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2024年12月に関東1号店をオープンし、全国展開に向け拡大している北九州発のうどんチェーン「資さんうどん」。創業は1976年で、現在九州地方を中心に79店舗を展開する。椎茸をだしに用いた北九州風のうどんをはじめ、そばやカツ丼、ぼた餅といった幅広いメニューと、24時間営業の利便性が特徴だ。
【画像】定番は「肉ごぼ天うどん」 人気メニューの「資さんしあわせセット」、持ち帰り可能なぼた餅・いなり寿司など(計8枚)
強力な後ろ盾となっているのが、2024年10月に240億円で同社を買収したすかいらーくホールディングス(以下:すかいらーくHD)。主要なファミレスチェーンが伸び悩む中、すかいらーくHDはローカルチェーンの全国展開に、「新たな成長軸」を見出しているのではないか――そう話すのは、小売・流通アナリストの中井彰人氏だ。ファミレス業界の変遷から見た、資さんうどんの強みとは何か。
●すかいらーく“業態転換”の歴史
そもそもすかいらーくHDの社名は、1970年に創業したファミレス「すかいらーく」に由来する。「かつては『東のすかいらーく、西のロイヤルホスト』と呼ばれていました」と中井氏は振り返る。
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ファミレス業態は、幅広い世代を取り込むため、和洋中の多彩なメニューを一つの店舗で提供する点を強みに拡大してきた。しかし、2000年代に入ると状況が大きく変化する。
「不景気により、従来型の外食チェーンが集客に苦戦するようになった。代わりに特定のジャンルに特化し、コスパを高めた勢力が台頭しました。メニューをイタリアンに絞って『安さ』を打ち出したサイゼリヤや、回転すしのような専門店が広がったことで、お客が分散していったのです。最近では少子化の影響もあると思いますが……」(中井氏)
こうした潮流を受けて、すかいらーくHDもまた、看板ブランド「すかいらーく」を次々と他業態に転換していった。郊外の店舗は低価格志向の「ガスト」に、都市部の店舗はやや高価格帯の「ジョナサン」に……といった具合だ。2009年には、埼玉県川口市で営業していた、最後の「すかいらーく」店舗が閉店。
さらに和食系の「藍屋」や中華の「バーミヤン」など、専門性を持たせた業態も登場させた。「業態転換の歴史をたどることで生き残ってきたのが、すかいらーくHDです」と中井氏は指摘する。
●「一周回った」新しさ?
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こうした中で、すかいらーくHDはなぜ、資さんうどんに注目したのか。中井氏は資さんうどんの独自性を「うどんファミレス」という言葉で表現する。
「資さんうどんは、丸亀製麺と全く同じ土俵にいるわけではない。資さんうどんは昔ながらのうどん・そば店のように、和食の総合店的な要素があるのです」
丸亀製麺やはなまるうどんが「うどん特化型」なのに対し、資さんうどんは丼物や天ぷらなどもそろえ、より幅広いメニューを展開している。一見すると「専門化」という時代の流れに逆行しているようにも思えるが、中井氏は資さんうどんの場合、これが強みになっていると指摘する。
「基本的にうどんしかない丸亀製麺は、ランチに比べるとディナーでの利用が少ない。一方、資さんうどんはご飯ものもあるため、ファミリーのディナー需要も取り込めるほか、おでんや天ぷらで飲む人もいる。昔はこうした役割をうどん・そばの個人店が担っていましたが、特に郊外ではそうしたお店が減ってしまいました」
「年配の世代には懐かしく、若い世代には一周回って新しい」――個人経営の店舗が減少する中、そうしたスタイルのうどん屋を、ロードサイドで体験できること。こうした価値提案が資さんうどんの強みだと中井氏は見ている。
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●すかいらーくの転換点に?
資さんうどんの買収はすかいらーくHDにとって、2014年の再上場後、初のM&Aとなる。これは単なる業態追加にとどまらず、戦略的な転換点ともいえそうだ。同社は2027年12月期までに、3〜5件のM&A実施を目標に掲げている。
「ゼンショーHDが“買いまくる”企業であるのに対して、すかいらーくHDはこれまで、M&Aを積極的にはやってこなかった。ガストもジョナサンもバーミヤンも、自社で立ち上げた業態です。しかし、それにも限界が来ているということだと思います。今後もこうした、ローカルチェーンの発掘が進む可能性があります」(中井氏)
資さんうどんはすかいらーくHDにとって、既存不採算店舗の受け皿にもなりうる。2025年に新規出店する21店のうち、12店はガストをはじめとした既存ブランドからの転換だ。「こうした転換は、投資コストを抑えながら新たな客層を取り込む有効な戦略です。客層を見極めた上で出店できるという点も強みになります」と中井氏は指摘する。
資さんうどんにとっても、すかいらーくHDの規模は大きなメリットといえる。「大企業グループに入ったことで、原材料の調達コストは下がるはずです。関東にはこれまでなかったチェーン業態ですから、大きな市場の余地もあります。お互いにとって非常にやりやすい環境だと思いますね」(中井氏)
資さんうどんは現在、関東に4店舗を構えている。すかいらーくHDの金谷実社長は2月の決算発表会で「2025年は足固めの年だが、2026年以降は年間40〜50店舗の出店ができるのでは」と期待を込めた。両社の動向に、引き続き注目が集まりそうだ。
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