レアル・ソシエダMFミケル・オヤルサバル レアル・ソシエダに所属するスペイン代表MFミケル・オヤルサバルがサッカーキングの単独インタビューに応じ、自身のキャリアやクラブ哲学について語った。中でも熱弁を振るったのが“教育の重要性”について。「自分の望むことが思い通りにいかなかった時に備えておく必要がある」と自身の経験も踏まえてたっぷりと話してくれた。
取材・文=小澤一郎
取材協力=レアル・ソシエダ
――今シーズンここまでの戦いを振り返っていかがでしょうか?
オヤルサバル 今シーズンはこれまでよりも少し難しく、浮き沈みがあったと思います。シーズンを通して様々な瞬間がありました。ただ、まだ試合が残っていますし、良い形で今シーズンを終えたいと思っています。サポーターの皆さんにとって良いシーズンだったと思ってもらえるように最後まで戦います。
――偽9番のポジションでプレーすることも多いと思います。
オヤルサバル 昨シーズンから偽9番の位置でプレーしていますが、今はもう慣れましたね。毎試合、監督が求めることに応えること。選手として最善を尽くすことに変わりはありません。
――現代サッカーの過密日程問題についてはどう思っていますか?
オヤルサバル 試合数は明らかに多いです。それは誰もが分かっていることだと思います。インターナショナルマッチウィークもありますし、大会フォーマットが新しくなったりもしました。選手たちにとっては多くの要求が伴います。多くの人が話している通りですが、何らかの決定が下されることを願っています。
――昨年のEURO2024では、スペイン代表の優勝を現地で見ることができました。「優勝をもたらしてくれて、ありがとう!」と伝えたいです。あの決勝ゴールは人生を変えるような出来事でしたか?
オヤルサバル いえ、特には変わりませんね。変わらずミケル・オヤルサバルという人間です。もちろん、いつも以上の反響はありました。ただ、内面に関しては全く変わっていませんし、これからもそうありたいと思っています。
――ここからはキャリアについて聞かせてください。なぜサッカーを始めたのでしょうか?
オヤルサバル 幼少期はいくつかのスポーツをやっていました。それを全て両立させようとしていたのですが、一つに決めないといけない時期が来たので、一番好きで惹かれたサッカーを選びました。
――他にはどんなスポーツをやっていたのですか?
オヤルサバル 水泳やハンドボールを習っていましたが、育成組織で本格的にサッカーを始める年齢になったタイミングで決断しました。そういった経緯です。
――ギプスコア県はマルチスポーツが最も盛んな地域だと思います。もしサッカー以外のプロスポーツ選手になるなら、どの競技を選びますか?
オヤルサバル どうでしょう、それは分からないですね。幼少期から様々なスポーツに触れてきましたし、得意な競技は多かったです。ここでは幼少期からたくさんのスポーツに触れることができます。スポーツをすること、競争すること、楽しむことが昔から好きでした。
――マルチスポーツシステムは将来的に有利になると思いますか? レアル・ソシエダは13歳まで本格的なチームを作ることができませんが、このシステムによってたくさんのスポーツに触れて成長していきます。
オヤルサバル 子どもたちがスポーツをすること、体を動かすことはとても良いことです。マルチスポーツの経験がパフォーマンスを向上させ、将来的に何かを成し遂げることができるのであれば、それは良いことだと思います。
――続いてレアル・ソシエダというクラブの育成哲学について、どう捉えていますか?
オヤルサバル ここではたくさんの人たちが、たくさんの子どもたちと接しています。学ぶことへの希望を持ってレアル・ソシエダにやってくる子どもたちが、向上心を持てるように。将来は僕たちが今いる場所に立つ可能性を持ってもらうために日々過ごしています。サッカーの競技レベルだけではなく、教育のレベルでも準備を怠りません。できるだけ多くの子どもたちに、プロになる選択肢を持ってもらいたいと思っています。
――このクラブの最も気に入っている点は何ですか?
オヤルサバル 全てですね。サッカーだけではなく、人間性も培われます。小さい頃からこのクラブで過ごせば、そういった部分も確立されます。教育レベルは非常に高いです。誰もがプロサッカー選手になれる、あるいは1部リーグに到達できる幸運を持っているわけではありません。教育は誰にとっても役立ちますし、成長を促してくれます。
――レアル・ソシエダは選手だけを育成するのではなく、指導者や教育者も育成するクラブと言っても良いですよね。
オヤルサバル 日々学び、進歩し、向上しようとしています。最も目立つのはトップチームの選手たちかもしれませんが、指導者やクラブ内部の人たちも非常によく働いています。
――デウスト大学を卒業しているということは、優秀な学生だったのだと思います。どういった経緯で進学したのですか?
オヤルサバル トップチームに加わる直前に自分で進学することを決めました。大学に友達もいて、一緒に学びました。友人たちは私を助けてくれました。大学で学んだことは将来役に立つと思います。
――デウスト大学では何を勉強していたのですか?
オヤルサバル 経営管理学です。
――今、その資格は役に立っていますか?
オヤルサバル 将来何かしたいことがあれば、きっと役に立つと思います。
――サッカーと学業をどうやって両立させていたのですか?
オヤルサバル 何かを成し遂げたい。それをやりたいと思った時、問題は両立させるためにどう準備をするかです。大学で勉強したいと強く願っていましたし、大学を卒業したいと思っていました。
――レアル・ソシエダのキャプテンとして、後輩たちにはしっかり勉強をするように勧めますか?
オヤルサバル もちろんです。この先どんなことが起こるのか分かりません。たとえ最初は上手くいったとしても、その先はどうなるのか。プロサッカー選手になれるかどうかは分からないのです。人生は続いていきますし、いろいろなことがあると思います。だからこそ、選択肢を持っておくべきです。自分の望むことが思い通りにいかなかった時に備えておく必要があると思います。
――リーグ後半戦のバスク・ダービーもあります。日本ではバスク州を一括りにしてしまうのですが、ギプスコア人とビスカヤ人の違いはありますか?
オヤルサバル そうですね、性格的には少し違うかもしれません。ギプスコアの人たちは少し控えめだと思います。ビスカヤの人たちはもう少しオープンで、人間関係を築くのにさほど時間はかからないのではないかと思います。そういった部分が特徴だと思います。違いはありますが、性格的にはかなり似ていると思います。
――バスク・ダービーでは特別な感情を抱きますか?
オヤルサバル バスク・ダービーはいつも特別な試合です。育成年代からずっと対戦してきたチームと戦うのは、美しい瞬間です。若い頃から知っている選手もたくさんいるので、とても美しく特別な一戦です。
――トップチームデビューから10年近くになります。ここまでのキャリアは想像できていましたか?
オヤルサバル 物事が少しずつ進んで行くに連れて、少しずつ慣れていくものです。最初はそれほど多くのことを考えてはいなかったので、自分の出番が来た時に上手くやろうとだけ思っていました。より多くの出場機会、プレータイムを得ようと思い、ここまでやってきました。ですが、自分にここまでのことが起こるとは想像もしていませんでした。
――では、なぜ長年トップレベルで活躍することができているのだと思いますか?
オヤルサバル 人生にはいろいろなことを経験します。努力し続け、挑戦するのであれば、少しずつでも必ず物事は好転するのです。サッカー界は実力伯仲の世界です。努力なしで成功することは難しいでしょう。
――普段チームトレーニング後はどう過ごしているのですか?
オヤルサバル 生まれたばかりの男の子がいるので、できるだけ世話をして一緒に過ごそうと思っています。家にいない時は世話することができないですし、奥さんや子どもたちと一緒に過ごすことができないので、午後は出来る限り休み、幸福を感じようとしています。
――今、サン・セバスティアンには多くの日本人観光客がいると思います。
オヤルサバル いつも観光客がいますが、今はタケ(久保建英)がいるという理由もあり、いつも以上に日本からたくさんの人たちがサン・セバスティアンに来ているのだと思います。
――では、サン・セバスチャン市のアンバサダーとして、お勧めの場所やレストランはありますか?
オヤルサバル ありきたりかもしれませんが、まずはビーチエリア(コンチャ湾沿い)を散歩してもらい、良い天気の時を楽しむこと。素晴らしい景色だと思います。きっと良い時間を過ごすことができるでしょう。そして、ピンチョスをつまみながら少し食事をしたり、旧市街エリアを散策したりすること。そこも美しいと想いますし、とても居心地の良い場所です。
――サン・セバスティアン以外の都市に住みたいと思ったことはありますか?
オヤルサバル プロサッカー選手なので、その時の状況次第ではあるのですが、いつもここにいることができて幸せを感じています。ずっと住んできたサン・セバスティアンに今も住むことができるのは、何よりの幸運です。人生において、これ以上何を望めるだろうかと思っています。ここでとても幸せです。
――では、最後に日本のファン・サポーターへメッセージをお願いします。
オヤルサバル 日本にたくさんのファンがいることは知っています。現地まで来てくれるファンもいますし、たくさん応援していただけていることを感じています。タケは日本でとても人気があると思います。タケがここにいる限り、きっと多くの人が来てくれるのだと思います。皆さんの応援には感謝していますし、いつでも歓迎したいと思っています。
【インタビュー動画】ミケル・オヤルサバル 独占インタビュー