
厚生労働省が発表した「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、厚生年金保険(第1号)受給権者の平均年金月額は「14万6429円」。今回は、この最新データをもとに、平均受給額や「20万円以上もらっている人」の割合、さらに年金額に不安を感じたときの対策についてご紹介します。
男女別・年金受給額の平均は?
2023年度(令和5年度)の「厚生年金(基礎年金含む)」の平均月額は以下のとおりです。・全体の平均年金月額:14万6429円
・男性の平均年金月額:16万6606円
・女性の平均年金月額:10万7200円
この数字を見ると、男女間での年金格差がはっきりと見てとれます。女性の平均年金額は男性の約65%程度と、依然として差が大きいのが実情です。これは、パート勤務や専業主婦など厚生年金に加入する期間が短いケースが多いことが影響していると考えられます。
月20万円以上の年金を受け取っている厚生年金保険(第1号)の人数
では、実際に「月20万円以上」の年金を受け取っている人はどれくらいいるのでしょうか? 同資料で見てみましょう。
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・厚生年金受給者数:1060万1923人
・うち20万円以上の人:254万5272人(約24%)
【女性】
・厚生年金受給者数:545万2806人
・うち20万円以上の人:71万885人(約13%)
この結果から、「20万円以上もらっている人」は、男性では約4人に1人。一方で女性は約150人に1人という割合です。
この差の背景には、長くフルタイムで働いてきたかどうか、厚生年金の加入年数や給与水準などが大きく関係しています。
特に女性は、育児や介護などでキャリアが途切れやすく、パート・アルバイトなどの非正規雇用も多いことから、年金受給額が伸びにくかったと言えます。
「年金が少ないかも」と感じた人へ。今からできる対策は?
老後の年金額に不安を感じたときは、早めの対策が大切です。将来の安心のために、今日からできる備えを4つご紹介します。年金見込み額をチェックしておく
まずは、自分が将来どのくらい年金を受け取れるのかを把握しましょう。「ねんきんネット」などで確認できます。現状を知ることで、どの程度の備えが必要なのかが見えてきます。
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働く期間を延ばして受給額アップを目指す
厚生年金は70歳まで加入可能です。働き続けることで加入期間が延び、受け取れる年金額も増えていきます。また、働いて収入を得ながら、年金の受け取りを遅らせる「繰り下げ受給」を選べば、1カ月遅らせるごとに年金額が0.7%ずつ増額されます。
さらに、国民年金保険料の未納期間がある方は、60〜65歳の間に「国民年金に任意加入」することで、受給額を増やすことも可能です。ただし厚生年金に加入している人は国民年金に任意加入できません。
iDeCo(イデコ)で「じぶん年金」をつくる
iDeCo(イデコ)は、自分で積み立てて運用する私的年金制度。掛金や運用益が非課税で、節税しながら老後資金を準備できます。原則60歳以降に受け取れる仕組みで、長期での資産形成に向いています。2024年12月からは、会社員や公務員がiDeCoで積み立てできる金額の上限が引き上げられたり、会社への書類提出が不要になったりするなど利用しやすくなりました。生活費を見直し、固定費を削減
支出を抑える工夫も、老後の暮らしをラクにします。家計のバランスを整えることも立派な「年金対策」と言えるでしょう。
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まとめ
「年金月額20万円以上」の人は、男性では約4人に1人いる一方で、女性ではごくわずかにとどまっています。年金だけで安心して暮らすには、やはり不安を感じる人も多いかもしれません。
「将来の受け取り額が少ないかも……」と思ったら、早めの備えが大切です。まずは自分の年金見込み額をチェックし、できることから「じぶん年金づくり」を始めてみましょう。小さな一歩の積み重ねが、ゆとりある老後につながります。
文:舟本 美子(ファイナンシャルプランナー)
会計事務所、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として勤務後、FPとして独立。人と比較しない自分に合ったお金との付き合い方を発信。3匹の保護猫と暮らす。All About おひとりさまのお金・ペットのお金ガイド。
(文:舟本 美子(ファイナンシャルプランナー))