限定公開( 1 )
カインズホーム、DCM、コーナン、コメリ、アークランド、ナフコ、などがホームセンターの大手銘柄なのですが、首都圏の中心部にお住まいの方にはあまり馴染みがないかもしれません。ホームセンターは、家回りの商品がなんでもそろう便利な店なのですが、地方や郊外のロードサイドに店舗が偏っているため、東京区部周辺ではあまり見かけません。
なぜかと言えば、家周り需要が大都市中心部ではあまりないからです。家の中のインテリア雑貨、家庭用雑貨、日用消耗品などはどこに住んでいても必要かもしれませんが、ホームセンターで広く売場を占めているのは、家を修繕、改装するための材料や工具、外構回り商品、園芸やガーデニング、ペット、カー用品などであり、広い庭付き一戸建てに住んでいる人が主要顧客となるため、地方、郊外がターゲットとならざるを得ないのです。
都道府県別に人口一人あたりのHC販売額を、統計データで比べてみると、地方ほど高く、大都市部は低く、最低は東京都ということになってきます。ちなみに、東高西低という傾向もあるのですが、これは除雪用品や冬用タイヤなど冬季対応需要が加算されるからです。また、家周り需要が最も大きくなるタイミングは、家の新築の時であるため、HC需要は住宅着工件数との関係性が高いこともわかっています。
と、ここまで言うともうお分かりと思いますが、人口減少高齢化が進む地方を基盤としているホームセンターは、今後の急速な需要減少が避けられない環境に置かれている、ということです。こうした状況を十分わかっているHC各社は、家周り需要以外の新たな市場開拓を進めています。
|
|
新たな市場とは、大まかに、(1)大都市市場への適合、(2)農業分野の強化、(3)プロ向け建材ニーズの取込み、の3つが挙げられます。大都市部では家周り需要は小さくはなりますが、狭小住宅やマンション住まいでも、家中需要は存在しています。インテリア雑貨、家庭用雑貨、日用消耗品などに絞り込んだ品ぞろえの都会暮し向け店舗を開発して、街の中へ出ていくという考え方ですが、言うほど簡単ではないようです。
都市部需要向けには、既に無印の良品計画が確固たる地位を占めていますし、家具インテリア大手ニトリのデコホーム、最近では100円ショップDaisoから発祥したStandard Productsといった新業態も参戦していますが、HCの存在感はまだほとんどありません。
農業需要の取込みでは、この分野に早くから取り組んでいるコメリが大きな存在感を持っています。この市場では、(1)過疎地でも耐えられる損益分岐点構造、(2)収穫期までの延べ払い対応(金融的機能)(3)農業への支援機能(販売支援、技術支援など)など、一般的に小売業が持っていないインフラを整備する必要があり、コメリはそこにかなりの投資をしてきました。
この需要の競合は少なく、ブルーオーシャンかもしれませんが、インフラ構築というハードルは高く、他社の新規参入は簡単ではないでしょう。
プロ向け建材需要への対応に関しては、コーナン商事、DCMなどの大手が既に実績を出しつつあります。大都市郊外においても近年、新規住宅着工は減っているのですが、既にある住宅のリフォーム需要などは活況を見せています。
|
|
こうした小口の工事では、大規模住宅開発などと違って、現場で資材調達をする機会が増えており、HCの利用機会は増えています。こうした環境変化を先取りしたコーナンやDCMのプロ向け店は、需要を取り込み、着実に店舗を増やしていますし、この動きに追随する大手も増えつつあります。
このように、HCの新規市場開拓にまだ正解はでていないようですが、チャレンジし続けることが生き残りの条件となることだけは確かです。
(中井彰人、中川朗)
|
|
|
|
Copyright(C) 2025 ITmedia Inc. All rights reserved. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。