SIDAS「ReCoLA」。9460円。写真は公式HPよりこんにちは、シューフィッター佐藤靖青(旧・こまつ)です。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。
サンダルは歩きにくくて疲れやすいので苦手と思っている方は多いでしょう。しかし、その認識は改める必要があります。現代のテクノロジーを結集してつくった「リカバリーサンダル」をご存じでしょうか。
本来はアスリートが試合や練習の合間に履いて疲労回復を図るという、その名のとおりリカバリーが目的でつくられたサンダルですが、その効果が一般にも知られるようになり、日常でも履く人が増えています。
リカバリーサンダルはクッションの良さが売りだと誤解されているのですが、実際には第二の心臓とも言われる足の裏の血管を刺激してポンプのように動かすことで血流を促進し、疲労を軽減させる効果があります。履き心地がソフトなだけのサンダルではないのです。やや高価ですが、それだけ効果があると言っていいでしょう。
筆者も仕事で長距離を歩くことが多いので、室内用に1足、外履き用に2足を履き分けていますが、今では季節を問わず手放せない心強い存在です。今回はシューフィッターの目線から、各メーカーのおすすめモデルを5つ厳選して紹介します。
◆沈み込むクッションで血流を促すウーフォス「OOriginal」8580円
リカバリーサンダルの元祖と言われているのがアメリカのウーフォス。夏には見かけない日はありません。直接足に触れるインソール部分はクセのない凹凸があり、誰にも合いやすい設計です。足が沈み込むことで血流を促すので、立ち仕事で足の裏が痛いという方にはおすすめ。ソールが2重構造になっていて、どのメーカーよりもクッションを重視しています。トング(鼻緒)タイプは足の幅を選ばないので、広くても狭くても問題ありません。甲の高さも関係なく、ミニマルなデザインが受けて、近年の花火大会では雪駄の代わりに履く方が男女を問わずよく見かけるようになりました。まったく違和感はありません。
◆洗練デザイン・満員電車もOK。HOKA「ORAミュール」1万3200円
リカバリーサンダルは実用性が第一で、どこか野暮ったいデザインも多いのですが、厚底のHOKAはデザインと機能を見事に両立させました。似通ったデザインが多い中、唯一無二の都会的なフォルムです。無条件にかっこいいと言っていいでしょう。筆者も愛用しているのですが、ミッドソールで衝撃を吸収し、足が当たるインソールは沈み込みすぎることはありません。疲労回復が目的である一方、意外と長い距離も歩くことができます。「ORAミュール」はつま先まで樹脂パーツで覆われており、満員電車で踏まれても平気です。つま先をぶつけても血豆ができないので、都会の夏には重宝するでしょう。
◆走れる日本発のリカバリーメーカー・リグフットウェア「ムグー」1万2320円
サンダルでもとにかく疲れ知らずでたくさん歩きたい方には、こちらがお勧め。リグは2019年に日本で誕生した若いメーカーですが、代表作がこの「ムグー」。アウトドアシーンを考慮して設計され、3層にわかれたソール、甲とカカト周りを完璧に決めるアジャスト機能、丈夫で靴ずれを起こさせない鼻緒という「歩けてなんぼ」の徹底した攻めのつくりが特徴で、走ることもできます。なんと東京マラソンを走り切った方もいらっしゃいます。いわば現代版のワラジです。設計段階で特に腰痛・ヘルニア対策に徹しているので、腰痛持ちにも特におすすめです。今後注目のブランドだと言っていいでしょう。
◆インソールメーカーの満を持した自信作。SIDAS「ReCoLA」9460円
フランスのインソールメーカー、シダス社が今年から日本人向けに販売するようになったのがReCoLAです。筆者もプライベートで愛用していますが、まず驚くほど軽いです。デザインよりも機能を特化させた「いぶし銀」的存在です。いわゆる「つっかけ」式のデザインで、ぱっと履けます。この手のデザインは履きやすい半面、甲の高さが選べないので、合わない方もいるのですが、ReCoLaは不思議と履く人を選びません。インソールもカカト周りが深くえぐられていて、リカバリーだけではなく重心の位置を戻すことで姿勢改善も期待できるのがうれしいところです。このあたりがインソールメーカーならではの強みだと思います。事務作業で立ちっぱなし仕事にも向いています。
◆爆発的人気、内履き専用のSIDAS「ウチッパ」1万2100円
ラストは同じくフランス・シダス社からの「内履き専用」リカバリーサンダルの「ウチッパ」です。筆者も2年愛用中。履いたら最後、快適すぎて脱げません。シダスはフランスのメーカーですが、こちらは脱ぎ履きの多い日本人専用モデルです。リモートワークで一日中座っているような方でも、室内でほんの2〜3分歩いただけで血流がガツンと巡るのがわかります。とはいえ「青竹踏み」のような痛みはまったくありません。数年前にシダスジャパンが1万オーバーのスリッパを販売したときには、正直誰が買うのかと思われましたが、ふたを開けてみると入荷即完売。これが過去3回も起きていて、現在もソールドアウト中です。7月前を目標に再生産中ですが、おそらくすぐに完売するでしょう。ホームページでの予約制となる可能性が高いため、気になる方はメーカーに問合せてみてください。
リカバリーサンダルは極端に安いものがないのがネックですが、投資するだけの価値は確実にあります。実は数年前にも一度ブームが起きましたが、格安の粗悪品が多かったのも事実です。筆者が見る限り現在はどこのメーカーも品質が格段に向上しています。亜熱帯の日本ではサンダルなしではもはや生活できません。疲れ知らずのリカバリーサンダルで夏を乗り切りましょう。
【シューフィッター佐藤靖青】
イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『足と靴のスペシャリスト』。靴のブログを毎日書いてます『シューフィッター佐藤靖青(旧・こまつ)@毎日靴ブログ』