▲合田直弘が海外競馬の「今」を詳しく解説!(c)netkeiba【合田直弘(海外競馬評論家)=コラム『世界の競馬』】
◆各社の注目は11ヶ月ぶりの復帰戦となるロザリオン
イギリスにおける今季の芝平地シーズンが開幕して1ヶ月と少しが経過したが、古馬にとってシーズン最初のG1となるのが、5月17日にニューベリー競馬場で行われるG1ロッキンジS(芝8F)だ。ここに、4歳世代のトップマイラーたちがこぞって顔を揃える予定で、今季のヨーロッパ・マイル戦線を占う上で、見逃せない一戦となりそうだ。
ブックメーカー各社が3.0〜3.25倍のオッズを掲げて前売り1番人気に推しているのが、リチャード・ハノン厩舎のロザリオン(牡4、父ブルーポイント)だ。
シェイク・オベイド・アル・マクトゥームによる自家生産馬で、G1ジャンロマネ賞(芝2000m)勝ち馬アジュマンプリンセスや、G1クイーンアンS(芝8F)勝ち馬トリプルタイムらの近親にあたるのがロザリオンだ。
2歳6月にデビューし、2歳時は4戦。G1ジャンリュックラガルデール賞(芝1400m)を含む3勝を挙げ、24年の欧州ギニー戦線の中心的存在となることが期待された。
3歳初戦となったのがニューマーケット競馬場のG1英2000ギニー(芝8F)で、ロザリオンは健闘したものの、ノータブルスピーチの2着に惜敗。だが、続くG1愛2000ギニー(芝8F)では、オッズ2倍を切る圧倒的1番人気に応えて優勝し、クラシック制覇を達成。続くロイヤルアスコットのG1セントジェームズパレスS(芝7F213y)も制し、3歳マイル戦線の頂点に立った。
ところがその後、呼吸器疾病を発症して、出走を予定していたグッドウッドのG1サセックスS(芝8F)を回避。じっくりと立て直しが図られた中、2歳時唯一の敗戦となったG2シャンペンS(芝7F)が重馬場で、シーズン後半のレースは道悪になるケースが多いことを考慮し、ロザリオンは結局、セントジェームズパレスS以降は1戦もすることなく、シーズンを終えることになった。
そのロザリオンにとって、11ヶ月振りの復帰戦となるのがG1ロッキンジSなのだ。昨年の3歳最強マイラーが、休み明けでどのようなパフォーマンスを見せるかに、競馬ファンは大きな関心を寄せている。
多くのブックメーカー各社が、ロザリオンに続く2番人気(オッズ3.5〜4.5倍)に推しているのが、ロジャー・ティール厩舎のダンシングジェミナイ(牡4、父キャメロット)だ。
フィッシュダンス社による自家生産馬で、ニューマーケット競馬場のLRプリティポリーS(芝10F)4着馬レディアデレイドの初仔となるのがダンシングジェミナイだ。2歳6月にデビュー。3戦目となったニューベリー競馬場のメイドン(芝7F)、続くドンカスター競馬場のLRフライングスコッツマンS(芝7F6y)を連勝し、同馬もまた、24年のギニー戦線を賑わす1頭として注目を集めることになった。
ダンシングジェミナイの3歳初戦となったのが、ロンシャン競馬場のG1仏2000ギニー(芝1600m)で、同馬はここで2着に健闘。しかしその後は、G1英ダービー(芝12F6y)、G1エクリプスS(芝9F209y)で、いずれも6着に敗退。夏以降はマイル路線に戻り、G1クイーンエリザベス2世S(芝8F)4着などの実績を残したが、結局のところ3歳時は5戦し、未勝利に終わった。
今季の同馬は、開幕当初からマイル路線に専念。初戦となったLRドンカスターマイルS(芝8F)で1年半ぶりの勝利を手にすると、続いて出走したG2サンダウンマイル(ベット365マイル)(芝8F)を制し、待望の重賞初制覇を果たすことになった。
ただし同馬は、G1ロッキンジSではなく、5月25日にロンシャン競馬場で行われるG1イスパーン賞(芝1850m)にまわる可能性も取りざたされている。
続いて、ブックメーカー各社が5.0〜6.0倍のオッズを提示し、3番人気に推すのが、ゴドルフィンによる自家生産馬ノータブルスピーチ(牡4、父ドバウィ)だ。
チャーリー・アップルビー厩舎から3歳1月にデビュー。ケンプトン競馬場のオールウェザー8Fを舞台としたレースを3戦し、いずれも白星で通過。4戦目となったのがG1英二千ギニーで、ノータブルスピーチはロザリオンを2着に退けて優勝し、初芝にしてクラシック制覇という、稀有な快挙を達成した。
G1セントジェームズパレスSは6着に敗れた後、G1サセックスSでは持ち前の鋭い瞬発力を発揮して、2度目のG1制覇。秋は、G1ムーランドロンシャン賞(芝1600m)5着、G1BCマイル(芝8F)3着の成績で、3歳シーズンを終えている。同馬にとって、G1ロッキンジSが今季の初戦となる。
続いて、7.0〜9.0倍のオッズで4番人気に推されているのが、牝馬のタムファナ(牝4、父ソルジャーホロウ)だ。
独国産馬で、BBAG1歳市場にて2万ユーロ(当時のレートで約282万円)という廉価で購買されたのがタムファナだ。
デヴィッド・ムニュイジエ厩舎から2歳9月にデビュー。ケンプトン競馬場のメイドン(AW8F)を制して2戦目で初勝利をあげると、続いて出走したシャンティイ競馬場のG3ミエスク賞(芝1400m)も制し、重賞初制覇を果たして2歳シーズンを終えた。
3歳シーズン前半は、G1英千ギニー(芝8F)4着、G1仏オークス(芝2100m)3着とクラシック戦線で健闘した後、後半はマイル路線に特化。G3アタランタS(芝8F)を制し2度目の重賞制覇後、G1サンチャリオットS(芝8F)を制しG1初制覇。G1クイーンエリザベス2世S(芝8F)でも3着に健闘し、3歳シーズンを終えている。
同馬の今季初戦となったのが、4月25日のG2サンダウンマイル(ベット365マイル)で、ここでダンシングジェミナイの2着となっての参戦となっている。
4歳世代が上位人気を独占しているG1ロッキンジSの行方に、日本の皆様もご注目いただきたい。
(文=合田直弘)