《高齢者を狙う“最新詐欺”》劇場型からロマンス・投資・闇バイト、狡猾さが進化する悪質手口

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2025年05月03日 09:00  週刊女性PRIME

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週刊女性PRIME

シニア女性が詐欺集団の標的に(イメージ画像)

「シニアの方は詐欺の最新手口に疎く狙われやすい。高齢女性の優しさにつけ込む犯罪も多いんです」

 そう話すのは、詐欺や悪質商法の手口に精通するジャーナリストの多田文明氏。

特殊詐欺は65歳以上、女性が被害

 警察庁によると、2023年の特殊詐欺の認知件数は1万9038件で、被害額は452億円を超えた。うち65歳以上の高齢者の被害は78%、そして男性より女性のほうが多いようだ。

「特にGW前後は特殊詐欺の発生する可能性が高い傾向にあるので注意が必要です」(多田さん)

 警察官を装った特殊詐欺事件が全国で急増中だ。警察庁によると2025年1月から2月末までに1039件、被害額は106億円を超える。

 2024年7月下旬には、鹿児島県在住・70代女性宅の固定電話に警察官を名乗る男から電話があり、約1億2000万円を騙し取られる事件が発生したという報道も。

 男はLINEでのやりとりに誘導し「あなたは詐欺事件の重要参考人だ。預金が悪用されたため紙幣番号を調べる必要がある」などと告げ、宅配便で現金を送るよう指示。女性は約3か月にわたり計11回送金した。

「LINEに誘導され、そこで偽の逮捕状や警察手帳の画像を見せられ、銀行口座の預金を移すように言われるケースが多いです。警察が通信アプリで事情聴取を行うことはありませんし、話を信じる前に相手の身元を確認のうえ、いったん電話を切りましょう。そして誰かに相談したり、自分で近隣の警察署の番号を調べてかけ直してください」(多田さん)

本物の警察署と同じ番号が表示

 最近では警察が実際に使う、末尾が0110という電話番号に偽装してかけてきたり、本物の警視庁や新宿警察署の代表電話と同じ番号が表示されることもあるそう。

電話番号すら偽装できるので、相手の番号を簡単に信じないようにしましょう。また、自動録音機能のついた詐欺対策用電話を設置したり、NTTが提供する、非通知でかけてきた相手に番号を通知してかけ直すよう自動音声で伝える“ナンバー・リクエスト”を利用するのも手段のひとつです」(多田さん)

 全国どこからでも、電話をかけた地域を管轄する警察本部などの相談窓口につながる、警察相談専用電話♯9110へ相談するのもよい。

「権威のある機関や人からの電話というだけで、話を信じてしまうのが人間の心理です。しかも最近は劇場型といって警察役や役所役、銀行役など複数の犯人が役割分担して演技して信じ込ませるのでやっかいです。警察をかたる場合は、守秘義務があるので周囲に口外するなと騙してきますが、もし本当に警察事案なら警察相談専用電話に話してもいいはずです。話を鵜呑みにせず、お金の話は必ず誰かに相談しましょう」(多田さん)

 親近感や恋愛感情を抱かせ、金銭を奪うロマンス詐欺。ひとり住まいのシニアの心の隙間につけ入る犯罪だが、近年では“投資詐欺”タイプが増加中。

ブルネイ在住の韓国籍を名乗る男から…

 2025年1月、沖縄県在住・50代女性がインスタグラムを通じて知り合った人物から、510万円を騙し取られる事件が発生したという報道があった。ブルネイ在住の韓国籍の男と名乗る人物から「暗号資産で儲けている。銀行よりも安全に管理できる」と偽の投資話を持ちかけられた。女性は取引サイトで4回にわたり510万円分の暗号資産を購入し、男が指定したアドレスに送金。だが、金を引き出そうとしたところ手数料として490万円を要求されたため、不審に思い警察に相談したことで事件が発覚した。

「SNS型投資詐欺ともいいますね。身元不明の容姿端麗な異性が、旅行や趣味などの何げない会話からアプローチしてきます。しかも生成AIを使っていて日本語が流暢。犯人が外国人だとしても日本人を装うこともあります」(多田さん)

 恋愛感情をほのめかし、偽の投資サイトへ誘導していく。

「最初は怪しいと思って少額投資にとどめると、それが増えて本当に自分の口座に戻ってくる。最近の詐欺グループは“損して得取れ”の方針なので、実際に一度は儲けさせて信用を得てから、高額を騙し取る手口です。その過程で仕事や資産などの個人情報はすべて筒抜け。詐欺グループが情報を共有しているので、ますます騙されてしまう。対策のためには、まずはこの手口を知ることが重要です」(多田さん)

「遺産を贈与したい」から手数料を…

 恩情につけ込みお金を騙し取る遺産贈与詐欺の例もある。

「実際に私もこの手の詐欺と思われる連絡をSNSで受けたことがあります。オーストラリア・キャンベラ在住で、パートナーと死別したという人でした。典型的な手口だったので、すぐに詐欺だと確信しました。話に付き合うと、がんと診断され余命幾ばくもないので遺産を贈与したい。そのために手数料を振り込んでほしいという話の展開になりました」(多田さん)

「俳優のブラッド・ピットになりすました詐欺師にフランス人女性が1億円以上騙し取られた事件が、2025年1月に話題になりました。日本でも同時期に、イーロン・マスクをかたる人物から詐欺被害に遭った女性もいるんです」(多田さん)

1年半にわたり騙され続けた母親

 海外メディアによると、50代のフランス人女性は、インスタグラムでブラッド・ピットの母親と名乗る人物と知り合い、交流が始まった。AI生成された病床の画像からピットが腎臓がんだと信じ込み、アンジェリーナ・ジョリーとの離婚手続きで銀行口座が凍結されたという彼に代わり、治療費などをトルコの口座に送金したという。女性の娘は何度も詐欺だと説得を試みたが聞き入れられず、母親は1年半にわたり騙され続けた。

 また、2025年1月には兵庫県在住の60代女性が、TikTokで知り合ったイーロン・マスクを名乗る人物から、約50万円を騙し取られるといった報道も。

頭ごなしに詐欺だと言うと、本人はその自覚がないので怒り出し、人の話を二度と聞かなくなってしまうんですね。まずは客観的な情報をしっかり聞き取り、自発的に詐欺だと気づかせるよう粘り強く話すしかない。複数の人からたくさんの情報を与えて詐欺だとわからせるのも対応策です」(多田さん)

 日本の有名人の名をかたる同様の詐欺や、著名人の画像や名前を無断使用したSNSの偽広告による投資詐欺も発生しており、実は身近で深刻な問題だという。

副業や小遣い稼ぎから闇バイトへ

「最近では中高年でもスマホを使い、SNSを利用する機会が増え“副業案内”や“お小遣い稼ぎ”という募集文言にひかれて闇バイトに加担する事案が増えています。募集要項に年齢制限がなく簡単に稼げる仕事と出ていれば、年金だけでは生活が困窮するという人などはつい応募してしまうことがあるのかもしれません」(多田さん)

 特に多いのは、他人になりすまして口座を開設したり、自分の口座を譲渡して報酬をもらう案件だという。

口座の譲渡はれっきとした犯罪にあたりますが、その知識がない方は多いですし、節税対策で口座を貸してほしいなどと騙されていることも。携帯電話を新規契約させられ、それが知らぬ間に詐欺の道具に使われる可能性もあるので、十分注意しましょう」(多田さん)

 怪しい情報源や申し出には警戒すること。多田さんは急かされたり、未知の情報に飛びつくことは避けて注意深く行動してほしい、と言う。

多田文明さん/1965年生まれ・宮城県出身。多種多様な詐欺・悪質商法の手口に精通するジャーナリスト。キャッチセールス等の勧誘現場に潜入取材した活動をまとめた著書『ついていったら、こうなった』が2007年にテレビ番組化。現在はその知識を生かし、メディア出演や講演を行う。

取材・文/植田沙羅

 

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