ペットを飼っていると生活保護は受けられない? 飼育費は自己負担 高額要する医療費にも念頭に【弁護士が解説】

3

2025年05月09日 06:40  まいどなニュース

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

まいどなニュース

生活保護を受給しながらペットを飼うことは可能なのでしょうか ※画像はイメージです(haozhong leng/EyeEm/stock.adobe.com)

「ペットを飼っていると生活保護を受けられない」「生活保護受給者はペットを飼うことは許されない」

【写真】購入したペットに先天性疾患が…ペットショップやブリーダーに治療費を請求できる?

このような言説をしばしば目にします。たとえ、生活保護を受給中であっても、ペットに癒しを求めたいという気持ちは尊重されるべきでしょう。生活保護受給中にペットを飼うことについて解説します。

法律上の制限は

憲法25条1項は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定めています。

この憲法上の規定に基づいて制定されたのが、生活保護法であり、生活保護制度です。つまり生活保護制度は、国民の「健康で文化的な最低限度の生活」を保証するための制度です(法1条参照)。

ということは、生活保護を受給していても、「健康で文化的な最低限度の生活を営むための資産」については保有が認められる、ということになります。

何が「健康で文化的な最低限度の生活を営むための資産」に当たるかは、その時々の解釈に委ねられますが、ペット飼育がこれだけ普及しており、ペットが家族の一員としての確固たる地位を築いている現代においては、ペットは私達が健康で文化的な最低限度の生活を送る上で不可欠の存在と言えるでしょう。

したがって、ペットは「健康で文化的な最低限度の生活を営むための資産」と言えると考えます。生活保護法にも、「ペットを飼ってはいけない」という定めはありません。

よって、生活保護を受けているからペットが一切飼えない、あるいは生活保護を受給することになったからペットを手放さなければならない、ということはないでしょう。

それに、生活保護を受けたければ長年連れ添ったペットを手放さなければならない、と言われれば、受給自体を躊躇する人も出てくるでしょう。無理に引き離すようなことをすると、苦しんでいる受給者の精神状態をさらに追い詰めることにもなりかねません。いずれも生活保護法の理念に反することといえます。

 現実的な制約

ただし、法律的な制限がないことと現実問題とは別です。生活保護受給中のペット飼育はこちらの問題の方が深刻です。

生活保護費としてペットの飼育費は加算支給されません。食費や飼育に必要なグッズなどペットにかかる費用はすべて、生活保護費の範囲内で負担していかなければなりません。生活保護の対象とならない家族が増えるようなものですので、かなり切り詰めた生活をしなければならなくなるでしょう。

問題となりやすいのが急な出費、特に、ペットが病気をしたりけがをしたりしたときにかかってくる医療費です。人間と違い皆保険制度がないペットの医療費はどうしても高額になります。特にペットが高齢化してくると、1回の診療費が数万円に達することも珍しくありません。

自治体による助成金制度が広がってきているとはいえ、不妊去勢手術にも費用がかかります。費用の問題で不妊去勢手術を施すことができず、その結果ペットがどんどん繁殖していけば、多頭飼育崩壊に至ってしまう可能性もあります。

お金がないからと治療や多頭化を放置していると、動物愛護法44条2項の犯罪に該当してしまう可能性があります。もちろん、世話が見切れなくなったからと捨ててしまうことも同条3項の犯罪に該当します。いずれも1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象となります。実際に逮捕される者も出ています。お金がないことは理由になりません。

ペットのために金銭的に困窮し、生活保護による生活が維持できなくなってしまった場合は、ケースワーカーからペットの飼育について何らかの指導が入ることもあり、指導に従わなかった場合、保護自体が停止されたり廃止される可能性すらあります。

これらは最悪のケースですが、ペットが病気やけがをしても診療を受けさせてあげられないようでは、ペットにも受給者にも不幸な結末になります。

特に最近のペットは長寿です。長寿ということは、予期せぬ出費が嵩む可能性も高くなる、ということでもあります。しっかりと支出を管理し、ペットの健康と安全にも気を配り、ペットと自分の暮らしを守っていく、強い覚悟が必要と言えるでしょう。

◆石井 一旭(いしい・かずあき)弁護士法人SACI・四条烏丸法律事務所パートナー弁護士。近畿一円においてペットに関する法律相談を受け付けている。京都大学法学部卒業・京都大学法科大学院修了。「動物の法と政策研究会」「ペット法学会」会員。

動画・画像が表示されない場合はこちら

このニュースに関するつぶやき

  • 自己責任だな。まあ、外国人に支払っている生活保護を全て禁止にすれば大した話ではない。とっととやれ。
    • イイネ!6
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(2件)

前日のランキングへ

ニュース設定