※写真はイメージです GWは家族や恋人と旅行に出かけて、まだ見ぬ景色と出合いたい。だが、旅行にハプニングはつきものだ。まさか、あんな景色を見ることになろうとは……。
◆「Googleマップ」が導いた先には…
村田征作さん(仮名)は、車の運転中に利用していた「Googleマップ」のおかげで、GWの家族旅行に強烈なスパイスを加えることになってしまったという。
当時名古屋に住んでいた村田さんは、関西方面へ家族旅行に出かけた。最初の目的地は滋賀県。湖畔の宿に一泊し、翌日に「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」まで行く予定だった。
「関西方面はよく行っていたのですが、ふだんは滋賀県を通り過ぎてしまうので。子どもたちに湖畔の“壮観な景色”を見せてあげたいと思ったんです。ただ、一泊するだけなので、宿は見知らぬ場所にあった地域最安値を選びました」
カーナビのついていない車で、スマートフォンのGoogleマップを頼りに宿を目指す。琵琶湖のそばにある公園などを通り、観光気分でドライブしていた。
だが、Googleマップの「悪い癖」が出る。
「Googleマップは細い道でもお構いなしに案内しますよね。地元の人が軽自動車で抜け道として使うような信号もないけどすごく細い道です」
その細い道を嫌な予感がしながらも突き進んでいく。どこかの駐車場を突っ切り、別荘地帯に。アスファルトの舗装もなくなり、湖の水際スレスレを通ることもあったという。
「これ本当に大丈夫なのかなって、妻も子どもたちも不安になっていました」
大丈夫に決まっているだろう、村田さんはそう自分にも言い聞かせていた。
◆砂浜で半裸の男たちがBBQ
そんななかで、突如として綺麗な砂浜が現れた。そこを進んでいくと……。
「先のほうに人混みがあるのに気がつきました。煙のようなものがあがっており、パーティーでも開かれているのかと思いましたね」
しかし、目にしたのは予想外の光景だった。
「アロハシャツや半裸の男たちが大勢いて、みんな体格がよく、和彫りの“刺青”が見えていました。どうやら彼らがBBQしているところに突入してしまったようです」
◆ワイルドすぎる! “刺青”の男たちがズラリ
「見渡すと、刺青の男たちは数十人、いや、別荘のテラスにいる人たちも含めると百人規模でした。思わず妻が“うわあ”と顔をしかめます。ですが、逃げ場というか、別の道などありません。急いでウインドウを閉めて、クーラーをMAXにして、“このまま行くしかない”と決意しました」
こんなワイルドなサファリパーク、絶対に嫌だ……。
「わずか50センチぐらいの距離には、刺青の入った男たちがいて、酒を飲みながらBBQを楽しんでいるわけですが、私は目を合わせないようにしながら『ちょっと、すみません』と小声で言いながらアクセルを慎重に踏みました。もしもぶつかってしまったら……その足は、震えていたかもしれません」
お互いに気まずさが漂うなかで、ゆっくりと進む。
「永遠に続く時間のように感じましたが、麦わら帽子にサングラスをかけた人を最後に会場を通り抜けることができました」
ゆるやかに曲がっていくと、舗装された道路に戻った。村田さん夫婦も安堵の声を上げた。
「こわかったね……」
村田さん一家にとって「いままでの人生で一番たくさんの刺青を見た日」となった。
まさか別の意味で壮観な景色を見ることになるなんて……。ちなみに、子どもたちはまだちいさかったこともあり、この出来事を覚えていないそうだ。
◆彼女の誕生日に喜ばせるはずが…
田中健さん(仮名)は、GWに彼女との長距離の旅行を計画していた。目的地は北陸の温泉街。数ヶ月前からリサーチを重ね、観光スポットやグルメ、宿の予約まで完璧なプランを作っていたという。
「ここまで綿密な予定を立てたのは、GWが彼女の誕生日だったからです。これが成功すれば、きっと結婚も視野に入るだろうって」
そう考えて田中さんは内心ドキドキしながら旅行当日を迎えた。現地に到着すると、空は快晴。青空の下で彼女は終始笑顔を見せている。
「金箔ソフトを食べながら『こんなの初めて』と言い、温泉街を歩くときには『風情があるねぇ』なんて言いながら、僕の腕をぎゅっと掴んできました」
夜には贅沢な旅館で会席料理を楽しんだ。
計画は見事に進み、彼女は何度も「すごい!」と感動してくれて、田中さんの気分も上々だったという。
しかし、この完璧に思えた旅行に、致命的な抜け落ちがあった。
◆いちばん大事なことほど忘れがち
帰宅する夜、田中さんがFacebookを開くと、共通の友人の投稿が目に飛び込んできた。その瞬間、血の気が引いた。
<〇〇ちゃん誕生日おめでとう〜!>
「えっ、今日? いや、昨日か! 完全にやらかしたって思いました」
そう、田中さんは旅行中の移動などの計画をこなすことに精一杯で、肝心の彼女の誕生日のお祝いとプレゼントを忘れていたのだ。
「最悪だ……」
恐る恐る彼女の方を見ると、彼女はスマホを見つめたまま無言だった。その横顔は笑っても怒ってもいなかった。ただ、何かを諦めたような雰囲気だったという。
「ごめん。完全に、忘れてた……」
田中さんが謝ると、彼女は小さく笑った。
「うん、知ってた。でも、せっかくの旅行中に言わせたくなかっただけ」
その場に誕生日プレゼントは持ってきていない。翌日あらためて渡し、田中さんは何度も謝ったそうだ。
「旅行中のどんな絶景よりも、その夜の彼女の冷たい表情が心に焼きついています」
<取材・文/藤山ムツキ>
【藤山ムツキ】
編集者・ライター・旅行作家。コンビニへの買い出しから、芸能人のゴーストライターまで、メディアまわりの超“何でも屋”です。著書に『海外アングラ旅行』『実録!いかがわしい経験をしまくってみました』『10ドルの夜景』など。執筆協力に『旅の賢人たちがつくった海外旅行最強ナビ』シリーズほか多数。X(旧Twitter):@gold_gogogo