「ドラッグストア」三国志の時代へ 都市・郊外・フードで覇権を握るのはどこか

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2025年05月03日 08:20  ITmedia ビジネスオンライン

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マツキヨが都市型で強い理由は?

 イオンが主導するドラッグストア(Drg)の大再編が成立し、売り上げ業界1位ウエルシアHD(売り上げ1兆2173億円)とイオンが出資していた2位ツルハ(同1兆247億円)が2027年までに経営統合することが決定しています。


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 単純合算で売り上げ2兆2447億円という巨大Drgの誕生で、現在の3位マツキヨココカラHD(同1兆225億円)、4位コスモス薬品(同9649億円)を圧倒するトップ企業の誕生、として大きなニュースとなりました。


 ツルハは、アクティビストファンド、オアシスが13%の株式を取得して以降、さまざまに株主提案を受けていて、ホワイトナイトとして名乗りを上げたイオンの傘下に入ることを選んだ、という話です。


 ただ、この大再編劇もこれで完成ではないかもしれません。イオンの出資するDrg大手、クスリのアオキ(売り上げ4368億円)も、オアシスから株主提案を受けていることから、イオンとの統合が取り沙汰されているのです。


 仮にその方向で進むとすると、イオンのDrg事業は、売り上げ2.7兆円弱という圧倒的トップシェアとなり、残る競合が統合しても追いつけない存在になるのです。しかし、業界の覇者は、必ずしもイオンに決まったわけでもないのです。


 Drgは主に、都市型、郊外型、フード&ドラッグの3タイプで構成されています。都市型の代表はマツキヨココカラで、首都圏や京阪神の一等地を押さえた上で、各地方の中核的都市に出店しています。郊外型、これが一般的なドラッグストアで、地方のロードサイドから発祥した全国各地の地場Drgが合従連衡してでき上がった企業で、ウエルシアもツルハもこのグループになります。


 変わり種はフード&ドラッグで、地方ロードサイドの後発組であり、郊外型がある程度浸透した後で、先発組と差別化するために、食品の低価格販売によって集客し、化粧品、医薬品をついで買いさせるモデルです。そして、低価格を維持するため効率性を重視したチェーンストア理論の具現者でもあり、郊外型からシェアを奪うことで成長してきました。


 郊外型は、その亜種として進化したフード&ドラッグとの直接対決ではちょっと分が悪いのです。フード&ドラッグ大手と言えば、コスモス薬品、クスリのアオキ、ゲンキーとなります。


 この3タイプの競争は微妙な関係になっていて、都市型と郊外型は相互に相手方のエリアが苦手で、ざっくり都市と郊外で棲み分けている、と言っていいでしょう。郊外型はフード&ドラッグを苦手としていて、単独では戦わず、M&Aによる合従軍を構成して対抗している、と言ってもいいでしょう。


 フード&ドラッグは、チェーン効率を阻害する異物を増やすM&Aをあまり好みません。また、地代の高い都市部にも出ていきません。これらを総合すると、郊外型は、フード&ドラッグの攻勢に対して統合による合従で対抗していますが、店舗ガチンコでは劣勢気味です。フード&ドラッグは今後も郊外型既存店のシェアを奪って成長を続けることが予想されます。


 都市部は、郊外型やフード&ドラッグから攻められにくいため、競争が若干緩やかであり、収益的にも安泰とみられます。そして、郊外型とフード&ドラッグの敗者に対して救済的M&Aを行うことができる、ということになります。


 まとめると、成長し続けるフード&ドラッグに対抗するために、郊外型は再編と統合を続けざるを得ないということです。つまり、縮小する地方ロードサイドでのシェア競争は、レッドオーシャンの極みだ、ということです。そうなると、郊外の激闘で漁夫の利を得るのは、都市型の勝者であるマツキヨココカラなのかもしれません。業界覇権の行方はまだ決まったわけではないのです。


※この記事は『小売ビジネス』(中井彰人、中川朗/クロスメディア・パブリッシング)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。



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