アイロボットジャパンが4月18日に発売したロボット掃除機「Roomba(ルンバ)」の新シリーズが、好調な滑り出しを見せている。
同社によると、発売4週間の累計販売台数は、ゴミ収集機能付き中価格帯モデルが、従来モデルの約3.4倍となる237%増となった他、AutoWash 充電ステーション付きの高価格帯モデルは約2倍となる98%増という高い伸びを見せたという。高機能モデルの「Roomba Plus 505 Combo」については、家電量販店とオンライン販売共に好調であることも強調する。
●オンラインでもオフラインでも好調な滑り出しの新ラインアップ
この好調ぶりについて、アイロボットジャパンは「ハイエンドモデルを中心に、驚くほどの売れ行きとなっている。顧客ターゲットごとに幅広いラインアップをそろえたことも、量販店の店頭では評価されている。『Amazon Vine 先取りプログラム』のレビューでも、全ての製品で4.5以上という高い評価をもらった。価格設定に対する反応も良く、確かな手応えを感じている」とコメントした。同社はAmazon Vineにおける評価を「4.0」を目標としていたのに対して、トータルで「4.6」に到達している。
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現在、新しいルンバは全国の家電量販店(約1700店舗)で展示/販売されており、フルラインアップでの展示を行う店舗も増加しているという。ただし「Roomba Plus 405 Combo + AutoWash 充電ステーション」と「Roomba 105 Combo + AutoEmpty充電ステーション」はオンライン限定販売となっている。
4月18日からルンバが発売している新製品は6機種9モデルに及び、機能や価格帯によって、エントリーモデル、ミッドレンジモデル、フラッグシップモデルの3つのカテゴリーで構成している。アイロボットがフルラインアップを一斉に刷新したのはこれが初めてのことだ。
●コスパの良さが光るエントリーモデル
エントリーモデルでは「Roomba 105 Combo ロボット」「Roomba 105 Combo + AutoEmpty充電ステーション」「Roomba 205 DustCompactor Combo ロボット」の3モデルを用意した。エントリーモデルは日本市場を特に意識して開発されたカテゴリーで、1人暮らしや間取りがシンプルな家庭を対象にしている。価格は3万9440円からというコストパフォーマンスの高さが人気の秘密だという。
これら3モデルについて、アイロボットジャパンは以下のように語る。
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Amazonのレビューでは「Roomba 105 Comboはコスパモンスター」という表現がされている他、動作が想像以上に静かであることや、アプリの使いやすさが評価されている。「Roomba 205 DustCompactor Combo」は、小型化した充電ステーションをベッドの下に設置できる点や、壁ギリギリの場所も掃除ができる点に評価が集まっている。 量販店店頭では日頃「コロコロ」で掃除していたという20代男性が、コロコロの消費が早いからRoomba 105 Comboを購入したという事例があった他、エントリーモデルでありながらも水拭き機能を搭載していることを評価してもらった事例もある。(最廉価モデルで)3万円台の価格帯であることから、友人の結婚祝いに贈ったというケースもあった。 Roomba 205 DustCompactor Comboについては、ゴミ圧縮機能の良さやベッドの下に設置できる点が評価されており、3〜4万円の予算枠で訪れたお客さまでもアップセルしやすい(より高価でも手に取りやすい)という声を販売店からいただいている。
●ミドルレンジモデルは「ロボット掃除機経験者」の評価が高い
ミドルレンジモデルでは「Roomba Plus 405 Combo + AutoWash 充電ステーション」「Roomba Plus 505 Combo + AutoWash充電ステーション」の2モデルを取りそろえおり、いずれも子育て中の家族や、複数の部屋を持つ家庭などをターゲットに据えている。特にRoomba Plus 505 Comboは、回転するモップパッドが外側に出ることで壁際の拭き掃除が可能になるといった特徴や、LiDARとカメラを共に搭載することで両者の弱点を補いつつ、物体を認識して「避けるべきもの」を迅速に判断し、家具だけでなく薄い物体やコードも検知して避け、空間における最適な掃除を行えることを訴求している。
これら2モデルについて、アイロボットジャパンは以下のように評する。
Roomba Plus 505 Combo + AutoWash充電ステーションは、過去に複数台のロボット掃除機を使用した経験を持つユーザーを中心に評価を頂いており、とりわけ水拭き後のモップパッドの温風乾燥機能に対して高い評価が集まっている。この機能によって「これからの梅雨シーズンに乾かないままのモップを放置せずに、雑菌の繁殖を抑えられる」という声もあった。 量販店店頭では、「全自動モデルでありながらも価格が想定よりも安い」という印象を持つお客さまが多いと聞いている。
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●フラグシップモデルは「水拭きは不要だから強い吸引力を」というニーズに応える
フラグシップモデルとしては「Roomba Max 705 Vac ロボット+ AutoEmpty充電ステーション」を発売した。吸引力は従来製品比で最大180倍となっており、2本のゴム製デュアルアクションブラシでカーペットのごみをかき出せることが売りだ。水拭き機能はないものの、ペットの抜け毛が気になる人、あるいは「ブラシに毛が絡まないロボット掃除機が欲しい」といったニーズに応えている。ペットを飼っている家庭や、カーペットが多い家庭などに適しているという。
本モデルについて、アイロボットジャパンは以下のように語る。
じゅうたん/カーペットが多い家では「水拭き機能が不要で、その代わりに高い吸引性能が欲しい」というニーズはある。この分野に競合製品がないという点でも、(Roomba Max 705 Vac ロボット+ AutoEmpty充電ステーションは)人気となっている。充電ステーションがコンパクトで場所を取らない点も好評だ。
●販路による「売り分け」はうまく行っている
新しいルンバは、大きく分けると「家電量販店を通じた店舗販売」と「オンライン販売(自社サイトやAmazon.co.jpなどのECサイト)」の2つのチャンネルを通して展開されている。アイロボットジャパンによると、現時点ではそれぞれのチャンネルにおいてに狙い通りの売り分けができているという。
家電量販店では吸引機能に特化したRoomba Max 705 Vac ロボットと、本体内に最大60日間のゴミを収納できるRoomba 205 DustCompactor Comboが好調だ。家電量販店に来店する購入者にはさまざまななニーズがあり、「吸引に特化した最高峰の製品が欲しい」という用途ではRoomba Max 705 Vac ロボットが売れている。また、初めてロボット掃除機を購入したいという来店客は実際に動きを見て購入する傾向にあり、動作を検証した結果Roomba 205 DustCompactor Combo ロボットの清掃力や拭き取り力が評価を得ている。 オンライン販売では、オンライン専用モデルのRoomba Plus 405 Comboや、エントリーモデルのRoomba 105 Combo + AutoEmpty充電ステーションが売れている。競合他社と比べて高い付加価値が評価されている。
なお、アイロボットジャパンは花王のホームケアブランド「マジックリン」との協業により、ロボット掃除機専用の洗剤「iRobot 床用洗剤 supported by マジックリン」を製品化し、このほど販売を本格化した。
ルンバの床拭きに適したオリジナル洗剤で、清潔感のあるさわやかな香りですっきりとした床に仕上げることができる。公式オンラインストアにおける販売価格は1900円だ。
●新しい「ルンバ」は新しい「アイロボット」の象徴に
4月16日に日本で行われた新製品発表会では、初来日した米iRobotのゲイリー・コーエンCEOが登壇し、新製品について説明すると共に、経営再建に向けた取り組みについても説明した。わざわざ日本の発表会に登壇したのは、iRobotの経営面における懸念を払拭する狙いもあったといえる。
iRobotは、3月12日に発表した2024年度業績において、負債の借り換えや売却の可能性など「さまざまな選択肢」を視野に入れた取り組みを開始したことを公表した。それによって、企業の年次報告書(Form-10K)には「継続企業の前提(Going Concern)」に関する懸念が盛り込まれた。
これについて、発表会でコーエンCEOは「(企業経営に関する)疑問や懸念、誤解を招くような一部報道があった。iRobotは財務基盤の強化策を講じており、事業戦略の見直しを行っている。すべてがポジティブなアクションである」とした上で、「新製品は(従来製品よりも)利益率が向上しており、収益の成長に貢献する。また次世代の新製品も開発中だ。(Form-10Kに)付記された内容は、事業運営や製品開発、製造、サービスの提供には直接的な影響を及ぼさない。iRobotは盤石である」と、日本のメディアを前に直接訴えた。
アイロボットジャパンの集計によると、今回の記者会見の報道件数は約600件で、そのうち製品に軸足を置いた報道が56%と過半数を占めたという。一方で、ビジネス軸での報道は25%、製品とビジネスの両方をカバーした報道が19%だったそうだ。通常、アイロボットジャパン(あるいはiRobot)に関する報道は製品軸がほとんどを占めることが多い中、今回はビジネス軸での報道が多い結果となっており、それが結果としてiRobotの経営面での懸念を払拭(ふっしょく)することにつながっている。
事実、この発表会がプラスに働いたと思われる動きもあったようだ。
3月に量販店を訪れたお客さまから『今アイロボットの製品を購入しても、会社が無くなってしまい、サポートを受けられないのでは?』という誤解に基づく問い合わせがあり、実際に販売も大きく落ち込んだ。しかし、新製品発表会以降はこうした問い合わせが一気に無くなった。フルラインアップで新製品を一斉発売したことも、経営面での懸念払拭につながった要因になったと捉えている。
アイロボットジャパンは、国内市場において「2030年までに掃除機の5台に1台をロボット掃除機にする」計画を新たに打ち出した。
新製品投入時の瞬間風速や特定店舗における集計では、この水準には至っていないようだが、冒頭で触れたように、中〜高価格帯のカテゴリーでは従来機種に比べて2〜3倍の販売台数を記録する出足の良さを見せている。今回の新製品は「5台に1台をロボット掃除機に」という長期目標に向けて、着実な一歩を踏み出したといえそうだ。
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