
事故や病気など理由はさまざまですが、手術により消えない傷が残りコンプレックスを抱えてしまう方は少なくありません。乳がん手術を経験した漫画家・なりたりえさんもそのひとりでした。
そんななりたさんが、家族だからこそ向き合う心の葛藤と子どもたちのまっすぐな優しさに救われたという実体験に基づいた作品『優しさで、強くなる』がX(旧Twitter)で公開され話題になっています。
冒頭、手術の痕が自分でもまだ受け入れきれず、お風呂に入るときには入浴着を着用するという話から始まりました。子どもたちには、正直に「ママ手術の跡があるからこれを着て入るね」と説明します。
なりたさんのこの説明を聞いた子どもたちは、手術跡を特に気にする様子を見せずに受け入れてくれました。しかしなりたさん自身は、「家族なのにこれからもずっと傷あとを隠していくのかな…」と悩み続けます。
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この悩みを夫に打ち明けると、「家族だからって全部さらけだす必要ないしムリすることないよ」と優しく声をかけてくれます。この一言になりたさんの気持ちが少しほぐれたような描写が描かれていました。
そんなある日、なりたさんは家族旅行で温泉に行くことになります。そこでは入浴着が使えず、タオルで手術跡を隠しながら入浴することになりました。最初は人が少なく安心していたものの、次第に増える入浴客の視線が気になり始め、なりたさんは不安そうな表情になってしまいます。
その様子を察した子どもたちは、何も言わずにそっと作者の前に移動し「ママこれなら見えないでしょ?」「大丈夫だよ!」と声をかけてくれたのです。
子どもたちの優しさに耐え切れず、ほろりと涙を流すなりたさん。他人の目を気にしてしまう弱さはまだあるけれど、“ママのため”に行動してくれる子どもたちの優しさに胸がいっぱいになった様子が描かれています。
同作の読者からは「帝王切開の傷で温泉行くの嫌になってしまってたけどいつかは行きたいな」や「自分は胸も下腹部もデッカイ手術跡があります。これ、病気と戦った勲章だと思ってます。傷を見る度、頑張ったと自分を褒め鼓舞します」など、形や理由は違うけれど自身の抱える傷と向き合っている共感の声が集まっています。
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その他、「最近は入浴着の着用OKの公衆浴場なども出てきましたが、まだまだ少なく感じます。もう少し広がればなと思いました」など、施設利用者目線での改善を期待する声もあがっていました。
(海川 まこと/漫画収集家)