「出社前に自宅で涙が止まらなくなり…」退職代行で2社辞めた“リピーター”33歳、意外な場面で感じた“辞めグセの片鱗”

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2025年05月03日 16:21  日刊SPA!

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「後ろめたさからか、母親以外には誰にも退職代行を利用したことは言えていません」と森本さん(※画像はイメージです)
 いまや若者から中高年まで使う退職代行。退職妨害や精神疾患など使わざるを得ない状況がある一方で、その気軽さにハマりリピーターと化す人も続出している。使い方によっては“中毒性”がある退職代行の側面に迫った!
◆ブラック企業を2社退職…仕事も恋も「やめられる」

「退職代行は2度ほど利用しましたが、どちらも本当に限界だったので、辞められてよかったと思っています」

 そう話すのは、金融関係で働く森本秀俊さん(仮名・33歳)。森本さんが退職代行を利用して辞めた2社はともに、残業や休日出勤が当たり前のブラックな環境だった。

「1社目は4年勤めて29歳で退職した食品卸の会社。酷い労働環境に加えて、会社の指示で自分の免許では運転できない中型車を毎日運転させられていました。交通違反時に無免許扱いで免許停止になった際もフォローはなく、会社への信頼はゼロに。それから数日後、出社前に自宅で涙が止まらなくなり、退職代行会社に連絡して退職しました」

 すぐ再就職した製造業の2社目も1年で退職。このとき、心境の変化を感じたという。

「一度退職代行を使って簡単に辞められたことで、退職へのハードルが下がった気がします。2社目では過労からか、通院が必要なレベルで体調を崩しました。業務を軽くしてもらうように上司に相談しても取り合ってもらえない。本当ならもう少し頑張れたのかもしれませんが、そこですぐに見切りをつけて、退職代行会社に連絡して退職しました」

◆リピーターが感じる2つのデメリット

 自身を守るため、やむを得ず使った退職代行だが、デメリットも感じているという。

「突然出社しなくなるのは良心が痛みます。特に1社目では、お世話になった先輩や同僚に挨拶をせずに辞めてしまい、数年たった今でも彼らと話す夢を見るほど後悔しています。良くも悪くも縁が切れてしまうのは考えものです」

 今いる会社では退職代行を使う予定はないという森本さん。しかし、意外な場面で辞めグセの片鱗を感じたそうだ。

「マッチングアプリで出会った女性2人と『ダメならすぐに切ればいいや』と、同時に付き合った時期がありました。退職代行を2回利用したことで、なんでも簡単にやめられるという心境になっていたのかもしれません……」

 今後、辞めグセが顔を出しても、森本さんは抗えるのか。

◆急増中!! 中高年の退職代行トラブル

 森本さんに限らず、職場で築き上げた人間関係を一瞬でゼロにしてしまうことも多い退職代行。会社への責任が比較的少なく、勤続年数が短い若者だけが利用していると捉えがちだが、さにあらず。40代以上の中高年にも利用者が拡大していることで、若者とは別の問題が発生しているという。

 化粧品メーカーで人事を担当する栗原康介さん(仮名・43歳)は、そんな中高年の退職代行トラブルに巻き込まれた一人だ。

「昨年の夏、採用したばかりの店舗の店長(40代女性)が2日目に無断欠勤。その日に退職代行業者から電話で、『彼女は即日の退職を希望されています』と急に伝えられたんです。実績もあるベテランが『仕事が覚えきれないから』と退職代行で飛ぶなんて信じられません」

 結果、栗原さんは現場からのクレーム処理と対応に追われた。

「社宅の解約違約金や代理人事の手配、新たな店長の採用費用など100万円以上の損害があった。辞める側は電話一本ですが、余計な仕事とストレスを増やされていい迷惑ですよ」

◆中間管理職の退職代行は損害賠償請求のリスクあり

 中高年の退職代行トラブルはまだまだある。’18年から退職代行も請け負う弁護士・小澤亜季子氏に、40代以上の依頼者のトラブル事例を挙げてもらった。

「退職時、労働者は雇用契約上の義務として引き継ぎ業務を行う必要があって、裁判例もあります。『中高年で平社員だから』と引き継ぎもせずに退職代行を利用したことで、相手企業の顧問弁護士から損害賠償を請求され、退職はできましたが数十万円の和解金を支払ったこともある。また管理職になると、退職の連絡後に経費の不正利用や顧客情報の流出を疑われて、退職までに時間がかかることも少なくないですね」

 また、退職に伴う手続きでトラブルに発展することもある。

「意外に多いのは、社宅に関わるトラブル。退職の申し出は2週間前でも可能ですが、賃貸借契約の解約は1か月前に予告するのが基本。なので、退去までの家賃の支払いなどで揉めることになります。社歴が長い場合だと、会社から貸与品の返却を求められても紛失していて交渉が難航するケースもありますね」

 小澤氏は「退職代行業者では、それなりの対応しかできないと理解すべきです」と忠告する。

「最近では価格の安さや弁護士監修などを謳う代行業者も増えています。ただし、退職金や社会保険に関する書類などの交渉事項が多い中高年の利用はリスクが高いと思いますね。それなら弁護士に退職代行の依頼をし、引き継ぎについても相談したほうがトラブル回避に繫がります」

 気軽に退職するのはいい。ただ人任せの退職には、思わぬ落とし穴があることを自覚したい。

【弁護士・小澤亜季子氏】
GK総合法律事務所代表。退職代行で40代以上の依頼者は約3割。著書に『退職代行「辞める」を許さない職場の真実』(SB新書)

取材・文/週刊SPA!編集部

―[[退職代行リピーター]の実態]―

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  • 合う環境は実際に働いてみないとわからないからね ただ、いつか必ず堪えなきゃいけない時があるからその辺りがうまくいけば今後もおk
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