なかなか世知辛い生活を送る元黒い三連星、そしてトラブルからGQuuuuuuXに乗ったニャアンのまさかの覚醒と、第5話も密度の高い内容だった『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』。特にキラキラを見たニャアンの豹変ぶりは印象的だった。
ニャアンがキラキラを目撃するまでの流れは、丁寧に表現されていたと思う。軍警による尋問のシーンでは、ニャアンは横柄で差別的な警官たちに対し怒りを感じつつも、それ自体を「いつものこと」として半ば慣れてしまっていることが描写された。視聴者は、おそらくニャアンがこういう目にあったのは一度や二度ではないことに気付かされる。ニャアンにはなにか非があったわけではない。難民であるというだけで差別され、ことあるごとに尋問されるのがニャアンの日常なのである。
そんな抑圧された感情が、後半ではオメガサイコミュによって一気に解放される。GQuuuuuuXの力を使えば、世界を自分の思った通りに動かすことができる。ひたすら抑圧され、押さえつけられて生きることを強いられてきたニャアンがGQuuuuuuXに乗ることで圧倒的に自分勝手(なんせ僚機を盾にするのだ)で過激な暴力性を見せつけ、勢いのままオルテガをビームサーベルで斬り殺す。「私が合わせなくていい! 私の思う通りに世界が応えてくれる!」というセリフは、これまでいかにニャアンが「世界に合わせて」生きてきたかの裏返しだろう。強烈な解放感を感じるセリフだが、その裏にはこれまでのニャアンの生活のつらさと、自己を解放する方法を知ってしまったがゆえの危うさが滲んでいる。
注目したいのは、この事態を受けてシャリア・ブルがキケロガを用意する決断をしたシーンだ。彼は「グラナダのシムス大尉に連絡してください」と命令し、一年戦争時代の自分の乗機であるモビルアーマー・キケロガを用意するよう要請するのである。
その名前だけでギョッとしたファンも多いだろうが、シムス大尉というのはおそらくシムス・アル・バハロフのことだろう。原典である『機動戦士ガンダム』に登場したキャラクターで、ジオン軍の女性技術士官として登場。メガネをかけた細面のキャラクターで、のちにシャリア・ブルが搭乗する試作モビルアーマー、ブラウ・ブロなどのニュータイプ用兵器開発を担当する。ブラウ・ブロの試験運転中にアムロらとの戦闘に突入し、辛くも脱出。雪辱を果たすためシャリア・ブルがメインパイロットとなったブラウ・ブロに共に搭乗してガンダムと戦うも、最終的にはシャリアとともに戦死している。
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『GQuuuuuuX』でのシャリア・ブルのセリフから判断するに、本作でのシムス大尉は一年戦争を生き延び、月面都市グラナダで引き続きニュータイプ用兵器の開発・維持管理に従事しているようである。ここで注目したいのは、セリフではっきりと「グラナダのシムス大尉」と明言された部分だ。というのも、このシムス・アル・バハロフというキャラクターについては、「実はアンキーと同一人物なのでは」という説が唱えられていたからだ。
カネバン有限公司とポメラニアンズのボスであるアンキーについては、今もって謎が多い。その出自として一部で唱えられていたのが「アンキー=シムス中尉」説である。『機動戦士ガンダム』ではメガネをかけた地味目で真面目そうな女性だったシムス中尉だが、確かに派手なメイクとヘアスタイルのアレンジを経てアンキーの見た目になった……と言われれば、そう見えなくもないような気もしてくる。そもそも原典においてシャリア・ブルと共に戦ったシムス中尉が『GQuuuuuuX』に登場するのは不自然でもないし、一定の説得力はあるように思う。
ただ、今回シャリア・ブルが「シムス大尉はグラナダにいる」と明言したことで、アンキーがシムスの変装した姿であるという説ははっきり否定された。となると改めてよくわからなくなるのが、アンキーの正体である。どう見てもただのジャンク屋の社長ではないし、まともな良識のある大人なら素人の女子高生を「下手すれば死ぬMS地下格闘技」のパイロットに引きずり込もうとはしないだろう。特に第5話ではドーナツを食べつつ恋バナ……というシチュエーションに見せかけて、実質マチュがさらに深みにハマるように誘導しているように見えたのも気になった。面倒見のいい姉御肌のキャラクターに見せかけて、何かしら他の目的があるように思う。
と、ますますどうなるのかよくわからなくなってきた『GQuuuuuuX』。『月刊ニュータイプ』2025年5月号に掲載された榎戸洋司のインタビューには、「マチュ、ニャアン、シャリア・ブル、シュウジ、エグザベ……みんな、行くところまで行っちゃいますから。覚悟して見てくださいね!」と書かれていたが、確かにこれは「覚悟」が必要そうだな……と思わされる第5話だった。
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