不妊の原因は男女で半々。男性側、もしくは男女両方に不妊の原因があることも「子どもが欲しいけど、夫とセックスレスなんです」
日本初の“下半身美容”に特化したヴェアリークリニックの院長・井上裕章氏のもとには、そうした悩みを持った女性が稀に訪れる。
少子化進む日本において、長年注目を集める妊活。ロート製薬が全国の男女3万7000人余りを対象に調査した「妊活白書2024」によれば、25〜44歳までの既婚者の妊活実施率はここ3年で増加傾向にある。そうしたなか、なかなかスポットライトが当たらないのが男の妊活だ。
しかし「子どもを授かりたいなら男性側も意識することがある」と井上先生は語る。具体的に「男性の妊活」とはどのようなものなのか。東大理三卒医師の井上先生が教えてくれた。
◆男性の趣味の定番だけど……妊活では控え目にすべき習慣
「不妊の原因というのは男女で半々なんです。クリニックにも『妊活のために夫とのセックスレス解消』を目的に施術を受けにくる女性がいますが、男性からのアプローチはあまり聞いたことがありません。妊活に関しては女性任せにするのではなく、男性ももっと意識したほうがいいのではないかと思いますね」
実際、WHOの報告によると、不妊に悩む男女のうち女性側に原因がある事例は約41%、男性側が原因の事例は24%、ほか24%は男女ともに不妊の原因がある。つまり、不妊症の事例の半分は男性側にも原因があるというわけだ。
セックスレスとなると妊活以前の問題だが、子どもを授かるために、男性側にも「日常生活で意識できることがある」と井上先生は言う。続けて解説する。
「エビデンスがあるものでいうと、『サウナ』の行き過ぎは要注意。睾丸が体内ではなく外に出ていることからもわかるように、精子は体温以上の熱に晒されると、ダメージを受けてしまい、妊活にはあまり良くない。適度に楽しむ程度ならいいですが、1日に数回サウナに行くマニアの男性は習慣を見直すものありですね。また、キツすぎる下着やタイトなボトムスなども睾丸の温度を上げるので見直してみてもいいかもしれません」
また、妊活においてヨウ酸を摂取するなど食生活を意識する女性は多いが、実は男性にも妊活に良いとされる成分があるという。
「亜鉛やビタミンD、DHA、L-カルニチンは精子の状態を良くするという報告があります。逆に避けるべきは、過剰なアルコール摂取、ファストフードや菓子パンなどトランス脂肪酸を多く含む食品。実はカフェインも摂りすぎるとよくないという論文があります。また、成分以外の例だと男女ともに過剰なストレスはよくないとされています。男性の場合ストレスが男性ホルモンの低下につながり、精子の質が下がってしまうのです」
◆妊活のためのED治療には保険が適用されることも
結局は、妊活に励むなら男女ともに健康的な生活を送るという基本に立ち返る必要がある。ただ、「妊活に良い」とされる食べ物や習慣についてはネットをはじめ様々なメディアで情報が流布しており、「何を実践すべきか分からない」という人もいるだろう。井上先生は「不妊を疑ったら早い段階で男女両方とも医療機関にかかることが大切」だと力説する。
「不妊の原因は男女で半々。検査機関にかかり原因がはっきりしたら、妊活や不妊治療の指標が見えてきます。例えば、ホルモンの量が少ないのであればそれを補充したり、精子の量が少なければ人工授精も視野にいれたりするなど、早めに適切な治療を受けることにもつながります」
そのほか、不妊治療は保険適用されるケースや、自治体によっては助成金が出ることも知られている。
「男性が原因の不妊にも保険が適用されることがあります。例えば、不妊治療中で精巣内には精子があると判明した男性は、いくつかの条件に当てはまれば精巣から精子を採取する手術、『精巣内精子採取術』が保険適用となります。また、ED治療ついても、過去6か月以内に本人またはパートナーが不妊治療を受けており、かつ勃起不全と診断された場合は保険適用となります」
治療をうけるにも保険適用や助成金を申請するにもまずは原因を知ること。妊活、こと不妊治療においては、最初の段階で、男女ともに専門機関にかかることが大切。そして、冒頭のセックスレスを解消し、夫婦の営みを続けることためにも男女の双方の努力が必要だ。
<取材・文/ MySPA!特別取材班>
井上裕章
美容外科医。東京大学医学部卒。外科での治療や美容クリニック勤務を経て、2022年に日本で唯一の下半身美容クリニックveary clinicを開院