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けがと偽って業務災害補償の保険金をだまし取ったとして、岐阜市の元保険代理店社員、吉田尚史容疑者(46)ら2人が7日、大阪府警に詐欺などの容疑で逮捕された。保険会社に偽造した診断書を提出し、約250万円を詐取した疑いがあるという。
保険金の詐取を巡っては、不正を働こうとする側と、それを防ごうと目を光らせる保険会社との間で「攻防」が続く。保険各社は最新テクノロジーを駆使して対策に取り組むが、いつの時代もなぜ保険金詐欺は繰り返されるのか。
保険会社各社にとって気になるアンケート結果がある。保険各社が加盟する日本損害保険協会は2012年、消費者約2400人を対象に保険金の不正請求などモラルに関する意識調査を実施した。
「車をわざと隠して盗難保険金を請求する」などの重大な不正請求は8割以上が「絶対に許されない行為」だと回答していた。
ただ、「痛くもないのに慰謝料目的の通院」「交通事故で以前についた傷の修理代も保険請求」といった、実際に起きたことに便乗して過大請求する行為を許されないとしたのは4割程度。日常生活での「ガムの吐き捨て」「公園の花の抜き取り」の5割以上よりも低かった。
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協会内に設立された保険金不正請求対策室の三村雅彦さんは「保険金の不正請求が重い犯罪だと思われていない」と嘆く。
調査結果を受けて、協会はハードとソフト両面でのの対策を本格化させた。
13年に不正請求の通報を受け付けるホットラインを設置。年間1000件近くの通報があるといい、情報は加入する30以上の保険会社・共済で共有されている。
さらに5年前からはビッグデータを活用した取り組みも始めた。過去に不正請求があった事例の傾向などを人工知能(AI)に学習させ、加入会社から送られてくる保険請求のデータと照合。不正の疑いが検知されると、保険会社に警告が行くシステムになっている。
協会は「保険金詐欺は『重罪』」とインパクトのあるビジュアルを採用した一般向けポスターを作製するなど、啓発活動にも力を入れる。
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警察庁によると、例えば交通事故に絡む保険金詐欺事件は23年までの5年間で625件が確認され、被害額は7億円を超える。検挙数は964人に上った。
協会によると、10年代に不正請求が相次ぎ深刻な社会問題となった韓国では、その後に保険料が値上がりしたといい、三村さんは「不正請求対策は保険制度の維持にもつながる」と強調する。【川地隆史】
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