画像はイメージです賃貸物件を借りる場合、内見を行い両者が合意すれば、本契約となる。現在も運用されているこの形式だが、双方のいずれかが問題のある人物の場合、想定外の事態となってしまうようだ。与田祐一さん(仮名・30代)は、内見で「ありえない」対応を受けた経験を持つ。
◆担当者の運転がかなり怪しい…
「やりとりしたのは、萩原さん(仮名)という大手不動産仲介会社の女性社員で、対応はいたって普通。何回かメールでやり取りしたのち、内見に行くことに」
しかし、徐々に担当の萩原さんに違和感を覚える行動が出たという。
「車に乗ると、『ちょっと運転が不慣れで、ご迷惑をかけるかもしれません』と言うんです。『今さらそんなことを言わないでくれよ』という感じでした。適当に世間話をしていたら、いつの間に高速道路のレーンに入っていて。びっくりして『高速で行くんですか?』と質問すると、『道を間違えました!』と叫んでUターンしようとするんです。もちろん逆走になるので、『高速に入ってください』と。もう自分が運転を代わりたいぐらいでした。さっきまでの落ち着いた雰囲気はどこへやらでした」
◆内見終了直後に契約を迫られて…
道中で危険な思いをしつつも、内見自体はつつがなく終了。ただ、不動産会社の萩原さんが、思いがけない言葉をかけてきたという。
「内見を終えて車に戻ると、『契約しますよね。今、ここで契約書にサインをしてもらえますか?』というんです。呆気にとられていると、カバンから契約書とボールペンを出して、真顔で『今、ここで』と念押し。これまでにも複数回、内見を経験しましたが、こんなことは初めてでした」
与田さんはどのように対応したのだろうか。
「部屋は気にいったので、契約する意思はありましたが、『この場で契約してほしい』といわれたことが引っかかり、『即決はできない』と回答。すると、『契約しないということですか? 気に入ったから、内見に来たんですよね』とキレ気味に言われて。『一度検討させてほしい』と話すと、『なんのために内見に来たんですか。貴重な時間を割いているのに。契約してくださいよ』と怒り出しました」
◆電話でクレームを入れるも…
「ありえませんよね。サインを強要するような人に手柄を立てさせたくないと思い、きっぱり『契約はしません』と明言。萩原さんは『わかりました』とかなり低いトーンでつぶやきました。頭にきていたので、『ここで失礼します。送っていただかなくて結構です』と告げ、最寄り駅まで歩いて、電車で帰宅したんです。
しばらくして一斉送信なのか、また物件紹介のメールが送られて来まして。バカにされたような気がして、『御社は内見で契約をしないとキレるのか?』『御社は内見をすると、その場で契約を迫るのか?』と電話でクレームを入れました。でも『確認します』と言ったきり……。なんの音沙汰もなく、こちらも放置していたのですが、ある日その会社のウェブサイトを見ると、以前まで社員紹介に記載されていた萩原さんの名前が消えていました。クビになったのかもしれません。いずれにしても、あの対応はないですね」
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運転が怪しいのはご愛敬で済むかもしれまいが、契約を迫ったのはいただけない。ノルマに追われて焦っていた可能性もあるとはいえ、果報は寝て待ったほうがよっぽど正しい対応だったはずだ。
<TEXT/佐藤俊治>
【佐藤俊治】
複数媒体で執筆中のサラリーマンライター。ファミレスでも美味しい鰻を出すライターを目指している。得意分野は社会、スポーツ、将棋など