対応スマホと有線LANアダプターを使えば「イーサネットテザリング」が使用できる 有線LANでしか使えない機器を、Wi-FiやLTEなどの無線接続しか使えない場所でネットにつなげる……そんな必要に迫られたことはないだろうか。これを実現するのがスマートフォン(スマホ)の「イーサネットテザリング」機能だ。LTE回線やWi-Fiでスマホが確保したインターネット環境を、有線LAN経由でほかの機器に提供するものだ。スイッチングハブを使えば複数の機器でスマホのインターネット環境を共有することもできる。「テザリング」とは、スマホを使ってWi-FiやUSB接続を介してインターネット環境を共有する仕組み。Wi-Fiでのテザリングは日常的に使っている人も多いだろう。イーサネットテザリングは、その有線LAN接続版。自分自身、ちょっとした必要に迫られたため、ちゃんと使えるのか試してみた。
その他の画像はこちら 最近、動画の配信や収録の仕事をすることが増えた。配信や撮影で使用する機材は、ネットワーク接続が必要なものが多く、有線LANでしか接続できない機器も多い。ところが、現場によってはWi-Fiは使えても有線LANが使えない場合がある。時にはWi-Fiすら使えないことも。これを何とかしたい、というのが「ちょっとした必要」だ。例えば、動画配信用に、ビデオスイッチャーのBlackmagic Design「ATEM Mini Pro ISO」を使っている。こいつは、YouTubeなどに直接ライブ配信できるスグレモノだが、Wi-Fi機能はなく有線LANのみ。カメラも有線LAN接続が必要。遠隔操作が可能な、いわゆる「PTZカメラ」を使っているためだ。カメラを操作するためのコントローラーをLAN経由で接続して使用する。さらに、個々の機器の細かな設定は、有線LANに接続したノートPCで行う。私の場合、動画の配信・撮影には有線LAN環境が必須なのだ。
有線LANネットワークには、配信にも使うスイッチャー、PTZカメラ、PTZカメラ用のコントローラー、ノートPCを接続することになる。互いにLAN接続するには、ルーターも必要になるわけだが、これをスマホで肩代わりし、さらにインターネット環境の共有もできないか、というわけだ。必要なものはAndroid 11以降の対応スマホと有線LANアダプター。今回は、スマホはGoogleの「Pixel 6a」、有線LANアダプターはBENFEIの「USB-C イーサネットギガビットアダプター」を使った。もちろん複数機器をつなげるスイッチングハブも使用した。結果は見事成功。インターネット接続はしっかり共有でき、スマホから自動的にIPアドレスが振り出された。機器相互の接続も問題なし。スマホ側のインターネット環境は、Wi-Fi、LTEを問わず、いずれでも利用できた。
スマホの具体的な設定の方法は簡単だ。Pixel 6aの場合は「設定>ネットワークとインターネット>アクセスポイントとテザリング>」で設定する。スマホのUSB-C端子に何もつないでいない状態ではイーサネット テザリングはグレーアウトしてON/OFFできない。USB-C端子に有線LANアダプタをつなぎ、何らかの機器を有線LANケーブルで接続すると、ON/OFFできるようになる。あとは、スマホ側の有線LANアダプターとスイッチングハブをLANケーブルでつなぎ、各機器をLANケーブルでハブにつなぐだけだ。インターネット環境がLTE回線のものであっても、回線品質にもよるが、何とかYouTubeのライブ配信に成功した。
今回、スマホのイーサネットテザリングを行うにあたって、最も迷ったのが、スマホにつなげる有線LANアダプターの選択だ。「小型で邪魔にならないこと」「スマホに給電するためのUSB-Cジャックをアダプタ側に備えていること」「安価であること」の3つを条件としていろいろと探してみた。インターネット上の情報では、GOPPAの「Gigabit有線LANアダプター GP-CR45H」がほぼ定番として捉えられているようだ。多くの成功事例の報告があった。安全パイならこれだろう。ただ本体がやや大きく、もう少しコンパクトなものがほしかった。そこで購入したのが前述したBENFEIの「USB-C イーサネットギガビットアダプター」。小型でスマート。価格もGOPPA製より1000円ほど安かった。USB-Cジャック経由でスマホの充電にも対応する。
ところがこの製品、販売サイトにも取扱説明書にも公式サイトにもAndroidをサポートするとの記載はなかった。なんとなく使えるのではないかと思い、ある種のギャンブルで購入してみたわけだ。実際は、つなげるだけで無事使用できた。さらにスマホ側でテザリングをOFFにすると、逆の動作も可能。つまり有線LANでスマホをインターネットに接続する用途にも使用できた。また、取扱説明書にはWindowsで使用する際にはドライバーが必要との記述があった。ものは試しとWindows11マシンに使ってみたところ、この場合もつなげるだけ。ドライバー不要で使用できた。
有線LAN環境がないところで有線LANを使いたい場面では、ぜひ、スマホのイーサネットテザリングを試してみてほしい。なお、今回のようなネット接続では、ちょっとしたバージョンの違いや相性の問題でうまくつながらないことも多々ある。実際に使用する場合は、事前に綿密なテストを行ってほしい。(BCN・道越一郎)