
今回は、長期加入者として特別支給の老齢厚生年金を65歳まで受給して、65歳以降に再就職した場合の年金についてです。
Q:長期加入者として特別支給の老齢厚生年金を65歳まで受給して、65歳以降に再就職したら年金はどう変わる?
「44年以上厚生年金保険に長期加入した者です。64歳で会社を辞め、特別支給の老齢厚生年金を65歳まで受給して、65歳から再就職したら、もらえる年金が少なくなったり問題がありますか?」(匿名希望)A:65歳以降に再就職しても「在職老齢年金」で調整されなければ、年金額には影響ありません
そもそも「特別支給の老齢厚生年金」とは1年以上厚生年金加入期間がある人が、生年月日により60歳から64歳までに報酬比例(老齢厚生年金)部分のみ受け取りを開始して、65歳になるまで受給できる年金です。相談者のように、44年以上の厚生年金加入期間があり、60代前半の「特別支給の老齢厚生年金」を受ける権利がある人は、「長期特例」として65歳前に退職すると報酬比例(老齢厚生年金)部分の他に定額(老齢基礎年金相当額)部分を受けられ、受け取れる年金額が多くなります。
つまり相談者は、64歳で会社を辞めると「特別支給の老齢厚生年金」の報酬比例(老齢厚生年金)部分と定額(老齢基礎年金相当額)部分の両方を退職した翌月分から受けられます。
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65歳以降の「在職老齢年金」とは、老齢厚生年金額の月額(ここでは老齢厚生年金額の報酬比例部分のみ。老齢基礎年金や加給年金額は含まない)と総報酬月額相当額(毎月の給与と、ボーナスを足した年収に、交通費など手当も含み合計額を出した後、12カ月で割った金額)を合計して、一定の金額以上になると、老齢厚生年金が支給停止または減額されてしまう制度です。
「在職老齢年金」の一定額(基準額)とは、月額51万円(令和7年度)です。
仮に、相談者が65歳で再就職した時、老齢厚生年金額の月額が10万円で、総報酬月額相当額は33万3333円とします。
すると老齢厚生年金(月額)10万円+月収33万3333円で、合計が43万3333円なので、「在職老齢年金」の基準額月額51万円に収まります。つまり年金額が減額されることはありません。
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銀行員、税理士事務所勤務などを経て自営業に。晩婚で結婚・出産・育児した経験から、日々安心して暮らすためのお金の知識の重要性を実感し、メディア等で情報発信を行うほか、年金相談にも随時応じている。
(文:拝野 洋子(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士))