“単純な値上げ”ではないau新料金プラン 「付加価値」を提供しながら「選べる自由」も担保

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2025年05月07日 20:31  ITmedia Mobile

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KDDIはフラグシッププラン「auバリューリンクプラン」を発表。値上げとなる料金改定も発表した

 KDDI(au)は2025年5月7日、衛星通信サービス「au Starlink Direct」や新たな優先制御サービス「au 5G Fast Lane」などを組み込んだ新料金プラン「auバリューリンクプラン」を発表した。


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 同時に既存プランの改定(値上げ)やau Starlink Directの他社キャリアユーザー向け提供開始も発表。強化された通信基本機能と選択可能な付加価値を組み合わせた新戦略を打ち出した。


●au新料金プランで提供する5つの価値


 6月3日から提供する「auバリューリンクプラン」は、データ通信が使い放題であることに加え、5つの「つながる価値」を柱としている。


1. 「au Starlink Direct」─圏外をゼロに


 4月10日に開始した日本初の衛星とスマホの直接通信サービス。山間部や島しょ部など、これまで電波が届かなかったエリアでもテキストメッセージの送受信や位置情報共有が可能となる。


 松田浩路社長は「サービス開始から約1カ月で利用者が急増。ゴールデンウイークには1日のご利用が4万人近くになった」と述べ、日光や伊豆諸島など自然エリアでの利用が広がっていることを紹介。さらに6月4日からはGoogle Pixel 7/8シリーズ(aシリーズ含む)も対応機種に追加されるという。


2. 「au 5G Fast Lane」:混雑時でもより快適に


 7月1日に提供開始する新サービス。5G通信時に混雑するエリアでも優先的に通信できる技術で、一般ユーザーの通信品質を確保しつつ、対象ユーザーに相対的に多くの無線リソースを割り当てる仕組みだ。


 KDDIの竹澤浩常務は「山手線内での社員によるフィールドトライアルでは、従来の通信と比べて1.8倍の通信速度向上を確認。また、現在開催中の大阪・関西万博でも一般通信に比べて2.2倍の高速通信が体感できることを確認している」と説明した。


 なお、この機能は「5G SAのスライシング技術ではなく、現在の基地局の仕組みを活用して実現している」(竹澤氏)という。利用者は5G SA対応の端末および契約が必要となる。


3. 「au海外放題」:海外でも容量を気にせず


 通常、1日あたり1200円(事前予約で一部800円〜1000円)で提供している海外データ使い放題サービスを、追加料金なしで1カ月あたり15日分(最大1万8000円相当)まで利用可能とする(いずれも非課税)。


 「テザリングも可能で、PCやタブレットからもデータ容量を気にせず利用できる」(竹澤氏)とし、データローミングをオンにするだけで簡単に利用できるという手軽さもアピール。「予約で800円の国の場合、22日ほど利用可能」とのこと。


4. 「サブスクぷらすポイント」:AIも含めておトクに


 対象サービスへの加入でPontaポイントがたまる特典で既に提供中だが、今回、全てのサービスの還元率を最大20%に拡大。さらにエンタメだけでなく、AIサービスの「Google One」も新たに対象に加えた。


 特に注目は「Google One AIプレミアム」プラン。国内通信事業者として初めて取り扱いを開始し、Googleの高性能AI「Gemini Advanced」に加え、2TBのクラウドストレージが利用可能。通常月額2900円(税込み、以下同)のところ、キャンペーン価格の1760円+20%ポイント還元で、実質1440円という破格の価格設定となっている。


5. 「Pontaパス」:暮らしをハッピーに


 月額548円で提供中の「Pontaパス」をバリューリンクプラン加入者は無料で利用可能。さらに6月からは特典を大幅に拡充するという。


 「ローソンでの買い物がさらにおトクになる『Pontaパスブースト』や、週末おにぎり50円割引、モバイルバッテリーレンタル30分無料、ライブチケット購入手数料の割引など、毎月合計5000円以上の特典を準備している」(竹澤氏)


 もともと1500万人が利用する人気サービスだが、2024年9月と比較して利用者は1.6倍、アクティブユーザー数は1.4倍、ローソン特典の利用数は2.9倍に増加している。


●金融サービスとの連携プラン「auマネ活バリューリンクプラン」も同時発表


 金融サービス(クレジットカード/スマホ決済/銀行)とセットで利用できる「auマネ活バリューリンクプラン」も同時に発表。毎月合計最大4000ポイントのPontaポイントが還元される。


 基本料金9328円、割引後8228円だが、ポイント還元を含めた実質負担額は4228円となる計算だ。


●「au Starlink Direct」を他社回線ユーザーにも提供開始


 合わせて、au Starlink Directを5月7日から、他社回線ユーザー向けにも提供することも発表。専用SIM/eSIM方式で提供され、月額料金は1650円。UQ mobileユーザーは550円で利用可能だ。さらに6月30日までの加入者には6カ月間無料という特典も用意している。


 松田氏は「もしものときの大事な通信手段となるStarlink Direct。日本中のできるだけ多くのお客さまにお届けしたい」と提供拡大の狙いを説明した。


 質疑応答では「安心安全にかかわるサービスなので、あらかじめ付いていることが大事。行ってから忘れていたでは意味がない」として月額料金方式を選んだ理由も明かした。


 対応機種はGoogle Pixel 9シリーズ、iPhone 14/15/16シリーズなど計18機種。専用SIMと併用することで、通常のSIMと切り替えて使用することができる。また、auの4G LTEエリアで利用可能なデータ通信1GBも付属する。


●既存料金プランは8月1日から値上げ、サービス強化も


 既存プランは8月1日から月額110〜330円の改定(値上げ)を実施する。現行プランのほとんどがこの値上げの対象となる。


 KDDIによれば、この改定は単純な値上げではなく、各プランに新たな機能を追加するサービス強化と一体となっているという。プランによって追加される機能は異なり、最上位プランほど多くの新機能が提供される。


 例えば「使い放題MAX+」「auマネ活プラン+」の場合、月額330円の改定で、au Starlink Direct、au海外放題15日分、au 5G Fast Lane、そしてサブスクぷらすポイント還元率アップ(20%)の全てが追加される。これは新プランauバリューリンクプランとほぼ同等の機能だ。違いは、Pontaパスが含まれるかどうかで、既存プランにはPontaパスが含まれない。


 この場合、料金は改定前7458円から改定後7788円となり、各種割引適用後も4928円から5258円に変更される。


 一方、「使い放題MAX」「auマネ活プラン」などその他の使い放題プランも月額330円の改定となるが、追加される機能はau Starlink Direct、au海外放題15日分、サブスクぷらすポイントの還元率アップまでで、au 5G Fast Laneは含まれない。


 より廉価な「スマホスタートプラン」などでは、月額220円の改定でau Starlink Directのみが追加される構成だ。ルーターやケータイなどのデバイスプランにおいても月額110円〜330円の改定が行われるが、機能追加は限定的となる。


 「既存ユーザーも単に値上がりするのではなく、相応の新機能が使えるようになる」と竹澤氏は説明する。特に4月10日から「当面無料」として提供されていたStarlink Directは、これからは各プランの公式機能として組み込まれる形になる。なお、スマホミニプランについては改定時期を別途案内するとしている。


●UQ mobileも新プラン2種類を発表


 UQ mobileからは「コミコミプランバリュー」と「トクトクプラン2」の2プランを6月3日から提供する。


 コミコミプランバリューは、データ容量35GB(旧プランから+5GB)に10分以内の国内通話かけ放題とPontaパスが付いて月額3828円。


 トクトクプラン2は、データ容量30GB(旧プランから+15GB)で月額2728円。データ使用量が5GB以下の月は自動的に1628円に割り引かれる。


 提供開始に伴い、従来プランの新規受付は終了する。UQ mobileでは2つの料金プランから選ぶ形式となる。


●なぜ今料金改定(値上げ)を行うのか


 松田氏は改定の背景として「世界・社会全体であらゆる価格の見直しが進んでいる」と説明した。特に電力料金の高騰は電波を扱う通信事業者にとって大きな負担増となっている。


 日本の電力料金は燃料価格や為替変動の影響を受け、大手通信会社の電気代は過去数年間で大幅に上昇。通信設備を24時間稼働させるKDDIにとって、基地局や大規模データセンターの電力コストは事業運営の大きな部分を占めている。


 さらに通信インフラ整備や維持に関わる建設費や人件費も高騰傾向にある。松田社長は「建設会社や販売代理店などのパートナー企業へのコスト上昇」に言及。人手不足や資材価格の上昇により、基地局建設・保守のコストが増加している実情を示唆した。


 こうした環境下で「私どもとしては価値をお客さまに提供し、その対価をいただいて、パートナー様に還元し、さらに投資をしていく好循環を実現したい」と強調。単純な値上げではなく、新たな付加価値サービスとセットでの改定としている点が特徴だ。


 「通信そのものが持つ力を信じ、それを価値として作り上げてきた。お客さまにとって価値あるサービスを作り続ける。お届けし続ける。そしてその価値に見合った対価をいただく」という基本姿勢も重ねて説明した。


 竹澤氏はプラン設計における方針として「お客さまのニーズが多様化する中で、基盤する価値を高めながらも、シンプルで自由に選べる形をご提供することが私たちの方針」とし、「通信の基本的な価値」と「選択できる付加価値」を明確に分けたプラン構成となっていると説明した。


 新料金プランの発表により、auでは10種類の料金プランがそろう。新たな付加価値を含めたauバリューリンクプランと、それに金融サービスを連携させたauマネ活バリューリンクプラン、これらからPontaパスを省いたプラン、さらに、NetflixやYouTube Premium、DAZNなどをバンドルしたプランもそろえる。複雑に見える面は否めないが、多様なユーザーをカバーする選択肢がそろったといえる。


●ステークホルダーとの「好循環」を強調


 今回のサービス改定の大きなテーマは「好循環」だ。松田氏のプレゼンテーションでも「お客さまの今とこれからにつながる好循環」というスライドが示され、「成長→提供→共創→還元」というサイクルが説明された。


 「高品質・高信頼ネットワーク、新たなサービス」を提供し、「価値に見合った対価」をいただき、「パートナー様への還元」を行い、「次世代への投資、ネットワーク高度化・AI等」につなげるという好循環モデルを目指すとのことだ。


 松田氏は「現在、こうした価値ができているのは、過去に投資したこと、種をまいたことが今実を結んでいるから。これを継続していかねばならない」と強調。「通信の高度化やAI、エネルギーなどの新技術にもしっかり投資をして、この好循環を実現していきたい」と語った。


 松田社長は最後に「通信そのものの価値をお付けしたい」とまとめ、「今後もお客さまに高い価値をお届けし続けるためにも、未来に向けた好循環を実現する取り組みとして、何とぞご理解を賜りたい」と理解を求めた。



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  • au 5G Fast Laneについてだけれど、使い放題プランで月に200GBを超えて速度制限が掛かっている場合でも快適に使えるの?
    • イイネ!11
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