三井住友カードが提供するコンシューマー向けの金融サービス「Olive」。5月15日に発表されたソフトバンク・PayPayとの業務提携により、PayPay残高との連携のほか、VポイントとPayPayポイントとの相互交換を、2025年度内に順次可能とする見通しだ。Oliveの使い勝手は、どう変わるのか。
【画像】PayPay搭載で「Olive」はどう変わる? アプリの様子はこちらから(計7枚)
●PayPayを標準搭載へ
Oliveは23年3月にサービスを開始。クレジットカード、銀行、証券口座を一体管理できる点が特徴で、開始から2年で570万口座を超えた。
今回注目されるのは、PayPay残高を管理する機能の標準搭載だ。PayPay残高の確認や、SMBC口座からのチャージ、SMBC口座への出金がアプリ内で完結するようになる。出金手数料も無料とする方針だ。
|
|
Visa加盟店で使えるOliveの決済機能「フレキシブルペイ」には「PayPay残高モード」を追加。これまでのクレジット・デビット・Vポイントに加えて、4つ目のモードとして支払いに使えるようになる。仕組みとしては、支払いに必要なPayPay残高を、Visaバーチャルプリペイドに即時チャージして決済する仕様だ。
PayPayサイドでも三井住友カードを優遇する。今夏から秋にかけて、PayPayでは他社クレジットカードの取り扱い条件変更を予定。利用料の負担を求める可能性があるとしているが、三井住友カードでは“利用料なし”の対応を取る。
PayPayの中山一郎社長は「すでに車の購入といった高額決済で、PayPay内のクレジット機能を使う方も多い。今回の施策で三井住友カードの利用が加速したとしても、PayPayとしては共存できると期待している」と語った。
●“ポイント連合”の行方は?
Olive内で提供してきたVポイントと、PayPayポイントの相互交換も可能とする。Vポイントは約9000万人、PayPayポイントは延べ2億9000万人のユーザーを抱え、合わせて延べ3億8000万人規模のポイント圏が生まれる見通しだ。
|
|
三井住友カードの大西幸彦社長は「Vポイントは世界中のVisa加盟店で使える“開かれたポイント”、PayPayポイントは“生活密着型ポイント”として成長してきた。連携により 『どこでもためて、どこでも使える』 社会を実現していきたい」と述べた。「使い道が限られている」といった声もみられたVポイントだが、PayPayポイントとの接続により、利便性がどう変わるか注目される。
●Oliveの「スーパーアプリ」構想とは?
ソフトバンクの技術を生かし、Oliveの非金融サービスも拡充する。Oliveアプリに「ヘルスケアポータル」を追加し、AIによる健康チェックやチャット相談、オンライン診療などの機能を提供する。法人向けの金融サービス「TRUNK」でもパッケージ提供する見通しだ。
今後はアプリ全体のパーソナライズ化も進める。マネーフォワードとの連携で、口座やカード残高の可視化、資金移動、ローン返済などをアプリ内で完結させるほか、AIにより「資産運用」「海外旅行の提案・計画」といった多岐にわたるサポートを担うアプリを構想する。大西社長は「Oliveを『未来型スーパーアプリ』に育てるという構想だ」と説明する。
これに先立ち、カスタマーサポートにおいてもAI活用を進める。三井住友カードは24時間365日対応の「自律型AIオペレーター」を25年度中に実装する方針で、年間600万件の問い合わせのうち、半数以上を今後3年でAIが対応することを目指す。
|
|
●三井住友カード社長「対立構造ではない」
コード決済と、クレジットカード大手の最大手――一見対立する手段の融合となるが、三井住友カードの大西社長はPayPayとの提携について、「お客さま視点でのニーズをくみ取った」ものだと強調する。
背景にあるのは、同社においても多くの顧客が、クレジットカードとPayPay、あるいはOliveとPayPayの両方を使い分けている事実だ。大西社長は「『この2つをもっとスムーズに連携させてほしい』というニーズは非常に強い」として、「『三井住友カードとPayPayがそろえばキャッシュレスは完結する』という世界観を実現したい」と話す。
「キャッシュレスもいよいよ後半戦に入ってきた。『カード対コード決済』といった対立構造ではなく、利用者目線で新しい世界を提案していきたい」(大西社長)
|
|
|
|
Copyright(C) 2025 ITmedia Inc. All rights reserved. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。