写真 「アシックス(asics)」が、トップアスリート向けのランニングシューズ「メタスピード(METASPEED)」シリーズの最新モデルを発表した。発表に伴い、東京・有明のブリリアランニングスタジアムでグローバルローンチイベントを開催し、国内外からおよそ100媒体が集結。アシックスの廣田康人代表取締役会長CEOと、同社のスポーツ工学研究所長でCプロジェクトの部長を務める竹村周平氏、同社のマーケティング統括部長のGary Raucher氏に加えて、契約アスリートが複数名登壇し、最新シリーズの全貌を明らかにした。
アシックスは、トップアスリートがレースで勝てるシューズを開発する組織として、「頂上(CHOJO)」の頭文字を取った開発チーム「Cプロジェクト」を2019年に発足。当時の廣田康人社長(現・代表取締役会長CEO)直轄組織としてスタートした同プロジェクトでは、ランナーの走法の違いに着目し、歩幅の大きいストライド型のランナーに向けた「メタスピード スカイ」と、歩幅を狭くすることで足の回転率を上げるピッチ型のランナーに向けた「メタスピード エッジ」の2種類からなる「メタスピード」シリーズを展開。アスリートの声に耳を傾け、さまざまなテストを通して開発を進め、2021年の初代「メタスピード」以降、2022年には「メタスピード +」、2024年には「メタスピード パリ」を発表してきた。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会では、同シリーズを履いた道下美里選手をはじめとした3選手が金メダルを獲得し、パリ五輪の男子マラソンでは、メタスピードを着用したベルギーのバジル・アブディ選手が銀メダルに輝くなど、各大会で存在感を残している。
今回、発表した最新シリーズは、ストライド型のランナーに向けた「メタスピード スカイ トウキョウ(METASPEED SKY TOKYO)」とピッチ型のランナーに向けた「メタスピード エッジ トウキョウ(METASPEED EDGE TOKYO)」に、新たに軽さを追求したモデル「メタスピード レイ(METASPEED RAY)」を加えた3モデルを展開。前作は、パリ五輪の開催にちなんで「パリ」と名付けられたが、同モデルは、今年9月に世界陸上が東京で開催されることを受けて、「トウキョウ」と命名。明日、明治神宮外苑特設コースで開催されるアシックス主催のレースイベント「トウキョウスピードレース(Tokyo:Speed:Race)」を皮切りに、各大会で着用されるという。発売時期は、7月下旬を予定。アシックスのファクトリーアウトレットを除く各店舗と公式オンラインストア、全国のスポーツ用品店などで順次取り扱う。
メタスピードスカイとメタスピードエッジの2モデルは、いずれも、前作と比較して約15gの軽量化を実現。ミッドソールには、同社の素材として最軽量で、反発性の高い新素材「FF LEAP(エフエフリープ)」を採用し、「FF TURBO PLUS(フラットターボ プラス)」を組み合わせて2層構造に仕上げた。アッパーには、軽量で通気性に優れ、スピード走行時にもブレを抑制する機能を持つ「モーションラップアッパー3.0」を採用し、アウトソールには、さまざまなコンディションでも優れたグリップ力を発揮する独自素材の「アシックスグリップ(ASICSGRIP)」を使用した。エネルギーリターン率は、メタスピードスカイが約18.8%、メタスピードエッジが約21.4%向上。価格は、いずれも2万9700円。
メタスピード レイは、同社の契約アスリートから軽量性を追求したシューズを求める声が多かったことから、開発に至った。重量はわずか129g(27cm、片足重量)と、同社が展開するカーボンプレート搭載の長距離用ランニングシューズの中でもトップクラスの軽量性を備え、その軽さから、日本語の「零」を名前に冠した。軽やかな走り心地でスピードを重視するランナーに向けたシューズとして設計。ミッドソールとインソールには、新素材のエフエフリープを採用し、軽量のカーボンプレートを内部に搭載することで、推進力を高めた。アッパーには、軽量で通気性に優れ、フィット性が高い「マトリックス(MATRYX®)」を採用。アウトソールには、他モデル同様、アシックスグリップを採用した。価格は3万3000円。
メタスピードシリーズは、毎年注目が集まる箱根駅伝で年々シェア率を拡大しており、今年は同社のシェア率が「アディダス(adidas)」に次いで2位となった。その結果を受けて、同社のスポーツ工学研究所長でCプロジェクトの部長を務める竹村周平氏は、「徐々に評価を受けてシェアが上がってきているので、引き続き認められて履いていただけるよう、常に努力を絶やさずに開発を続ける。箱根に限らず、国際大会でのブランド地位を確立していく」と意気込む。
ランニング業界では、各メーカーがそれぞれのイノベーションを通して毎年新作を発表し、開発合戦を繰り広げているが、竹村氏に改めて自社の強みを尋ねると「アスリートとの距離が近いこと」だと話す。「今回の発表会でも、アスリートの控え室に伺った際に選手から『竹村、久しぶり!』と声をかけてもらい、プライベートな会話で盛り上がることもあった。私に限らず、Cプロジェクトのメンバーはアスリートと本音を話し合えるような距離感を築けているので、彼らの思いを深掘りし、声を形にすることができている。我々のイノベーションは、アスリートの声がなくては実現できないし、今後も、彼らが求めるものであれば、努力を惜しまずに開発に取り組んでいきたい」(竹村周平氏)。