
Why JAPAN? 私が日本でプレーする理由
浦和レッズ サミュエル・グスタフソン インタビュー 後編
浦和レッズMFサミュエル・グスタフソンのインタビュー最終回。浦和のサポーターや日本のフットボールファンについて。自身の少年時代や現在の日本での生活にまで話が及んだ。
前編「グスタフソンがJリーグのプレーを選んだ経緯」>>
中編「グスタフソンが語るJリーグと欧州サッカーの比較」>>
【欧州では考えられない日本のファンの振る舞い】
「浦和はもちろん、日本のフットボールファンは本当に最高だよ」
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そう話すサミュエル・グスタフソンに、嘘はなさそうだ。軽やかにポジティブな言葉を発する彼は、日本のサポーターを心からリスペクトしているように見える。
「多くの浦和のサポーターは、敵地にも駆けつけてくれ、大きな声援でバックアップしてくれる。いつも力を感じているよ。それから日本のフットボールファンのサポートの仕方は、他国のファンと比べて、よりよいものだと思う。日本でなければ、敵地のスタジアムに到着する時に緊張が走るけど、この国ではアウェーファンが拍手でバスを迎えてくれることがある。相手チームに拍手を送るなんて、欧州では考えられないよ!」
――ヤジを飛ばされたり、ブーイングされたり、ひどい場合には物を投げられたりする場面ですよね?
「そのとおり。日本のファンは自分のチームだけでなく、フットボーラー全体に礼節を持って接してくれる。それでいて、熱いところもあるが、熱狂しながらも、人間としてきちんと振る舞える。ファンタスティックだ。Jリーグのファンには、いいところしか思いつかないよ。そんな人々の前でプレーできて、本当に光栄だ。このようなファンの存在は、世界中に知ってもらったほうがいい」
【スペインのフットボールに強い影響を受けた】
現在30歳にして、自らが慣れ親しんだものとは異なるフットボールの風景を知り、グスタフソンは嬉しそうだ。スウェーデン第二の都市イエテボリの郊外にある海沿いの街で生まれた彼は、物心ついた時からフットボールなど、スポーツを楽しんできた。
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父は元プロフットボーラーで元コーチ、母はハンドボールの選手だった。"12分だけ"年上の双子の弟シモン、2歳年下のエリアスと、いつもボールを追いかけていたという。グスタフソンは続ける。
「フットボールをはじめとするスポーツは、うちの家に息づいているものだ。少年時代はアイスホッケーもやっていたんだけど、15歳の時に学業もあってひとつに絞ることになり、フットボールを選択した」
当時憧れていたのは、スペインのバレンシアとその選手たちだったという。
「これといった理由はないんだけど、初めて観た時にバレンシアを好きになったんだ。ダビド・ビジャ、ダビド・シルバ、ルベン・バラハといった魅力的な選手がいたからだと思う。本拠地メスタージャで観戦したこともあるよ。すばらしい街とスタジアムだった。最大の強敵は、(リオネル・)メッシ、シャビ、(アンドレス・)イニエスタらをペップ(・グアルディオラ)が統率したバルセロナだった。あの頃のスペインのフットボールに、僕は一番強い影響を受けたのだと思う」
コーチの父の指導を受け、時にはスペインで本場を体感し、早くから才能を育んでいった。そして10代のうちにプロ契約を結び、学校に行きながら練習に励んだ頃もあったという。
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「小さな頃からプロ選手になりたくて、それ以外の職業について考えたこともなかった。すんなりプロ契約できた時は嬉しかったよ。その頃は自信に満ち溢れていて、とにかく最高のレベルに到達したいと思っていた」
――君は夢の中を生きている。
「確かに。でもこうして年齢を重ね、自分が歩んできた道のりを振り返ると、なんだか不思議な感覚だね。イタリアに移った時、初めて実家を出てひとり暮らしをし、生活するということを理解していった。人間として大きく成長できた頃だね。そして今、こうして日本にいる。これは旅路というよりもジェットコースターで、乗っている僕は振り落とされないように必死に掴まっている感じだよ(笑)」
【好物はトンカツ。休みの日は海に行く】
そのジェットコースターが日本に着いてから、1年半が過ぎようとしている。暮らしも落ち着いた今、日本食も大好きになったという。これまでにインタビューした多くの外国籍選手は寿司や焼肉が好きと言っていたが、彼は違う。
「好物はトンカツ! 僕はワーキングクラスだから、パワーをもらえる食べ物が好きなんだ。もちろん、それ以外の日本食も大好きだよ」
――休みの日には何をしているのかな?
「僕は海の近くで育ったから、海を眺めに行くことが多いかな。鎌倉とか、千葉の房総半島とか。サーフィンをするわけでもなく、ただビーチに寝転んだり、水に入ってパワーを感じたりしているよ」
――スウェーデンから家族や友だちが来ることはある?
「何度かね。去年の7月に両親が来たんだけど、日本の夏の暑さに参っていたよ。これもある種のカルチャーショックだね。暑すぎて外で何かをするのが大変で、冷房の効いた屋内でゆっくりしていることが多かったかな(笑)。両親は今度また出直すと言っていたから、次はみんなで富士山に行こうと話しているんだ。家族や友だちを日本のすばらしいところへ連れていくのは、本当に嬉しいし、光栄だよ」
インタビューを終えた後、彼が不在のチームは3試合を戦って1勝1分1敗、9シーズンぶりの6連勝はお預けとなった。
それでもチームは第16節終了時点で4位につけている。クラブW杯に参戦することを考慮すれば、この春になるべく多くの勝ち点を取っておきたいところだ。そのためには、中盤のコントローラー、グスタフソンの存在が不可欠になるだろう。浦和の熱いサポーターたちも、彼の早期復帰を願っているはずだ。
(おわり)
サミュエル・グスタフソン
Samuel Gustafson/1995年1月11日生まれ。スウェーデン・メルンダル出身。2013年にヘッケンでキャリアをスタート。2016年にイタリアのトリノへ移籍。その後ペルージャ、ヴェローナ、クレモネーゼとイタリアでは5年間プレーした。2021年にヘッケンへ戻り、リーグ優勝とカップ戦優勝に貢献。2024年から浦和レッズでプレーしている。2022年からスウェーデン代表でもプレー。