東京地裁=東京都千代田区 業務で知ったTOB(株式公開買い付け)情報を基にインサイダー取引に関与したとして、金融商品取引法違反罪に問われた東京証券取引所元社員の細道慶斗被告(27)と父親の正人被告(58)の判決が9日、東京地裁であった。大川隆男裁判官は「証券市場の公正性、健全性を根底から揺さぶり、投資家の信頼を甚だしく損ねた」として両被告にいずれも懲役1年6月、執行猶予3年(求刑懲役1年6月)、求刑通り罰金100万円を言い渡した。正人被告には求刑通り追徴金約2116万円も言い渡した。
正人被告は判決を不服として即日控訴した。
大川裁判官は、企業の適時開示を担う部署に所属していた細道被告が未公表情報を漏えいしたことについて「立場を悪用したもので、強い非難に値する」と指弾。父親との関係を改善するためだったとする動機は「安易で酌量の余地はない」とした。
インサイダー取引で多額の利益を得た正人被告に対しても「動機は浅ましく利欲的だ」と批判した。
一方、両被告が起訴内容を認め、反省の態度を示していることなどから執行猶予を付けた。判決後、大川裁判官は細道被告に「どんな職業にもそれをやってはおしまいという領域があるはず。自分を見つめ直してほしい」と説諭した。
判決によると、細道被告は昨年1〜3月、TOBに関する未公表情報を正人被告に伝え、正人被告は同年4月までに約1700万円分の株を不正に買い付けた。