学生時代の同級生と思い出話をして盛り上がるのが、「あの先生いたよね〜!」という話題。生徒から人気だった先生もいれば、逆もまた然り。今回はそんな絶妙に“イヤ”なタイプの先生である吉田圭助が主人公の、『構成物』という作品を追っていきたい。
本作が収録されているのは、『特別じゃない日』シリーズの第2弾である『特別じゃない日 猫とご近所さん』(実業之日本社)だ。『特別じゃない日』は、日常のなかの温かさや人の優しさに溢れていることで人気の作品なのだが、そのなかに突如降臨したのが、アクの強い嫌味教師・吉田圭助である。
そして、この吉田という教師。知れば知るほど“尊い”のだ。なぜ吉田が生まれたのか?今回はその背景について、作者の稲空穂さん(@ina_nanana)に聞いた。
参考:【漫画】『特別じゃない日 猫とご近所さん』収録の「構成物」を読む
◼︎吉田を形成する、正反対の“姉”の存在
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ーー『構成物』をXに投稿した際の反響は、いかがでしたか?
稲空穂(以下、稲):普段『特別じゃない日』でいただく感想の傾向とは、ちょっと違いました。誰に感情移入するかによって、かなり感想が変わってくる作品なのかなと。吉田に感情移入するのであれば、「姉が理不尽だ」「子守りをさせられて可哀想」「教師って報われないよね……」という感想になり、姪のさゆりに感受移入するのであれば「冷たくされて可哀想」など……。今回私は、自分の起源を思い出すきっかけになればと思って『構成物』を描いたのですが、「いまの職業になぜ就いたのかを思い出しました」という声もいただけました。
ーー吉田というキャラクターについてはどう考えていますか?
稲:かなり漫画っぽいキャラクターだなと思います。少年漫画ならアリだけど、『特別じゃない日』においてはちょっと心配していますね(笑)。キャラクター造形も当初イメージしていたストレートな髪型をちょっとうねらせてみたり、目元にクマがあったり、かなり漫画的だと思っています。
ーー性格も、見た目を裏切らないアクの強さがありますよね(笑)。
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稲:最初に吉田が登場したのは、同書に収録している『ラブレター』という話なのですが、それだけだとあまりに嫌な先生すぎるので(笑)。別の顔があったら面白いよね、というので描いたのが『構成物』なんです。担当の編集者さんにも、「ハリーポッターのスネイプ先生みたいに、愛されるキャラクターになっていくと思いますよ」と言われました。
ーー『構成物』では、姉の性格との正反対さも際立っているように感じます。
稲:吉田が強烈だから、お姉さんをもっと強烈なキャラクターにしたら面白いんじゃないかと思って。吉田はキッチリしすぎで、お姉さんはいい加減すぎるんです。最初は、お姉さんももっと普通の性格でスラっとした見た目だったんですけど、吉田とバランスを取るためにどんどんキャラクターが濃くなっていきました。
ーーバランスを取るための“正反対さ”だったんですね。
稲:そうですね。吉田は性格的に、腹に据えていることはありつつも、本音は言わないんじゃないかなと思ってて。それは恥ずかしいから(笑)。本当はお姉さんのことがすごく好きなんだというのが出せたらいいんですけど……。
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ーー吉田……。尊いじゃないですか。
稲:(笑)。吉田が教師を目指すきっかけになったお姉さんの「教えるの上手だよ」というセリフも、ネームの時点ではお母さんのセリフにしていたんです。でもそこを姉に変えることで、これだけ文句を言ってるけど、実は姉に影響されて可愛いところがあったり、愛されているんだという感じが出せたらと思いました。
ーー吉田圭助含め、『特別じゃない日』の今後について教えてください。
稲:『特別じゃない日』はオムニバス形式の作品になりますので、その話では脇役だったキャラクターが、次の話では主人公になったりと、広がりのある構成となっています。登場人物も徐々に増えているので、ぜひコミックスでそれぞれのキャラクターの視点を楽しんでいただけると嬉しいです!
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(C)稲空穂/実業之日本社
(文・取材=はるまきもえ)
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