
プラチナNISAとは?
プラチナNISAとは、現在は世代に関係なく一律とされているNISA制度を、高齢者に限って投資対象を広げたり、投資信託などの預け替え(スイッチング)を認めたりする新たな仕組みとされています。「資産運用立国2.0に向けた提言」には、プラチナNISAについて以下のように記載されています。
『高齢者が物価上昇の下でも、投資のメリットを受けつつ、生涯にわたって計画的に運用資産を活用して生活に充てることができるよう、高齢者に限定して対象商品の拡大・スイッチング解禁を図る「プラチナNISA」の導入など、政府は退職世代向けの資産運用サービスの充実に取り組むべきである。』
ここでいう「対象商品の拡大」とは、現行のNISA制度では対象外とされている「毎月分配型」の投資信託を指すと考えられます。
また「スイッチング解禁」とは、現行制度では保有するA投資信託をB投資信託に変更したい場合、一度A投資信託を売却して現金化し、その資金でB投資信託を買い直す必要があるところを、売却を経ずに直接Bへ変更できるようにする仕組みを指します。
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プラチナNISAのメリット・デメリット
プラチナNISAが導入された場合、どのようなメリット・デメリットが考えられるでしょうか。メリット
・毎月分配型は、月々決まった分配金が得られるため、高齢者の生活資金として安定的に活用できる。・スイッチング解禁により、手数料の低い投資信託や魅力的な投資信託へ容易に預け替えができる。
・スイッチングによって、現在のNISAの投資上限枠を損なわずに新たな投資信託への変更が可能になる。
デメリット
・毎月分配型には手数料が高めのものが多い。
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・分配金が再投資されないため、複利効果を得られず投資効率が低下する。
もともとNISA制度は長期的な資産形成を目的とした制度です。スイッチング解禁には一定のメリットがありそうですが、毎月分配型を投資対象に加えることは、制度の趣旨にそぐわないようにも思えます。
こども支援NISAとは?
こども支援NISAについては「資産運用立国2.0に向けた提言」の中で以下のように記載されています。『子育て支援・少子化対策の一環として、若年層の資産形成の推進のため、政府はつみたて投資枠に限り投資可能年齢の下限を撤廃し、早期からの投資を可能とする「こども支援NISA」を導入すべきである。』
また、金融庁の「NISAに関する有識者会議」(第1回)議事要旨には、次のような記載もあります。
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つまり、現在のNISA制度では対象外となっている18歳未満の若年層にも、NISA口座開設を認め、NISAのつみたて投資枠のように早期資産形成を促す制度と捉えられます。
こども支援NISAとジュニアNISAの違い
こども支援NISAと聞いて、「ジュニアNISA」を思い出した方もいるかもしれません。ジュニアNISAは旧NISA制度の一部で、18歳未満のお子さんを対象に、上場株式・上場投資信託(ETF)・投資信託などへの投資を、非課税投資枠年間80万円以内で行える制度でした。一括投資が可能であった一方、非課税期間は5年間、18歳までの引き出し制限などの制約も存在しました。逆に考えるとこれらの制約は中期的な資産形成に寄与していた側面もあります。
現在検討されている「こども支援NISA」についての詳細は不明ですが、ジュニアNISAよりもつみたて投資に特化し、非課税期間を無期限にする方向性ではないかと推察されます。
まとめ
「資産運用立国2.0に向けた提言」全文が公開されたことで、「プラチナNISA」や「こども支援NISA」の概要が明らかになってきました。高齢者向けに投資対象を拡大し、金融商品の預け替えを容易にすることや、若年層への投資機会拡大など、現行NISA制度をより利用しやすくする意図が感じられます。一方で、制度本来の目的である「長期・積立・分散」に必ずしも合致していない側面もあるため、導入には慎重な検討が求められるでしょう。
なお現時点では情報が限られており、憶測に基づく報道も散見されます。本記事でも一部推測に基づく表現としているところがありますので、今後の詳細発表には注目しておいてください。
〈参考〉
・小林史明 衆議院議員サイト
・金融庁 NISAに関する有識者会議
川手 康義プロフィール
CFP・1級FP技能士。製薬会社に勤務し、お金にも詳しいMR(医薬情報担当者)として活躍。日本FP協会に所属しており、協会会員向けの研修会や一般の方へのセミナーの企画・運営活動にもボランティアとしてかかわる。(文:川手 康義(ファイナンシャルプランナー))