小売の未来は“接客なし”が当たり前に? 裏側で働くロボットたち

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2025年05月03日 10:31  ITmedia ビジネスオンライン

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実例から見えてくる未来の小売は?

 現代の小売業界は、テクノロジーの進化とともに大きな変革を遂げています。そのなかでロボットのさらなる活用にも関係する3つのトレンドが「BOPIS」「ダークストア」「マイクロフィルメントセンター」です。これらの新しい小売形態で、ロボット技術はどのように活用されていくのでしょうか。


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 BOPIS(Buy Online Pick-up In Store)とは、その名の通り、消費者がオンラインで商品を購入し、実店舗で商品を受け取るサービスのことです。


 みなさんのなかにもスターバックスやマクドナルドでモバイルオーダーというかたちで体験したことがある方も多いのではないでしょうか。このトレンドは、消費者にとっての利便性と店舗側の運営効率を同時に向上させるものです。


 BOPISは米国を中心に家具小売のイケアなどから始まり、最近では小売のウォルマートなど食品へと普及し、消費者にとっても送料が掛からないというメリットもあり、2024年には米国の小売店舗の90%がBOPISを活用しているとも言われています。それに伴い、店舗内で効率的に商品をピックアップするためのロボットシステムが導入されています。


 ダークストアは、一般の顧客が直接訪れることができない、オンライン注文専用の倉庫型店舗のことを指します。この店舗はオンライン販売の効率化を目的とし、在庫管理と配送の迅速化を実現しています。もちろん、ここでもロボット技術が欠かせません。


 ダークストアは米国などの車社会との相性がよいと言われていますが、より小さな地域で運用されるのが、マイクロフルフィルメントセンター(MFC)です。MFCは、都市部やショッピングモール内に設置される「小規模」な倉庫のことで、オンライン注文の迅速な処理を目的としています。これにより、消費者への配送時間が大幅に短縮され、即日配送や翌日配送が可能になります。


 どのタイプのトレンドでも、移動ロボットやピッキングロボットは欠かすことができません。注文に応じて、ロボットが倉庫内を自動で移動し、商品の棚から必要なアイテムを取り出し、梱包し、配送や受け渡しの準備をおこないます。これにより、従業員が手作業で商品を探す時間が大幅に削減され、受け取りの待ち時間が短縮されます。


 新しい小売トレンドにロボットを用いた取り組みはすでに続々と始まっています。小売におけるこのような取り組みは、米国などの諸外国のほうが先行している印象です。ザラは2018年にBOPISを実現するための自動倉庫を導入し、アマゾンはダークストアを、ウォルマートはMFCをロボットも使いながら構築しているのです。


 もちろん、日本でもトライは始まっています。KDDIは2022年に無人店舗の運営にロボットを導入し、実験を進めています。この無人店舗では、デリバリーアプリから注文が入ると、ロボットが商品のピッキングから袋詰めまでを完全自動化で実施しています。バックヤードを含めて50平米という小型のスペースで、デリバリーとテークアウトの両方に対応できるようになっています。


 このようなテクノロジーの発展により、省人化・コスト削減だけではなく、最短10分で商品を受け取れるなどユーザー側にもメリットの大きいサービスも増えてきています。


 それでは、この先どうなっていくのでしょうか。


 当然、ロボットがピックする商品を決めるためには、注文や在庫などに関するシステムとの連動が必要になります。さらに未来を見据えると、注文されたものだけではなく、過去の履歴などにもとづいて注文されそうなものを先読みし、事前に発送の準備をすることもできるようになるかもしれません。また、注文状況によって棚の管理場所なども自動的に調整されるようになってくるでしょう。


 ここまで来ると、多くのシステムやロボット同士が連携し、店舗自体が情報化されたひとつのロボットシステムのように振る舞う「まるごとロボット店舗」というような存在になります。高度な予測と配送の最適化により、注文する前に、欲しいものが手元にある、そんなシーンが当たり前になるかもしれません。


※この記事は『ロボットビジネス』(安藤健/クロスメディア・パブリッシング)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。



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