<アーティスティックスイミング(AS):日本選手権>◇第2日◇4日◇東京アクアティクスセンター◇チームフリールーティン(FR)ほか
ジョイフルACがチームFRで、初優勝した。男子トップスイマーの佐藤陽太郎(20)が率い、高さのある力強い演技で237・1563点をマーク。2位のアクラブ調布を僅差でかわし、クラブとして初の日本タイトルを獲得するとともに、佐藤は男子として初めて金メダルを手にした。ソロFRは石見菊乃(15=京都踏水会)が前日のTRと合わせて2冠を獲得した。
歴史が動いた! チームFRで、男子の佐藤陽太郎(20)がチームリーダーを務めるジョイフルACが初優勝。井村クの7連覇を阻んで、同クラブとして初の日本タイトルを獲得した。何よりも男子が加わったチームとしては初のチーム種目制覇。シンクロナイズドスイミング時代から69回目を数えるASの日本選手権で、初めて男子選手の首に金メダルがかけられた。
得点が出た瞬間、プールサイドの佐藤たちは派手に喜びを爆発させた。2位アクラブ調布とは、わずかに0・1274点差。「優勝は狙っていたけれど、現実味がなくて。驚きの方が大きかった」。佐藤は正直な気持ちを吐露した。
最年少の吉田梨央は中学1年生、フレッシュなチームを佐藤が率いた。「初めての試合で緊張して震えている子もいたので、大丈夫だよと声をかけた」と振り返った。23年福岡世界選手権出場などの豊富な経験をチームに還元。「自分が代表でしてもらったことを、若い子にしようと思った」と笑顔で話した。
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女子リーダーの高沢は、佐藤の存在の大きさを口にする。「世界での経験もあるし、ルーティン作りの段階から、すごくいいアイデアが出てくる。すごく頼りになる、素晴らしいチームリーダーです」。180センチの長身は、小柄な選手が多いチームの中で頭1つ以上抜けているが、それ以上に存在は大きかった。
「女子の競技」として成長してきたAS。国際オリンピック委員会(IOC)など世界的な「男女平等」の考え方で、少しずつ男子にも門戸が開かれた。17年には佐藤が日本選手権のチーム種目に男子として初出場。世界選手権にも男子の出場が認められ、パリ五輪でもチーム競技に男子参加が可能になった。
とはいえ、男子にとってハードルは変わらずに高かった。日本選手権にも男子ソロ、混合デュエットの種目が採用されたが、出場選手は少なく、公開競技止まり。男子をくわえたチームはあっても、リフトなどの土台として地味な役割。言い方は悪いが「おまけ」感は拭えなかった。
佐藤自身も姉友香と組んだデュエットで23年世界選手権優勝、パリ五輪出場も期待されたが、最終的に日本代表からは外れた。「いろいろありましたけれど、まずはクラブに専念しようと。だから、この優勝はうれしいですね」と晴れやかな表情で話した。
佐藤は今年初め、ASナショナルトライアルで優勝した。日本代表こそいなかったが、技で出来栄えだけを争う大会で女子のトップ選手を抑えて最高得点をマーク。「クイーン・オブ・エレメンツ」の称号を手にした。大会側は男子の優勝を想定していなかったためが、佐藤は「キングなんですけど」と苦笑い。それほど、技術は優れていた。
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佐藤は試合後、チームの代表としてインタビューにも答えた。男子の「物珍しさ」からではなく、チームの中心として堂々と受け答えをした。そんなチームリーダの姿を女子選手たちが頼もしげに見詰める。シンクロからASへ、長い歴史でも異例の光景だった。
圧倒的な数の女子選手の中で肩身の狭い思いをしてきた男子選手。「いつかは我々も」の思いを胸にトイレで着替えて大会に臨んだ選手たち。そんな男子ASの歴史が確実に動いた。
初めて男子の胸に輝いた日本選手権の金メダル。歴史的な快挙を達成した佐藤は、パリで逃した五輪出場をロサンゼルス大会で視野に入れながらも「今は日本選手権に集中します。その後のことは、大会後に考えます」と最終日の混合デュエットFR、アクロバティックルーティンでのメダル獲得を目指した。
◆チームFR (1)ジョイフルAC(佐藤、大浦、高沢、草間、西口、榊、宮崎、吉田)237・1563(2)アクラブ調布(石井、田中、北西、音川、山鼻、斎藤、橋田、大野)237・0289(3)京都踏水会(坂本、石見、森、福田、田居、戸川、朝原、片岡)236・1189
◆ソロFR (1)石見菊乃(京都踏水会)197・4588(2)坂本菜々美(京都踏水会)180・6301(3)西口璃莉(ジョイフルAC)180・3950
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◆男子ソロFR(公開競技) (1)横山正(YTASC)127・4626
◆ミックスデュエットTR(公開競技) (1)藤原凱成・西垣友里加(YTASC)161・1442(2)安藤聖華・古内廉万(ザ・クラブピア88)141・5499
〈主催〉日本水泳連盟〈主管〉東京都水泳協会〈後援〉日刊スポーツホールディングスほか〈特別協賛〉ヤクルト本社〈協力〉鈴乃屋ほか
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