「使えるものを使って何が悪いんですか?」1社目は2週間、2社目は4日でスピード退職した28歳男性の主張

0

2025年05月02日 09:21  日刊SPA!

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

日刊SPA!

「逃げグセなんてついてないですよ。ヤバい会社だから退職代行を使っただけ」と井村さんは明るく笑った(※画像はイメージです)
 いまや若者から中高年まで使う退職代行。退職妨害や精神疾患など使わざるを得ない状況がある一方で、その気軽さにハマりリピーターと化す人も続出している。使い方によっては“中毒性”がある退職代行の側面に迫った!
◆2社連続でスピード退職…「使えるものは使う」主義

「退職代行を使った1社目は2週間で、2社目は4日で辞めました。そもそも、勤めた会社がヤバかったから利用しただけですし、使えるものを使って何が悪いんですか?」

 そう話すのは、井村雅也さん(仮名・28歳)。井村さんはデザイン系の専門学校を卒業後、5年勤めたデザイン会社からステップアップするため退職。その後、転職した2社を短期間で辞めている。

「1社目は書籍を扱う小売りの会社。入社したらデザインとは無縁の工場部門に配属されて、『話が違います』と上司に言っても適当に流されるだけ。しかも機嫌が悪いとブチギレられて話にならない。それなら辞めてやる!と2週目の金曜の退勤後に退職代行モームリに連絡。次の月曜には退職完了してやりました」

◆「会社も結局は入社ガチャ」

 退職から3週間後、井村さんはエンタメ系の会社に入社。しかし、2回目はさらに早く退職代行を使うことになる。

「2社目で配属されたのは検品の部署。また希望してたデザイン部とは違ったので初日で辞める決心がつきました。4日目の昼休みにモームリに連絡するとリピート割も適用されるし、ラッキー!と思いながらその日付で退職。2社目は超気楽に連絡したんで、1社目と違って退職代行を使う迷いは一切なかったです」

 話が違うとはいえ、職探しがテキトーすぎやしないか。

「話が違うのを見極められなかった自分も悪いですけど、会社もガチャと同じで入社してみないとわからないじゃないですか。退職代行を使って後悔はないし、むしろ即ヤメできて本当に助かりました」

 現在は映像制作会社で半年ほど勤続中の井村さん。今度はすぐに辞めないことを祈る。

◆産業カウンセラーが語る「若者たちはなぜ退職代行に走るのか?」

 産業カウンセラーとして多くの若手社員の退職相談に乗る渡部卓氏は、特に若者の間で退職代行サービスの利用が増えている背景として、“タイパ重視”の心理を挙げる。

「少しでも違和感を覚えたら早く転職して効率よく働きたいのが現代の若者の思考。辞めるときも揉めて時間を無駄にしたくないという気持ちが強い。泣き落としや恩を売るといった義理人情も彼らには通用しません。また、SNSで情報が共有され、退職代行サービス自体の認知度がここ2〜3年で急上昇したのも、利用に抵抗がなくなっている理由でしょう」

 さらに若者のコミュニケーションスタイルの変化も、利用を後押ししているという。

「もともと日本人は同調圧力が強く、注目を浴びたり人と違うことをしたりするのを避けたがります。そのため、相手を尊重しつつも率直に自己主張する“アサーション”と呼ばれるスキルが低い。いわば、嫌われたくないからなるべくNOと言いたくないんです。それに加えて、メールやSNSなどテキストコミュニケーションに慣れ切ったZ世代は、“電話に対する恐怖感”が強い。言いづらいことは言いたくない、対話もしたくない、慣れないことがストレスになる。そんな彼らが、退職代行に飛びつくのは必然です」

◆リセット依存×五月病でGW明けは利用者が増大

 また、繰り返し利用する若者には“リセットグセ”がついてしまっているとも。

「“嫌ならリセットしてしまえばいい”という発想自体が、中高年にはなかったデジタルネイティブな若者特有のもの。中でも、自己効力感が低くてストレス耐性が弱い人は、職場に心を開ける環境がなく人に相談できないと、ストレスの根源と向き合ったり自分自身を変えようとしたりしない。結果、その場しのぎで逃げることに依存するようになってしまい、繰り返し利用する人が出てくる。特にゴールデンウイーク後は、五月病も相まって現実逃避的な退職代行の利用が増える印象がありますね」

 面倒事やストレスを回避したい若者の傾向が、利用に拍車をかけているのだ。

【産業カウンセラー・渡部 卓氏】
職場のメンタルヘルス・コミュニケーション対策の第一人者。主な著書に『あなたの職場の繊細くんと残念な上司』(青春出版社)などがある

取材・文/週刊SPA!編集部

―[[退職代行リピーター]の実態]―

    前日のランキングへ

    ニュース設定