
夜職(キャバクラやホストクラブ、その他の大人のお店)で活躍する現役キャストがネットで目立ち始めて以来、職業に対する偏見が薄まったように感じます。筆者も元セクシー女優なので、大きなカテゴリーで分ければ「夜職の住人」。ひと昔前なら肩書きを名乗るだけでバッシングの嵐だったでしょうから、世間一般の寛容さには大きく驚いているところです。
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そのため、家族や友人に堂々と仕事をカミングアウトする人が増えているものの、秘密にしている人が大多数なのが現実。でも嘘をつき続けるのは心が痛みますし、場合によっては「隠し切れなくなったケース」も少なくはありません。
勇気を持って真実を伝えた時、周囲はどんな反応をするのか。経験者に話を聞いてみました。
まずはOLから夜職(キャバクラ)へ転身した人の話です。彼女は夜職に転身したことを親に話せず、2年が経過したくらいで限界を感じたそうです。その理由は、身内が土日休みだと思い込んでいるばかりに、諸々の誘いが週末に集中したことでした。
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金曜日と土曜日はキャストにとって稼ぎ時なのにも関わらず、「姪っ子の面倒を見てくれないか」「買い出しを手伝ってほしい」と頼まれて困惑。常に理由をつけて断るのが、非常に大変だったそうです。嘘を貫き通すのも難しくなり、遂に彼女はカミングアウトしました。夜職に縁もかけらもないご両親は驚き、その時は激しく怒られてしまったのです。
それからしばらくは連絡を取らなくなるくらい溝が深まりましたが、約半年後には和解。仕事を頑張り、堅実に生きる娘を見て「頑張りなさいよ」とお母様が言ったそうです。それ以来、ご家族がキャバクラ勤務を応援してくれるようになりました。
水商売はすぐに受け入れられるものではないと当事者は分かっていつつも、「否定されない」というのは非常に嬉しいところ。身内の応援があると後ろめたさを感じずに働けるため、カミングアウトが結果的に良い方向へと転んだケースです。
続いてはカミングアウトではなく、ひょんなことから親にバレて白状した人のケースです。推し活費用のために“オトナのお店”に勤務していた20代女性は、母親から「これ、あんたでしょ」と宣材写真が送られてきて冷や汗をかいたそうです。どうやらSNSの電話番号連携でお店用アカウントが妹のスマホに表示されたようで、その後すぐに実家から呼び出しを喰らい、「はい、それは私です」としぶしぶ認めざるを得ませんでした。
もともと厳しい家庭ではなく、ガールズバー勤務の時は何も言われなかったのですが、同じ夜職でも“オトナのお店”になると話が変わってくるのは致し方がないことです。カミングアウトの末に母親は激怒、父親は呆れ顔、そして妹は軽蔑の目を向けるなどして、針の筵状態になってしまいました。
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最終的に仕事をやめることで事なきを得ましたが、「まだ家族とはなんとなく気まずいです」と苦い顔で語る彼女。ヒミツがバレてからは必要最低限の連絡しか取らなくなり、修羅場発生から1年以上の時が経っても、帰省できるような雰囲気ではありません。
これは「夜職というのは完全に理解してもらうことが困難な商売である」というのがよく分かるエピソードの1つ。ただ彼女は身バレにより夜職を完全卒業できたため、ポジティブに考えたら“ある意味良かったこと”になる日がやってくるかもしれないですね。
では筆者(元セクシー女優)の場合はどうだったかというと、親にカミングアウトした時「薄々気づいていた」と言われました(笑)。続けて「あなたがあなたらしくいられてるから、それでいいよ」と肯定も否定もされなかったのをよく覚えています。
夜職をどう思うかは、本当に人それぞれです。けれどもカミングアウトする側は基本的に「理解されないこと」を前提にしていた方が、自分自身のダメージが少ないでしょう。それに、偏見が強いからこそ高いお給料をもらっているので、全肯定されるようではいずれ水商売が成り立たなくなるといえます。
秘密をなくしてのびのびと働くか、「墓まで持って行く」と決めて徹底的に隠すかは、その人の環境や意思の問題です。必ずしも周知した方が良いとも限りませんから、打ち明けるかはよく考えてから決めるべきだと私は思いますね。
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◆たかなし亜妖(たかなし・あや)元セクシー女優のシナリオライター・フリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ゲーム会社のシナリオ担当をしながらライターとしての修業を積み、のちに独立。現在は企画系ライターとしてあらゆるメディアで活躍中。