出所者雇用、県が支援=全国初、全額出資で財団設立―職業訓練と住居提供・奈良

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2025年05月20日 07:31  時事通信社

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時事通信社

刑務官の前で自身の体験を話す「かがやきホーム」研修員の男性(手前中央)=1月22日、堺市
 刑務所の出所者を雇用し社会復帰を支援しようと、奈良県は2020年、全額出資で一般財団法人「かがやきホーム」を設立した。法務省によると全国初の取り組みで、財団は職業訓練と住居を最長3年間提供。これまでに計9人を雇用し、地元の森林組合などへの就職につなげており、農林業の担い手育成にも貢献している。

 県は、社会復帰支援が再犯防止につながるとの考えから「更生支援の推進に関する条例」を制定し、財団を設立。職員が刑務所を訪ね、県内に定住する意思があり、更生意欲が高い出所者を研修員として雇用してきた。

 研修員は週に4日、森林組合や農業生産組合に派遣され、職業訓練に従事。1日は公園の草刈りなどの社会貢献活動をしたり、怒りの感情のコントロール方法や金銭管理などの研修を受けたりする。高卒で採用された県職員と同額の給与が支払われ、月1万円でアパートを借りることもできる。

 「環境を変え、人間関係をリセットしたかった」。昨年5月に雇用された県外出身の20代男性は、応募の動機をこう振り返る。地元の高校の先輩に誘われて特殊詐欺に手を染め、実刑判決を受けて山口県の刑務所に約3年間服役。仮釈放後の生活を模索する中で、財団の存在を知った。

 現在は、奈良県五條市の農業生産組合で青ネギの生産や加工に取り組んでいる。財団には自ら定めた目標の達成状況などを毎週報告しており、達成感を覚えるという。今年1月に法務省の施設で行われた若手刑務官向けの研修で体験を語り、「更生していることを行動で示したい」と述べた。

 県によると、研修を終えた7人のうち3人は地元の森林組合に就職し、他に3人が福祉施設や県外のホテルなどに働き口を得た。元大阪刑務所長で財団職員の岡西正克さん(71)は「再犯をしないという本人の意志だけでは更生は難しく、住居や仕事といった経済的な支援も必要だ。他の都道府県にも広がってくれれば」と話した。 

林業の職業訓練を受ける出所者=2020年10月、奈良県御所市(かがやきホーム提供)
林業の職業訓練を受ける出所者=2020年10月、奈良県御所市(かがやきホーム提供)
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