『運命の巻戻士』は映画『TENET』級のタイムリープ作品? オカモトショウが今注目するマンガ3選

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2025年05月09日 13:00  リアルサウンド

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リアルサウンド

月刊オカモトショウ

 ロックバンドOKAMOTO’Sのボーカル、そして、ソロアーティストとしても活躍するオカモトショウが、名作マンガや注目作品をご紹介する「月刊オカモトショウ」。


 今回は、「月刊コロコロミック」で連載中のタイムリープマンガ『運命の巻戻士』(木村風太)、『水は海に向かって流れる』で知られる田島列島の『みちかとまり』、そして、連載スタート時から局地的に盛り上がっている『んば!』(熱焼江うお)の3作品を取り上げます!


参考:【漫画】いじめを引き起こす“心の病”を物理的に治すことができたら……Xで復活した「コロコロ」連載作の続編に注目


◼︎子供向けと侮るなかれ SFタイムリープマンガ『運命の巻戻士』


——まずは「月刊コロコロコミック」で連載中の『運命の巻戻士』(木村風太)。ショウさん、コロコロコミックもチェックしてるんですか?


 流石にそこまでチェックできてなかったんですけど、マンガ好きを公言していると、マンガ好きな人と話せるじゃないですか。FM熊本でレギュラー番組(『Honda Cars 熊本東 Presents OKAMOTO'S 90'S TOKYO BOYS』/毎週金曜 19:30-19:55)をやらせてもらってるんですけど、『運命の巻戻士』は熊本のラジオDJの方に教えてもらったんですよ。読んでみたら「『TENET』級のタイムリープを子供向けにやってる!」ってビックリして。グッと引き込まれたし、コロコロまでチェックしている人は少ないと思うので、“これ、みんな見落としてない?”ということで取り上げました。めちゃくちゃ面白いし、「俺も子供のとき、こういうマンガを読みたかった」という羨ましさもあって。小学生のときにこのマンガがあったら、絶対に追いかけてたと思いますね。


——『運命の巻戻士』の主人公は、時空警察特殊機動隊、通称「巻戻士」の少年クロノ。不慮の事故や事件で亡くなった人を、時間を巻き戻す能力を使って救うのが彼の任務ですが、運命を変えて新しい未来を作り出せる確率は100万分の1とも言われている。そこでクロノたちは、不慮の死を遂げた人を救うために何度も何度もタイムリープを繰り返して、いろんな方法を試します。


 つまり「何をどうやってもほとんど死んでしまう」ということですよね。それでもわずかな可能性にかけて、その人が死ななくて済むルートを探っていく。もちろん最後は攻略の仕方が見つかるんですけど、けっこう無茶してるというか、辻褄が合ってないところもあるんですよ(笑)。タイムリープもの的には「無理がない?」という部分があるんだけど、このマンガはブッ飛び方がすごい。そこはいい意味でマンガらしいなと思いますね。


——そんなのアリ?という楽しい驚きがある。


 そうそう。序盤はすごくわかりやすいんだけど、少しずつ話が複雑になってるんですよ。主人公が時間を巻き戻して人を救うところからはじまって、登場人物が増えてきて。クロノの弟子たちが未来からやってきて、「あなたはこういう事件に巻き込まれて死ぬので、それを阻止するために来ました」とか。そのなかで死んでしまう人が出てきたり、クロノを恨んで殺そうとする人が現れたり。大人でも「どういうこと?」ってわからなくなるくらい飛躍してるんだけど、その展開もすごくて。


——今の子供たちは、タイムパラドックスも理解してるんでしょうね。


 そうだと思います。アニメにもたくさんありますよね。古くは押井守監督の『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』もそうだし、藤子不二雄作品にもタイムリープものがあったり、俺らの世代だと『涼宮ハルヒの憂鬱』に衝撃を受けたり、あとは『ひぐらしのなく頃に』『STEINS;GATE』『魔法少女まどか☆マギカ』とか。そういう作品を通してタイムリープ、タイムパラドックスの考え方が広まって、今はもう子供にも余裕で通じてるのかなと。


『運命の巻戻士』の面白さは、何度失敗しても諦めずにチャレンジするところなんですよね。頭デッカチになり過ぎてたり、どうしても失敗を恐れてしまう世の中ですけど、このマンガの主人公は考えるよりもまず行動する。実際に動いてみないと見えてこないことってあるし、「自分もこうありたいな」って(笑)。勇気と元気をもらえます。


——素晴らしい。ちなみにショウさん、子どもの頃「コロコロ」は読んでましたよね?


もちろん読んでました。俺らがコロコロを読み始めたのは、たぶん『絶体絶命でんじぢゃらすじーさん』が始まった頃かな。あとはポケモンのマンガだったり、『学級王ヤマザキ』というギャグマンガだったり。どれも面白かったです。


◼︎ジブリにも通ずる”日本の古くからある雰囲気”を描く『みちかとまり』


——そして2作目は『みちかとまり』(田島列島)。8歳の女の子・まりが竹やぶのなかで“みちか”と出会う。みちかは同級生の目玉をえぐり出して口に入れたり、まりと入れ替わったり、不思議な力を使う……という作品です。


 日本に古くからある伝承的な宗教とか信仰心みたいなものを感じるんですよね。たとえば「河童が人間の尻から尻子玉を抜く」とか「夜に口笛を吹くと蛇がでる」とか「嘘をつくと閻魔様に舌を抜かれる」とか、おばあちゃんが教えてくれるような話ってあるじゃないですか。いまは核家族化でそういう話に触れることが少ないかもしれないけど、それでもお正月には初詣に行くし、ことあるごとにお参りしたり。それも一つの信仰みたいなものだと思うんだけど、そういう感覚をすごく上手く取り入れてるんですよね、『みちかとまり』は。みちかがいきなり同級生の男子の目玉を抉り出したり、ちょっとグロいところもあるんだけど、「そういうことだってあるよね」みたいな。メジャーなところでいうと、スタジオジブリにも似たような感じの作品があると思います。


——土着的なものが現代的なファンタジーと共存しているというか。まりの祖母は「ここの竹やぶはねェ 時々 子供が生えてくんのよ」と当たり前のように言いますからね。神様と人間の境目が曖昧になっているのもそうだし。


「神様って怖いな」というマンガでもあるんですよね。日本における神様って、たぶん自然の営みとかなり近くて。怖がらせようととか危害を加えようとしているわけではないんだけど、「こういうものだよ」という感じでとんでもないことが起きるっていう。それは人間の手には負えないものだし、そういうリアルさが『みちかとまり』にはあるんですよね。かといってホラーではなくて、すごくピュアだし、神社の周りみたいな気の良さがあって。個人的には五十嵐大介さんの『魔女』なんかにも近いものを感じているんですよね。自然と共存する人間の在り方だったり、科学的には証明されてないけど、昔から“ある”とされているものだったり。生きるうえでの本質みたいなものがあるなって。海外の友達に「面白いマンガない?」って聞かれたら、『みちかとまり』をおすすめしたい。「日本ってこういう雰囲気あるよ」って。


◼︎世俗側から神や自然といったものの”ヤバさ”を描く『んば!』


——そして3作目は『んば!』(熱焼江うお)。主人公の百田は、関東近郊の小さな警備会社に勤務している24歳の男性。法律、社内規則、一般常識など正しいとされていることに従いまくっているという、どうにも共感できないキャラクターですが……。


 社畜という言い方が合ってるかわからないですけど、世俗のルールに縛られまくっていて、周りの人に「使えねえ」って言われていて。単純なラベリングでは“コミュ障”ということになるだろうし、「困ってる人がいたら助けなきゃ」「でも何の力にもなれないから警察に任せるしかないです」みたいな感じもあって、「なんだこいつ?」みたいなキャラクターですよね。でも、読んでいくと「誰にでもこういうところ、あるんじゃね?」って思っちゃうんですよね。綾小路きみまろの漫談で爆笑しているんだけど、「これ、自分のことじゃない?」みたいな状態というか(笑)。


——確かに。主人公の百田は社長の命令で牧場の害獣警備に行かされ、そこでとんでもないものを目にしてしまいます。


「家畜を食べる猿がいる」と聞かされていたんだけど、実際にいたのは猿よりも人に近い何かで。それを棒で叩いて追っ払うのが百田の仕事なんだけど、そこにいるのは一体なんだ?ということですよね。山奥の気みたいなものにあてられたのは、言葉は通じないんだけど、明らかに人の形をしていて。自治体や国もその存在を知っていて、叩いてどうにかするしかないという状況なんだけど、そんなことに加担させられるってヤバいですよね。気持ち悪いところもけっこうあるけど、マンガとして面白いし、『みちかとまり』に通じるものを感じました。『みちかとまり』が神や自然に近いところの視点から描いているのに対して、『んば!』は世俗側から描いているのかなと。あと、警備会社の社長もいいんですよ。最初はパワハラ社長だと思ってたんだけど、じつはかっこいい昭和の男でした。


◼︎『運命の巻戻士』『みちかとまり』『んば!』を読みながら聴きたい曲


芸能山城組「AKIRA REMIX」


 アニメ映画「AKIRA」のサントラを久保田麻琴さんがリミックスした音源。コーラス、声が中心なんですけど、いろいろな国や地域の民族音楽の要素がありつつ、現代的なサウンドにリミックスされていて。特に『みちかとまり』には合うと思います。歌詞らしい歌詞はないので、読むときもジャマにならないんじゃないかなと。


◼︎OKAMOTO’S最新情報
 4月6日(日)大阪・なんばHatchのファイナルが大盛況で幕を閉じた、OKAMOTO’S約8年ぶりとなる47都道府県ツアー「OKAMOTO'S 15th Anniversary FORTY SEVEN LIVE TOUR -RETURNS-」。
 
 6月15日(日)にはスペシャルファイナルと題し、2016年以来3度目となる日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブ「OKAMOTO'S 15th Anniversary FORTY SEVEN LIVE TOUR -SPECIAL FINAL- at 日比谷野外大音楽堂」を開催することが決定。立ち見チケットのみ一般発売中!


(文・取材=森朋之)



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