今年の“着るクーラー”は、ダブルで冷えるプロ仕様 ソニー「REON POCKET PRO」先行レビュー

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2025年05月20日 10:50  ITmedia NEWS

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 今年もまたこの季節がやってきた。例年5月は、「着るクーラー」ことREON POCKETの新作が出る季節である。今はヒートモードも使えるようになっているので、冷える・温めるの両方ができる。しかし空気を温めるわけではないから、冷暖両方できるが「着るエアコン」とも言えないのが難しいところである。よって歴代通り、「着るクーラー」として紹介させていただく。


【写真を見る】2倍冷えるソニーの新作「着るクーラー」(全11枚)


 これまでREON POCKETは、初代から2、3、4、5と数字で刻んできたが、2025年の新作は「PRO」である。どの辺がPROなのかというと、なんとサーモモジュール(ペルチェ素子)の枚数を2枚に増やしてきた。


 以前から東南アジアや中東地域ではもっと冷える製品が求められており、それならペルチェを2枚にしたらいけるんじゃないかという話だけなら聞いていたが、それを本当に作ってしまったのが本作となる。中東地域だけで売るのかと思っていたら、日本でも発売される。


 まあ日本の夏も屋外ではありえないぐらい暑くなるので、これぐらいあってもいいだろう。逆に中東の富裕層は外になんか出ないという話もあるので、主戦場はガン冷えマニアが多く存在する日本になりそうだ。


 専用ネックバンド同梱のパッケージ「RNPKーP1」は、市場想定価格2万7500円。これに温度センサー「REON POCKET TAG」が同梱された「RNPKーP1T」は、2万9700円となっている。


 今回はいち早くサンプルをお送りいただいたので、テストしているところである。


●構造から見るREON POCKET PROのポイント


 REON POCKET PROは、冷却に使用するサーモモジュールを2枚にしたことで、本体構造は従来シリーズから大きく変わっている。サイズとしては、横幅は抑えつつも長さ方向に延長することで、2枚分の長さを確保した。背面から見ると、冷却部が「くの字」に折れ曲がり、2枚分の面積になっていることが分かる。


 ただ従来機と比較して思いのほか長くなっていないのは、ネックバンドの取り付け構造が変わったからだ。従来はREON POCKET本体に対して、受け皿にアームが生えたようなネックバンドにはめ込んで使用する方式だった。これは、背中側に本体が差し込めるポケットが付いた、シャツやウェアがあったからである。


 一方今回のPROでは、アームが付いたパーツを本体上部に直接取り付ける方式となった。よって、排熱用の長いエアフローパーツを取り付けても、全長はそれほど長くはなっていない。


 冷却面積も違うので、PROは従来の専用アパレルが使えなくなっている。ただ現状は「REON POCKET 3」以降のネックバンドが好調で、利用者のほとんどはネックバンドを使用しているという。よって専用アパレルは在庫のみとなり、徐々に終売になるようだ。5までのユーザーでアパレルが欲しい人は、今のうちに購入しておいたほうがいいだろう。


 さて2枚となったサーモモジュールだが、これにより最大吸熱量も2倍となった。その代わり駆動時間が短くなった…わけでもなく、逆に最大駆動時間は2倍の34時間となっている(COOLレベル1)。バッテリー容量も増えているが、エアフローの要である放熱ファンを専用に開発することで、省電力化が行われている。


 2枚のサーモモジュールは、1枚のステンレス製熱伝導性プレートの上に配置されている。下のモジュール上にファンがあるため、ヒートシンクは上のモジュール上にしかないが、このプレートによる熱伝導で2枚分のサーモモジュールの熱を1カ所で排熱している。


 また2枚のサーモモジュールの駆動方法にも工夫がある。従来、1カ所で肌に当てて冷却していると、いわゆる「冷却慣れ」が起こり、冷たく感じなくなるという課題があった。そこでこれまでは冷却温度をわざと揺らすことで、この慣れを解消してきたわけだ。


 一方今回は2枚あるので、この冷却温度の揺れを逆相で動作させている。簡単に言えば、交互に冷えるわけだ。装着していると、上が冷えたり下が冷えたりして、冷感を一定に保ち続けているのが分かる。


 上の方が「冷え感」は大きいので、初代からの設計は間違いなかったということだ。その一方で、「下が冷える」というのがなかなか新しい感覚だ。背中に冷水や氷が入って「チメテっ」となる感覚に似ている。それが定期的にやってくることが、全体的な冷却感の維持に貢献している。


 なおヒートモードの方では、交互に動かしても温感慣れの解消にはつながらなかったということで、2枚がシンクロして温度を揺らしているという。


 冷却面の下の方には、島になったエリアがあるが、ここには新たに皮膚温度を測定する温度センサーが設けられた。これまでは本体内部に温度センサーはあったが、どうしてもサーモモジュールの温度変化の影響を受けてしまうので、正確な温度が測れなかった。今回は温度センサーを外に出したので、より正確なセンシングが可能になっている。


●デザイン面での新規性


 ボディー構造が全然違うことに伴い、デザインも新規になっている部分が多い。例えば本体カラーは、真っ白からホワイトグレーに変更された。従来製品はあまりにも真っ白だったため、白のワイシャツの下に潜らせると、かえって白浮きして目立つという弱点があった。これを弱める目的なのだろう。


 また従来はエアフローパーツのみホワイトグレーだったので、色がちぐはぐだった。今回は両者が同色なので、より目立たない。


 ネックバンドも、従来より太めで長く、色も暗めのグレーになった。カラーの変更に関しては、これも装着して目立たなくするための工夫である。またアーム内のフレキシブルチューブも太くなったことで、より柔らかく変形できる。欧米人の場合は、従来のネックバンドでは小さいという意見もあったそうで、より身体の大きな人にもフィットするようになっている。


 一方でアームが曲げやすくなったことで、細身の人でも隙間が空かないよう、身体に沿わせることができる。さらにアーム先端もシリコン製のサポーターが付けられており、従来ネックバンドの、先端が肌に刺さる感じがなくなった。また滑り止め効果もあるので、重さで滑って後ろ側にずれてくることも少なくなった。


 もう1点、今回PROと呼べる理由として、本体だけで動作モード設定が可能になった点が挙げられる。


 従来は本体にパワーボタンしかなく、細かい設定はスマホアプリでやるというスタイルだったが、屋外作業などしている人がいちいちスマホを取り出して設定変更するのは、現実的ではない。


 今回のPROでは、本体ボタンでモード変更や温度設定変更が可能になっている。左型のMODEボタンがCOOLとWARMの切り替えで、右のプラスとマイナスボタンで温度レベルが変更できる。レベル値はLEDの点滅回数で確認できる。


 また温度センサーであるREON POCKET TAGを併用する「スマートモード」も、本体側で選択できる。右側の「SMART」と書いてある文字部分がボタンだ。温度センサーで測定した気温や湿度に応じて、自動でCOOLとWARMの切り替えや温度レベルを切り替えてくれる。


●実際にテストしてみた


 ここ数日、実際にREON POCKET PROを装着してテストしている。24年のREON POCKET 5では、本体、ロングタイプのエアフローパーツ、ネックバンドの合計が約160gに対して、PROは同じく本体、ロングタイプのエアフローパーツ、ネックバンドの合計で約252gと、だいぶ重くなっている。


 ただ新しくなったアームの装着感が良く、かつ広くなった冷却面が肌にぴったり張り付いて重量を支えるので、重さが増えたことに関してはほとんど気にならない。


 それよりも気になったのは、厚みの増加だ。本体がくの字に曲がっていることもあり、厚みとしては2倍ぐらいになっている。これは車の運転席やヘッドレストがある椅子に座っている時に、本体が椅子の背中に当たる感じがある。


 こうしたオフィスワークよりも、おもに屋外移動や立ち作業などの利用がメインに想定されているということなのだろう。逆に厚みがあることで身体とシャツの間に隙間ができ、背中の風通しが良くなった。


 オフィスワークの際は、薄型の従来モデルの方がフィットするので、従来機との使い分けも1つのポイントになるだろう。従来機はオフィスに置きっぱなしにして、通勤・移動カバンの中にPRO、という使い分けだ。なおREON POCKET TAGは2台共通で運用できるので、すでにタグをお持ちの方は買い足す必要はない。


 本体だけで設定変更できるという設計は、思いのほか便利だった。筆者はこれまで従来機を農作業時に使用してきたが、スマホは車の中に置きっぱなしなので、設定変更のためにいちいち車に戻る必要があった。


 気温は変わらないが、作業していて身体が暑くなったという時に、本体ボタンでレベルアップできるのはうれしい。いちいち外さなくても、後ろに手を回せば手探りでボタン操作できる。またUSBコネクターがカバーされているので、汗が入り込まないか心配する必要がなくなった。


 動作音も、だいぶ静かになっている。ファンがかなり下の方にあるのと、静音設計に加えて高効率なファン設計のおかげで、ファンが回っている感じはほとんどない。


 実際に使ってみて感じたのは、これまでのオフィスワーカー向け製品といった進化の流れとは別に、ハードな屋外作業など過酷な環境でも使えるように別設計・別シリーズにしたゆえに、「PRO」なのだということである。昨今はPROという言葉が製品に安易に使われるようになってしまった感があるが、REON POCKET PROはガチでPRO用だった。



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