ヴィクトリアマイルを制したアスコリピチェーノ(撮影:下野雄規)【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】
◆血統で振り返るヴィクトリアマイル
【Pick Up】アスコリピチェーノ:1着
わが国で複数のGIを勝ったダイワメジャー産駒は、アドマイヤマーズ(NHKマイルC、朝日杯FS、香港マイル)、メジャーエンブレム(阪神JF、NHKマイルC)、アスコリピチェーノ(ヴィクトリアマイル、阪神JF)の3頭。これらはいずれも母方にサドラーズウェルズを抱えている、という共通点があります。
サドラーズウェルズは、ヨーロッパを代表する重厚なスタミナ血統。英愛チャンピオンサイアーの回数は史上最多の14回を誇り、ガリレオの父、フランケルの2代父にあたる名血です。日本向きの素軽さに欠ける重厚な血統だけに、どの種牡馬と合わせても上手く行くわけではありません。ダイワメジャーはスピード能力に秀でたマイラー血統なので、サドラーズウェルズの重さが足かせにならず、むしろ底力に転化して大レース向きに仕上がるという理想的な構造となります。
2代母リッスンはフィリーズマイル(英G1・芝8ハロン)の勝ち馬。ノーザンファームによって輸入され、これまでに19頭の子孫がデビューを果たし、14頭が勝ち上がっています。そのなかにはタッチングスピーチ(ローズS)、サトノルークス(菊花賞2着)、キングズレイン(ホープフルS3着)、ムーヴザワールド(共同通信杯3着)、ミスタージーティー(ホープフルS5着)が含まれています。
アスコリピチェーノはそのなかの最強馬。母アスコルティは繁殖牝馬として非凡な資質を秘めており、アスコリピチェーノの他にアスコルティアーモ(OP)とアスコルターレ(OP)を産んでいます。母はヨーロッパ屈指の名血であるデインヒルとサドラーズウェルズを2代目に併せ持つという配合構成。これは14戦全勝のフランケルと同じです。この部分に由来する大舞台向きの底力がアスコリピチェーノのセールスポイントといえるでしょう。
◆血統で振り返る新潟大賞典
【Pick Up】シリウスコルト:1着
父マクフィは英2000ギニーとジャックルマロワ賞を勝ったヨーロッパの一流マイラー。2011年に種牡馬入りし、2017年から日本で供用されています。JRAではシリウスコルトを含め、オールアットワンス(アイビスSD2回)、ヴァルツァーシャル(マーチS)、イミグラントソング(ニュージーランドT)と4頭が重賞ウィナーとなっています。
基本的にはスピードの持続力で勝負するタイプ。それゆえにダートも得意としており、馬場別の勝利数は芝47勝、ダート86勝。ヨーロッパ血統ながらパワーを帯びたタイプです。果敢に逃げた今回は、この血統の強みであるスピードの持続力を活かすことができました。
2代父ドバウィは2022年の英愛チャンピオンサイアーで、2015年の仏チャンピオンサイアーでもあります。父系はドバイミレニアム→シーキングザゴールド→ミスタープロスペクターとさかのぼります。日本ではマクフィの他にモンテロッソ、ベンバトルが供用されており、世界的にはナイトオブサンダー、ザラック、トゥーダーンホットが成功を収めています。