずか数センチという微妙なジャッジだった。

 もっとも、試合の終わり方がよかったのはバルサのほうだ。最終盤の後半42分、ヤマルが超技巧的なバー直撃のループシュートを放てば、アディショナルタイムに入った後半46分には、ラフィーニャが左足で強烈な枠内シュートでGKゾマーを慌てさせた。

 1週間後の第2戦。インテルにとって痛手なのは、この日、故障のために前半でピッチをあとにしたラウタロ・マルティネス(アルゼンチン代表)が出場できそうもない点だろう。しかし、流れそのものは悪くない。気分的にラクなのは、劣勢を予想されながら同点で折り返したインテルのほうだ。バルサがダンフリースを止めることができていないことも好都合だ。

 一方のバルサで気がかりなのは、前で述べたとおり、時折、緩さが顔をのぞかせることだ。ただし爆発力はある。打たれたら打ち返すパンチ力がある。守備自慢のインテルから3点を奪えたこともポジティブな要素だ。ヤマルが一切、インテル守備陣に止められていない点も強みだ。

 準決勝第2戦は、パリ・サンジェルマン対アーセナル戦ともども、目が離せない一戦になりそうだ。いつにも増して面白いCL最終盤の戦いである。

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