
「トランプ関税」をめぐり世界が大きく揺れています。この国難にどう立ち向かうべきか。長い外務大臣、そして総理大臣と外交に精通し、5月初旬には総理特使として東南アジアを訪問した岸田前総理にききます。(聞き手:TBSテレビ政治担当解説委員 石塚博久)
「中国に惑わされてはいけない」ーートランプ関税のなか、中国の習近平国家主席が4月に東南アジアを次々と訪問しましたが、アメリカの隙間に入ろうという狙いなのでしょうか。インドネシア・マレーシアを周ってみてどう感じられましたか。
自民党 岸田文雄 前総理:
アメリカが開けた穴を中国が埋めようとしている。しかし、この中国自体も自由貿易の旗手だと自負はしていますが、中身は自分の国中心で、自分の国内事情から過剰生産した製品を相手国にドーンと輸出して、そして相手の経済を混乱させてきた。こういったことを続けてきたわけです。
アメリカが開けた穴を、中国が埋めるなんてことになりますと、これはまた大変なことになりますよと。だから自由貿易の旗手と言っているこの中国の姿勢、事実と違うナラティブ(物語)を一生懸命訴えている中国に惑わされてはいけないと。この点もしっかりとこの意見交換の中で訴えてきました。
|
|
ーー消費税減税をめぐって各党が意見を出すなか、国民民主党は「税率を一律5%に」を掲げていますが、どうご覧になっていますか。
自民党 岸田文雄 前総理:
世論調査をみても、消費税という手法、引き下げという手法についての国民の評価も変化しているのが現状だと思います。その中で質問の国民民主党は、財源を赤字国債でやると。将来に全部ツケまわすということについて、これは考えなきゃいけない部分だと思います。
国の財政っていうのは、やっぱり信頼、国際社会やマーケットからの信頼っていうのがやっぱり大事だと思います。事実今、日本は莫大な借金を持ってるわけです。それでも何とかなってるのはまだ日本のこの財政政策、今後を考えたら破綻に至ることはないだろうと、マーケットや国際社会が見てくれてるから持ってる。この信頼を損なうことになったならば、イギリスのトラスショックみたいなことも起きうる。
損得勘定に基づいた方程式が作り出せるかが関税交渉のポイントーー関税交渉で大事なことは?
自民党 岸田文雄 前総理:
アメリカ側は引き上げておいて交渉に臨むということですので、できれば早く決着したいなとみんな思うんですが、向こう(アメリカ側)がコロコロ変わる。他も議論が進んでいることを考えると、あんまり焦ってですね、結論を急ぎすぎると、またおかしなことにもなりかねない。この頃合いは難しいなということは一つ思います。
|
|
その辺も見ながら、日本としてどのタイミングで決着をさせるのか、この辺を慎重に考えることは大事だと思います。
損得というとちょっとなんか次元が低いような気がしますが、アメリカと日本において、経済においても、貿易においても日本はアメリカにこれだけ貢献していると。
だから、指摘された部分についてはアメリカは損だと言ってるけれど、全体をよく見てくれと。やっぱり損得考えても、ちゃんとバランスが取れているんではないか。
よって、関税についてもこの程度でいいんではないか。そういう損得に基づいた具体的な交渉をおこなっていく。
損得ではあるんですが、やはり最後はやっぱり理屈が必要ですから、日本だけどうしてこうなるかっていうのはまた説明はアメリカも説明しなきゃいけないんでしょうから、この損得に基づいたこのフォームや方程式みたいなもので、ちゃんと両国の間で作り出せるかどうか、そこがポイントになる。
|
|