【漫画】一風変わったマラソン大会で町を元気に? 人とのつながりに心温まる『持って行ってよマラソン』

0

2025年05月08日 08:00  リアルサウンド

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

リアルサウンド

『どうせ走るんならついでにコレ、アイツに持って行ってよマラソン』(ヒロ・コトブキ)

 私たちの生活は人と人とのつながりで回っているが、それを意識しないと気づくことは難しい。Xに3月中旬に投稿された『どうせ走るんならついでにコレ、アイツに持って行ってよマラソン』を読むと、人とのつながりを感じられ、ついつい誰かに手を差し伸べたくなる作品だ。


参考:【漫画】『どうせ走るんならついでにコレ、アイツに持って行ってよマラソン』を読む


 矢嶋はある日、となり町に住む人に物品と真心を届けたうえでゴールを目指すという、町民が企画したマラソン大会「どうせ走るんならついでにコレ、アイツに持って行ってよマラソン」に参加する。矢嶋は中年男性の山井からシャケを持って行くことを頼まれ、汗をびっしりかきながらとなり町を目指す――。


 シュールさがありながらも、人の温もりが詰まった本作をどのように描いたのかなど、作者のヒロ・コトブキさん(@kotobuki_hiroju)に話しを聞いた。(望月悠木)


◼︎人の温もりを出すために意識していること


――「どうせならついでにコレ、アイツに持って行ってよ」というよくあるお願いと、マラソンを組み合わせた“催し”がメインの本作ですが、この催しはどのように思いついたのですか?


ヒロ:子どもの時からスポーツ脳、勝負脳というものが自分の中ではあまり発達せず、「負けたから悔しい」「早く走り切ったからすごい」ということを心では理解できませんでした。なので、マラソンを見ていても“せっかく走ったのに走る前と走った後でなにも変わっていない”という事実を「もったいない」と思っていました。その幼少期の思考回路がこの催しに影響したのだと思います。


——突飛なマラソン大会がメインではなく、人間ドラマを軸にしたストーリー展開でしたね。


ヒロ:いつも着地点や通過点を決めずに、一コマずつ自分で描きながら読んでいるような感じでストーリーを作り上げていきます。ルールがあるとしたら「描いている鉛筆を止めないこと」「思考が脈絡や辻褄や整合性を考えてしまうより先にペンを動かすこと」くらいです。ですので、本作も「ギャグ漫画だろう」と思って描いていたら、気付いたらハートウォーミングな物語になっていてビックリ、という感じです。


——登場人物からは“温もり”を感じられましたが、表現するうえで意識したことは?


ヒロ:本作に限りませんが、説明っぽいのは避けてセリフを決めています。仮にそのせいで物語や詳細が多少わかりにくくなっても、その意識を優先します。また、言葉の内容以上に音としてのリズムに重点を置きます。正確に伝わるかよりも正確に震わすかのほうを意識している気がします。


——給水所のスタッフが鮭に水を飲ませたり、純米大吟醸を運ぶことをお願いされた時に矢島がよだれを垂らしたりなど、散りばめられたポケも面白かったです。


ヒロ:「ボケはいつもふんだんに入れたい」と思っているので、後で足すことはあっても、減らすことはほとんどありません。そのせいで感動が薄らいでしまっても特に気にしないです。もともと“泣かせ”に向かうのが好きではないので、物語上「死」や「病気」を通過しなくてはならない時はできるだけアッサリ描くようにしています。


——ちなみにボケの決め方などはあるのですか?


ヒロ:不思議と物語に合ったボケが出てきます。例えば、本来僕の好きな笑いはシュールや不条理なものですが、それが必要のない物語の時には不条理なボケは頭に浮かびません。開けている扉が違うような感じもします。


――今後はどのように創作活動に取り組む予定ですか?


ヒロ:漫画だけで生きていけるようになりたいです。描く時間をもっと増やして、僕の中の全部をしぼってしぼって「もう一滴も出ない」というところまでいってみたいです。そうしたら自分という生き物を使い切れたような気持ちになれそうです。ワクワクします。


(文・取材=望月悠木)



    ランキングゲーム・アニメ

    前日のランキングへ

    ニュース設定